見出し画像

生物学を斬る#3 【境界領域】

生物学は生命について研究する学問だが、生命を理解するためには様々な他分野の知見、技術を応用する必要が出てくる。そもそも、学問分野は恣意的に分類されたもので、その境界は本来存在しないはずなので、他分野に興味がある人も生物学に興味を持っていただければ幸いである。

生物学は特に化学(生化学)、物理(生物物理学)、情報科学(生命情報科学)と重なりあう部分が大きいように思うので、これらの境界領域について紹介していく。

化学は様々な物質の構造や性質、その関わり合いを研究する学問である。生体内での主要な物質であるDNA、RNA、タンパク質などの構造を調べたり、重要な機能を担う代謝回路を解析したりという研究がなされている。

物理学は物質とその間に働く力や物質を構成する要素を研究する学問である。主に生物という複雑なシステムでの物質の相互作用や細胞間相互作用、生物の動態を熱力学、統計力学、動力学といった物理学の知見を用いて理解しようという研究が行われている。

情報科学は情報や計算の理論、その計算機での実装を研究する新しい学問である。ゲノム情報などの大量のデータを解析することで生物学的な知見を抽出しようとしたり、モデルやシミュレーションを用いて生命システムのダイナミクスを解き明かそうとしたりといったことが行われている。

境界領域として、生物物理学の一種だが、上で紹介したのとは全く異なるアプローチである量子生物学について掘り下げていきたいと思う。
量子生物学とはその名の通り、量子力学がどのように生命現象と関わっているかを研究する学問である。
従来生命というマクロで複雑な存在では量子力学は大きな影響を及ぼさないと考えられてきた。
しかし、生命現象にはDNA複製の驚異的な正確性など古典物理学では説明が困難な現象が存在し、生物は量子のミクロな現象を利用し、マクロで適応的な現象に応用している存在なのではないかという考え方が存在する。
他にも量子力学的現象はある種の渡り鳥がコンパスとして地磁気を感知するメカニズムや、酵素反応、光合成、DNA突然変異に関わっている可能性が指摘されているが、実際に検証された例は少ない。
ただ、それは量子力学的効果の検証が生物というマクロなレベルで困難であることに起因していると思われるので、今後量子力学的効果によって生命の未解決な謎が解き明かされていくのか、期待したい。

生物学の境界領域について、考察している。量子力学がどのように生命現象と関わっているかを研究する学問。生物は量子のミクロな現象を利用し、マクロで適応的な現象に応用している。

ELYZA DIGESTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成