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もはやマグニフィセント・セブンではなく、1強だThere Is No Mag 7. Simply the Magnificent 1.言葉に惑わされず、何が起こっているかよく見るべき

マグニフィセント・セブンは時代遅れ

最近の株式市場で面白い点の一つは、マグニフィセント・セブン(M7)と呼ばれるハイテク企業と、これらの企業が発行する8銘柄に注目が集まっていることだ。

この言葉は、ビーオブエー・セキュリティーズのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏が2023年5月に発表したリポートの中で、さりげなく使った造語だ。ハートネット氏は、1960年に公開されたユル・ブリンナーとスティーブ・マックイーンが主演した米国の西部劇映画の名作「マグニフィセント・セブン」(邦題「荒野の七人」)のファンなのだ。この言葉は流行語になったばかりだ。

2023年、7人全員が実際、壮大だった。それぞれが市場の主役だった。しかし、今年は今のところ、米半導体大手のエヌビディア<NVDA>がマグニフィセント・ワンであり、残りは平凡なものからひどいものまである。しかし、M7という言葉はまだ使われている。ラウンドヒル・インベストメンツは、M7に連動する上場投資信託(ETF)のラウンドヒル・マグニフィセント・セブンETF<MAGS>を発行している。

市場の現実から見て、M7という言葉が時代遅れであり、おそらく引退すべきものである理由を数字で説明しよう。

昨年、M7の中で最も壮大だったエヌビディアのトータルリターンは239%で、他の6銘柄(アマゾン・ドット・コム<AMZN>、アルファベット<GOOGL>、アップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>、メタ<META>(旧フェイスブック)、電気自動車(EV)大手のテスラ<TSLA>)のトータルリターンはそれぞれ49~194%の間だった。

S&P500指数は企業の株式時価総額に基づいているため(企業の株価に基づいているダウ工業株30種平均=NYダウ=とは異なる)、エヌビディアのS&P500指数への影響力はマイクロソフトとアップルの後塵(こうじん)を拝している。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニア指数アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によれば、驚くべきことに昨年のS&P500指数のトータルリターン26.3%のうち62.2%をこの7社が占めた。さらに、この7銘柄を差し引くと、昨年のM7以外の「S&P493」のトータルリターンは9.94%になるという。しかし、テスラは暴落している。テスラは昨年、101.7%上昇したのに対して、今年に入って5月31日までに28.3%下落した。M7という言葉はもはや何の意味もない。少なくとも筆者にとってはそうだ。


Annabelle Chih/Bloomberg

マグニフィセント・ワンというべきか

しかしながら、ウォール街では多くのものがそうであるように、賞味期限を過ぎてもこの言葉は生き続けている。表面的には、テスラが暴落しているとしても、2024年の詳細な数字を解析するよりも全体像を見れば、M7はまだそれなりに壮大である。

シルバーブラット氏によれば、年初から5月31日までのS&P500指数のトータルリターン11.30%のうち53.2%を7社が占めている。この7銘柄を差し引くと、S&P500指数のトータルリターンは6.01%にすぎないという。

しかし、数字をよく見ると、非常に奇妙なことが分かる。

つまり、年初から5月31日までのS&P500指数のトータルリターンのうち、32.26%に相当するエヌビディアの貢献度は、その他6社の貢献度21.01%を上回っているのだ。テスラのマイナスリターンによるS&P500指数への影響を無視したとしても(無視すべきではないが)、エヌビディアの貢献度は、株価がプラスリターンを記録した5社の合計の貢献度25.64%を上回っている。

エヌビディアの優位性には目を見張るものがある。S&P500指数のトータルリターンに対する貢献度は、2位のマイクロソフトの4.6倍だ。そして、エヌビディアとマイクロソフトを除く他の5社のトータルリターンは、それぞれM7以外の493社のトータルリターンの合計6.01%を下回っている。アップルはこれまでのところ、驚異的な6月を過ごしている。この連勝は続くのだろうか。誰にも分からない。

マグニフィセント・セブンという言葉に踊らされてはいけない

筆者がここでお示しするものが、マーケットについて話したり書いたりする際にM7の名前が使われる頻度を変えるとは思っていない。しかし、ビーオブエー・セキュリティーズのハートネット氏がさりげなく作った名前に翻弄(ほんろう)されるのではなく、実際に何が起こっているのかを見るべきだと思う。

エヌビディアの業績や株価の見通しに関する記事や分析は枚挙にいとまがない。そうした中で、見慣れた土地を歩いても意味がない。それに、エヌビディアがこれからどうなっていくのか、筆者には分からない(分かれば良かったのだが)。

映画「荒野の七人」では、メキシコの村に雇われた7人のガンマンが大きな犠牲を出しながらも、悪者が狙っていた食料や物資を引き渡さずに済んだ。7人が村人たちの役に立ったように、M7も投資家たちに役立つのだろうか。それは分からない。しかし、見ていて面白いのは確かだ。ただ、その名前を真に受けてはいけない。

執筆者のアラン・スローン氏は独立系ビジネス・ジャーナリストであり、ビジネス・ジャーナリズムにおいて最高の栄誉と称されるジェラルド・ローブ賞を7度受賞している。

原文 By Allan Sloan
(Source: Dow Jones)
翻訳 エグゼトラスト株式会社

この記事は「バロンズ・ダイジェスト」で公開されている無料記事を転載したものです。