見出し画像

ボルダリング用、完登記録と課題評価

 皆さん、Satelliteってアプリ、ご存じでしょうか?これ、いくつかのボルダリングジムで共有されているアプリケーションで、課題の難易度を共通化し、個人の履歴を管理するものです。お値段はあまり安くはないですが、利用価値はあります。もちろん、無料でも使えますが、一部制限があります。

基本的な使い方

 インストールした後、有料課金します。課題レートが見られるジムの数が2つ、7つ、制限なし、から選びます。お値段は年間3,900円、6,800円、9,800円です。見られなくてもいいや、というのであれば無料です!
 見られなくても(無償版)、いい使い方があります。各課題に対し、どれくらいの完登者がいるか、です。同じ級の課題に対し、多くの完登者がいるということは易しい。数が少ないと難しい。これ、大体当たっています。
 例えば、荻パン(2024/7/27現在)のYosemite、5Q課題が3つあります。上から順番に課題レートが862、934、772です。では、完登者は?それぞれ31人、28人、40人となっています。ほら、相関があるでしょう?なので、無償版で使う人は、完登者数で難易度比較してみてください。ただし、この方法は公開時期が同じものにしか当てはまりません。なぜなら、同じ5QのCircuit課題でレート935がありますが、こちらは完登者96人です。Yosemiteは28人だったのに?それは致しかないです。後者は公開後2か月のデータで、前者は数日のデータなので。あくまで相対比較は同じタイミングで公開された場合、ということで。あと、自分の完登記録も登録できます。なので、無料でもそれなりに使えます。

ユーザーレート

 ここで、ユーザーレートと課題レートの話をします。どちらが先がいいかは何とも言えないですが、公式がユーザーレートから説明しているので、ユーザーレートから。

ユーザーレートの説明

 ユーザーは、課題をクリアしたらクリア結果を記録します。クリア結果には、Flash(1回でクリアした)、2tries(2回でクリアした)、3~5tries(3~5回でクリアした)、30min、1hours、2~3hours、1day、2days~などがあります。この中で、記録に影響してくるのが、Flash、3~5回、30分、1日、それ以上の5枠です。Flashで一番レートが高かったものが、Flash枠に登録されます。Flashボーナスは+50点です。次が3~5回でクリアしたという枠。ここに入れるのは、3~5回以内のクリア課題の中で、ボーナスポイントを加味した最大レートの課題になります。要はFlashで1000と、3~5回で1000の課題の場合、Flashでクリアした課題が利用されます。そして、先のFlash枠に登録された課題は重複しては利用されません。上から順番になります。
 ちなみに、公式には載っていませんが、Flashは+50点、2~5回は+35点、30分は+20点、1時間は+10点、2~3時間は+?点(ボーナスがあるかわかりません)のボーナスがつきます。なので、全部Flashというのが一番いいのですが、そう都合よくは行かないものです。
 さて、これで全5枠の課題レートが揃いました。そうしたら、ボーナス点も含めて5枠の課題レートを加算し、5で割ります。要は平均です。これがあなたのユーザーレート。一応、これはここまでにしておきます(後で、また出てきます)。

課題レート

 お次は課題レートです。

課題レートの説明

 課題レートは、課題の難易度を示します。一応、すべてのジムで共通。あるジムで1000と別のジムで1000は同じレベルの難易度、ということになります。念のため、「一応」です。
 この課題レートの計算が難解で、正確に説明はされていません。ここには、完登者のユーザーレートとトライ回数から完登レートを算出し、その中央値が課題レートだ、と書かれています。ただし、直近6ヶ月で51本以上の完登記録を持つユーザー(これを対象者とします)のみが対象となっている、とのこと。はて?これがすべてなのでしょうか?トライ回数ってどう評価されるんでしょうか?
 まず、筆者が見た限りによると、除外されるのはFlash完登者、です。その理由ですが、課題レート1000をユーザーレート2000の人が登ればFlashするのは当たり前。でも、1500の人も、1200の人もFlashします。これを評価に入れるのは難しいと考え、除いているようです。書かれてはいませんが、これは調べた限り正しい。
 課題レートの算出に使われるのは、非Flash完登者であり、対象者のユーザーレートだけです。例えば、完登した対象者が1名しかいなくて、その人がFlashしてしまった場合、課題レートは出ません。しかし、完登した対象者が1名で、その人が2回~20日完登のいずれかであると記録した場合、課題レートが表示されます。ただ、中々表示されないものがあり、ちょっと自信を無くしています。前は間違いなく、そうだったんですが(一人でも表示されていた)。
 さて、具体的に。今、ある対象者がクリアしました。その人のユーザーレートが1000だとします。ここでトライ回数が影響します。もし、2回でクリアした場合、その人にとっては課題が簡単だった。だから、ユーザーレートから150を引いて、完登レートを850と評価する。3~5回だったら100を引く、30分は50、1時間は25、2~3時間なら10を引き、1日でクリアした人は変化させない。そして、2日かかったら難しかったと判断し、+20とする(これ以上の日数がかかった場合、どれくらい加算するかはわからない)。このトライ回数による再評価値は筆者の推測です(過去データからの解析結果)。
 ここからは具体例で。対象者1150が2回でクリア、対象者1100の人が3~5回でクリア、対象者1050の人が30分でクリア、対象者1025の人が1時間でクリア、対象者1010の人が2~3時間でクリア。対象者980の人が2日でクリア。これらは完登レートが全部1000になります。上のトライ回数による再評価の影響です。
 では、3人の対象者がいて、全員1日でクリアし、それぞれのユーザーレートが1010、1000、990だった場合、トライ回数による再評価は0なので、このままのユーザーレートが完登レートになり、中央値は1000なので、課題レートは1000となる、と言えます。大体、ここまではお判りでしょうか?

