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パルプ小説集

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私の書いたパルプ小説作品をまとめて置くマガジンです。 ©Photo by Sofia Sforza on Unsplash
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#現代ファンタジー

妖魔開闢 -蜘蛛と殺し屋/竜の魔眼-

「先輩、なんか超でっかいダイヤがあるんですけど、さすがに偽物ですよね」  整理整頓が行き届いた書斎。  壁際のキャビネットに顔を突っ込みながら、ユズが呑気な声を上げた。  高校の制服のスカートが揺れる。 「換金目的じゃない。物取りの犯行に見せるためにやってるんだ。手当たり次第、鞄に詰め込めばいいんだよ」  俺は、マホガニーの机の抽斗を抜き、中身をぶちまけながら答える。 「捨てるんでしたっけ。勿体なくないですか?」 「盗品は高価なほど足が付く。教わらなかったか?」 「何も。

幻獣搏兎 -Toglietemi la vita ancor-

 「やめた方がいいよ」  隣を歩く少女は、そう言って顔を覗き込んできた。長い金髪が揺れる。  クリスマスの夜。大通りは、カップル達で溢れている。  行き交う人の中で、少女の姿は浮いていた。バニースーツを着ているのだ。どう考えても屋外で着る服ではないだろう。  だが、通行人達が彼女に目を向ける事はなかった。  何故なら、彼女は俺が脳内で作り出した幻覚だからだ。 「向いてないよ、蓮には、殺し屋とか」  幻聴。この言葉も、俺にしか聞こえない。  少し前から視える様になった、スト