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47 バレーボール【奴隷】


対面式という名の地獄の洗礼を受けた私たち1年生は大阪体育大学に入学してから初めての夏休みを迎えた。

大学生の夏休み。
大学は人生の夏休みだというのに、その中の夏休み。

18年間陰キャラで彼女ができない生活の言い訳をバレーボールに転嫁していたゴリゴリ童貞思考の私は夏休みの夏休みに心踊らされていた。

大阪体育大学は田舎にあるとはいえども思春期真っ盛りの大学生であることは間違いない。遂に彼女ができるのではないかと思っていた7月末。


私たちは1回生の仕事であるボール拾いや床拭きなどが、連日遅い、気が抜けてるのではないかという理由である日、練習終わりに王様である4回生から直接呼び出された。

ちなみに、1回生の指導係をしている2回生をジャンプして直で4回生に呼び出されるというのは、もうお分かりだと思うが死を意味する。

最近たるんでる。ふざけているのか。などの罵声やビンタのプレゼントを一通り頂いたあと、王様から衝撃の一言が。


「じゃあ、明日から五厘にしてきてください」


生涯初めての坊主という十字架は人生のピークであるイケイケ男子大学生達にあまりにもあっさり譲渡された。

今思うと、私たちは絶望的に仕事が出来ていない自覚は無かった。結構頑張っていた。あとから聞いたがこの時の4回生も、3回生も、2回生も全員1回生のこれくらいの時期に坊主になったらしい。


いやただの腹いせだろ…


1回生が何らかの理由をつけられて坊主になるというのは悪しき風習であると分かっていながらも残念なことに自主退部と坊主を天秤にかけたとき1㎜も自主退部に傾くことは無かったので、練習後すぐバリカンを買ってきて、ある部員の部屋に集まり、新聞紙をワンルームに敷き詰め、5㎜とか7㎜とか色んな長さに調整できる文明の利器アタッチメントを使うことなく、全員の髪の毛が儚く散っていった。




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