 それで、重要なことがあります。感覚的なことですが、自分のユーザーレートと同等の課題は、概ね1日かかる、ということです。たぶん、アプリはそのように考えて作っていると推測します。要はユーザーレート1000の人は、課題レート1000をクリアするのに1日かかるということです。そして50高い課題は粘れば数日で落とせ、100高い課題は相当ハードル高い、得意ならいけるかも、という課題。逆に150低ければほぼフラッシュできる可能性があり、100低ければ数回で、50低ければ数時間以内ではできる、という感覚です。
 自分のユーザーレートは1000くらいです(左足がケガしている状態)。実際の例を示すと、889は2回、762はFlash、879は3~5回、814はFlash、812はFlash、962は30分、815は3~5回、1005は2回、967は3~5回、967は1時間、839は2回、868はFlashとなっています。大体、合っているでしょう?ちなみに、できていない課題は書いていません。後日できると、数日という評価になりますが、それらは1058(ちょっとかかりそう)、1109(できる気がしない)、934(左足が悪いと難しい)、1081(まだわからない)、1207(左足が悪いとできない)、1095(左足が悪いと厳しい)、967(左足のせいで難儀する)。感覚は合っています!

ユーザーレート更新タイミング

 お次は、どのタイミングでユーザーレートが改訂されるか、です。

ユーザーレート更新タイミング

 基本、完登記録を付けると値が再計算されます。完登記録の対象は全部です。8級でも、再登(リピート)でも構いません。ともかく、記録すれば更新されます(これを再評価と命名します)。逆に言えば、記録しない限り再評価はされません。
 が、公式の説明には間違いがあります。課題レートは他の人が登れば変わります。その結果、ユーザーレート変わります。ある課題、登った時は1000だったのに、今は990になっている、ということがよくあります。すると、ユーザーレートは990を採用して計算しなおされます(これを再計算と命名します)。これ、完登記録を入れなくても変わります。そのタイミングは、画面をFlashしたり、一回アプリを終了し、再度立ち上げた時にもです。それ以外は、前の値になっています。いいか、悪いかはわかりませんが。
 そして、もう一つ。再評価と再計算は違います。再評価は5枠の評価を一からやり直す作業。課題レートが変わったことで枠に採用する課題が変更になった場合、この再評価では反映されます。再計算は枠に採用する課題の評価はしません。あくまで、これは変化しません。
 具体例を示しましょう。自分がFlashとして1000と1010の課題を登っていた。時間がたち、1000の課題Aが1020に、1010の課題Bが990になったとすると、再評価では課題AがFlash枠になり、値も1020になる。再計算では枠の再評価はしないので、課題Bが選ばれたままになり、値は990に下がる。こんな違いがあります(公式ではないので、間違っていたらごめんなさい)。

