『本』は、この世界で、私が一番好きなものです。 小学生の頃、学校図書館の本を棚の端から読み始め、中学校で創作に目覚め、高校では推理小説のトリコになりました。自分で小説を書き、ちまちまと製本してイベントで売っていました。書くことが生きがいで、楽しくて、すべてだった。でも作家にはなれませんでした。 その後は、本を横目で見ながら、安穏とした生活でした。しかしながら、ここ数年で、それまでの日常がすべて変わってしまい、私は再び、本の世界に戻って来ました。もちろん読者としてですが、つ
花は無邪気に、4つのトゲを見せた。そうして言い足した。「さあ、いつまでもぐずぐずしないで。いらいらするから。行くって決めたのなら、もう行って」 カフェのテーブルには、菜々美の読んでいた文庫本と、黄色いカップに入ったカフェオレが置かれたままになっている。飲みかけのカップには、うっすらと縞模様が残っていて、由季はふと、コーヒーカップに残った模様でも占えるという話を思い出した。 「何で、見たのかな」 雑誌か、テレビか。そして、一体、何を占うためのものだったのか。 調べてみよ