科学的問による研究者のセレクション
変異原を用いて実験生物のゲノムにランダムに変異を入れる。
これらの生物集団中で目的の表現型を持つ個体を単離する。
1,2の手順を繰り返す。
最終的に単離した個体の遺伝情報を調べ、目的の表現型に関わる遺伝子を同定する。
これが古典的に行われてきた順遺伝学的スクリーニングの手順である。
ここでは、「目的の表現型を生み出す原因となる遺伝的変異の特定」という科学的問の解明のために研究者による実験生物のセレクションが行われる。
しかし、神の視点で見てみれば、セレクションされているのは研究者の方なのではないか、とも思う。
下村修博士は「なぜクラゲが光るのか、なぜタンパクが蛍光をはなつのか」という問いの解明のために19年間で85万匹のオワンクラゲを採集し、結果的にノーベル賞の受賞につながるGreen Fluorescent Protein (GFP)を発見した。
19年間同一テーマに情熱を注ぎ続けること、毎日120匹程度ものクラゲをとり続けること、どちらも一般の人にとって極めて困難である。
他の研究者が同じ問いに挑戦していても、GFPの発見に至るまでの過程で挫折してしまっていただろう。
この問に挑戦したのが下村修博士でなければ、クラゲが光る機構はいまだに謎のままだったかもしれない。
現在様々な分子、細胞のライブイメージングに必要不可欠で、生化学実験で広く使われているGFPはなかったかもしれない。
科学的に大きな問(Question)は解かれるのを待っていて、解くのに値する才能・忍耐力のある研究者をセレクションしている、と考えることもできるのではないだろうか?
参考文献
生物学オリンピックを目指す若者へのエール (jbo-info.jp)