課題レート更新タイミング

 お次は課題レートの更新タイミングについて。

課題レート更新タイミング

 これは、誰かがこの課題を登って記録した、というイベントが起きた時に発生します(説明通りかと)。そして、課題レートは全ユーザーに反映されます。ただ、画面読み込み直し(いわゆる画面Flashか、アプリ再立ち上げ)が起きないと、ユーザーには見えませんが。
 これにより、日々課題レートは更新されていきます。それによって、ユーザーレートも変化します。これを色々更新するのは大変だろうから、たぶんですが、以下のようにしていると推測します(あくまで筆者の推測です)。
 課題に対して記録枠を用意します。誰かがクリアしたら、その記録枠にユーザID、トライ回数値を記録します。そして、新規ユーザーの完登記録が記録されたら、この記録枠に追加していきます。次に、もう一つ完登レート枠を作っておいて、先の記録枠のデータに記録されるタイミングでその新データの完登レートを計算し、完登レート枠に記録する。この計算・記録は一回しかやらない。つまり、クリアした時レートは1000で、今1100だけど、使われるのは1000の方なの?そう、その通りです。なぜって、あなたはユーザーレート1000だったからこそ、そのクリア回数だったのであって、今1100に成長しているなら、クリア回数は減りますよね?という考えです。なお、完登レート枠は上から順にソートしているかもしれないです。
 ここまで来たらあとは課題レートの算出は簡単です。完登レート枠の中央値を探し、それを課題レートとするのです。

おかしな現象

 クリアしたら課題レートが変わったんだけど?これ、どう変わるのか?

 とても難しいので、例で示します。いま、課題レートが1000の課題があったとします。完登レートは1010、1000、990の3つしか記録されていなくて、真ん中の1000が採用され、課題レートが1000になっています。
 ここで、ユーザーレート1100の人がミスして、Flashできなかった。2回かかってしまった。完登レートはユーザーレートにトライ回数を加味して評価され、完登レートは1100-150=950となり、完登レート枠には4つのデータ1010、1000、990、950が記録され、課題レートは(たぶん)995へと下がる。1100の人が1日かかってしまった。この時の完登レートは1100なので、完登レート枠には1100、1010、1000、990の4つが並び、課題レートは1005へと上昇する。要は、1100の人でも1日かかるんだから、値は上がるでしょう?ということです。これ、何日かかっても(完登レートはものすごく大きな値になっても)データは4つしかなく、中央値は一緒なので変わらない。説明を読むと、完登レート枠のデータの平均とは書いていない。あくまで中央値、と書いているので、たぶんこれが正しいと思われます。ちなみに、あまりに中央値からはみ出た値は利用されない模様です。
 要は自分のレートより高い課題を簡単にクリアしたら課題レートは下がる方向、自分のレートより低い課題を中々クリアできなかったら課題レートは上がる、という、至極普通のことが起こります。でも、一部の人はおかしいと思うらしい。

 それで、AppStoreのユーザー評価に、1dayでクリアより5dayでクリアした方が課題レートが下がらない、とコメントがありました。それはそうでしょう?1dayより5dayの方が難しい課題なんだから、下がる方向ならば1dayの方が下がりが大きいはずです。ご納得いただけたでしょうか?

「一応」の意味

 途中、課題レートは課題の難易度を示していると書いてきた。ただし、それは「一応」である。では、一応とは何か?
 この一応の意味は、課題レートは課題の難易度を普遍的に、絶対的に評価はできていないという意味である。しかも、ジムによっても、たぶん、違う。なので、一応、指標にはなるが、絶対ではないですよ、ということ。
 筆者がよく行く荻パンとベーキャン新宿を例に出して説明してみよう。荻パンの客層は子供から若者までが多く、年配者は少数派。クライマーにおいては、素人もいるが、セミプロ、プロ、育成選手もたくさんいる。難易度は高めで、皆それをやりに来ている。そして、課題に妥協がない。例えば、リーチ。一般に子供では無理だろうというリーチに対し、ここでは飛びついたり、他のホールドを使ったり、ともかく工夫してクリアする。当然、小中学生には難易度が滅茶苦茶高いが、大人では簡単、という課題もあり得る。この課題のレートって、どうなる?全員が登録していた場合、大きく2つに分かれる。難易度が高く感じるグループと優しく感じるグループ。しかし、難易度高く感じるグループのユーザーレートは低いとは限らず、易しく感じるグループのユーザーレートは高いとは限らない。いや、むしろ低い可能性すらある。後者がFlashばかりなら問題ないのだが、そうでないとおかしなことが起こる。具体例を示すと、ユーザーレート1200のキッズが数日掛けてクリアした場合と、ユーザーレート800の大人が2回目でクリアした場合、一体この課題のレートはどう評価したらいいのだろうか?キッズの評価は1200以上、大人の評価は700程度。こんなに差があっては、評価しようがない。もう一つ、コーディネーション系。荻パンの客層はコーディネーション系に強い傾向がある。でも、もちろん苦手とする人もたくさんいるはず。そのため、コーディネーション系の課題レートは比較的高めに出てきている。強度が強い課題に対しても、ユーザーレートの高い女子が苦手とする可能性がある。すると、これもユーザーレートが高めにでる。要は、万人受けする課題のレートは相対的に低く出る。特定の層には易しく、特定の層には難しい課題は、相対的に高く出る。これが、繰り返し「一応」と書いてきた意味である。
 そして、これはジムのカラーにも影響する。ベーキャン新宿の課題は、極端な設定がないとしてみよう。また、キッズの比率はほぼゼロとしよう(荻パンのキッズ比率が高すぎるだけともいう)。
 極端にリーチが長い課題がないので、リーチがないクライマーが不利と言うこともない。これにより、リーチ不足の強クライマーによる課題レートのインフレが起きずらい。同様に、極端に強度を求める課題も(低い級においては)ないので、女子が不利ということもない。よって、強い女子が強度不足でクリアできないことによる課題レートのインフレも起きない。更に、コーディネーション。荻パンでは、全く歯が立たないコーディネーション課題がたくさんある。それらはクリアできない。クリアしないと評価に加わらないので、強い人しか評価対象にならない。よって、課題レートは高めにでる。一方、同じコーディネーションに属するが、手に就く課題が多数あるベーキャン新宿は、各層がクリアする。ある程度下手な人でも、数打てばできる、というのがコーディネーション。よって、比較的レートの低い人もクリアすることから、相対的に課題レートは低め。そんなクライマーが、慣れたことで荻パンに行ってコーディネーションを突破すると、いきなり高レートの課題をクリアしたことになり、ユーザーレートが爆上がりする。
 と、こんな事情があるため、課題レートは絶対ではないですよ、一応目安にはなりますけど、自分よりレートが高い課題ができたら強くなったわけでもなく、相性が良かっただけなのかもしれないし、自分より低いレートの課題ができなくても、何らかの支障(ケガしている、リーチが足りない、強度が足りない)のためにできていないだけで、自分のレートはもっと低いのではないか、と考える必要はないですよ、となる。
 と、まあ、こんな風に書きましたが、一応の目安にはなります。なので、Satelliteで易しい課題からやっていくというのも手。いや、同じ級なら強いものからやる方がいい説もある(なぜなら、疲れでできなくなる可能性があるから、元気なうちに難しい課題をこなす、という作戦)。

実際のデータを見てみよう(2024/7/29現在)

 ベーキャン新宿のBachar boulderにある6Q、紫課題。完登者登録11名。非Flash者は2名しかいない。自分はこの時たぶん1000くらいのレートで、2回でクリア。もう一人が676で3~5回でクリア。上に書いたように、完登レート=ユーザーレートートライ回数補正値になり、それは、2回クリアでは150、3~5回だったら100、30分は50、1時間は25、2~3時間なら10を引き、2日かかったら+20とするルールに従う(以上、筆者の推定)。計算すると完登レートは850と576になる。で、課題レートは?576だそうです。自分は、範囲外。異常値は削除されるので。そう、私はフラッシュ以外はダメだったんでしょうね。すみません!
 もう一つ行ってみましょうか!8人しかクリアしていない、Swan slabの赤課題、3Qを見てみましょう。課題レートは1207です。クリアした人のレートが変わっていると思うので、多少誤差はあります。計算した時のユーザーレートはわかりませんので、仕方ないです。非Flash者は1362(3~5回)、1228(1hour)、1298(2days)、1189(2days←35回しか記録されていないので、除外されていない?)、1290(30mins)、1267(1hour←12回しか記録されていない、たぶん除外)です。完登レートは1262、1203、1318、1209、1240、1242となります。これに対して1207が中央値になるようです。レンジから外れた値は除き、回数が少ない人を除くと、1262、1203、1240。これだと、中央値は1240になる。何か他に要因が?
 最後にもう一つ。Candy landの2Q、黄色課題。完登者は3名。レートは1184です。非Flash者は1299(3~5回)、1239(30mins←完登回数が少ない?)の2名だけ。完登レートは1199と1189です。前者の人はスコアが伸び続けているので、もしかしたらこの人の値かもしれないです。
 このようになってはいるものの、いつになってもレートが表示されないものもあります。それって、クリア者が足りないんじゃなく、たぶん、レンジから外れている。例えば、当初課題レート1000の予定で設定したが、開始したら全然できなくて、レートが1100になってしまった、など。でも、想定レートなんて設定していないはずなんですよね。ということは、値がばらけすぎると評価できない?それもあまりないと思うんですよ。なぜなら、一人でも値がつくものがあります(高難度級の課題なんか、1名でもちゃんと値が出ます)。また、簡単すぎて全員がFlash、というのも出ません。この辺りは謎です。

まとめ

 筆者が愛用している、Satelliteについて、自分なりに解析してみました。皆様のお役に立てたら幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?