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生物クイズ#9【遺伝子スイッチ】


問題

A、B、2つの遺伝子が1時間ごとに発現のオン・オフを変化させる系を考える。ここで、タンパク質Aはクロマチンリモデリング因子で、発現すると大域的にヘテロクロマチンをユークロマチンに変えて遺伝子発現を上昇させる。一方、タンパク質Bは遺伝子A特異的なアクチベーターで、遺伝子Aの発現を上昇させる。よって、以下の2つの規則が成立するとする。

  1. Aは$${\frac{1}{3}×}$$(オンになっている遺伝子数)の確率で、次のステップにオン

  2. BはAがオンのときのみ、次のステップに$${\frac{2}{3}}$$の確率でオン

T=1で遺伝子Aがオン、Bがオフのとき、T時間後に遺伝子Aがオンとなっている確率を求めよ。

答え

$${(\frac{2}{3})^n - (-\frac{1}{3})^n}$$

解説

遺伝子回路をモチーフにしているが、中身は確率的漸化式の問題である。
遺伝子A、Bが時刻nでオンになっている確率をそれぞれ$${a_n}$$、$${b_n}$$とする。

$$
\begin{array}{}a_{n+1} &=& \frac{1}{3}(a_n+b_n) \\\
b_{n+1} &=& \frac{2}{3}a_n \\\
a_{n+2} - \frac{1}{3}a_{n+1} -\frac{2}{9}a_n &=& 0\end{array}
$$

特性方程式の解は$${x = -\frac{1}{3}, \frac{2}{3}}$$であり、漸化式は以下のように変形できる。

$$
\begin{array}{}a_{n+2} + \frac{1}{3}a_{n+1} &=& \frac{2}{3}(a_{n+1} + \frac{1}{3} a_n)\\\
a_{n+2} – \frac{2}{3}a_{n+1} &=& -\frac{1}{3}(a_{n+1} – \frac{2}{3}a_n)\end{array}
$$

よって、上の式から$${a_{n+1} + \frac{1}{3} a_n}$$は公比$${\frac{2}{3}}$$の等比数列になる。

$$
{a_{n+1} + \frac{1}{3} a_n = (\frac{1}{3} + \frac{1}{3}) (\frac{2}{3})^{n-1} = (\frac{2}{3})^n}
$$

同様にして、$${a_{n+1} – \frac{2}{3}a_n}$$は公比$${-\frac{1}{3}}$$の等比数列になる。

$$
{a_{n+1} – \frac{2}{3}a_n = (\frac{1}{3}-\frac{2}{3}) (-\frac{1}{3})^{n-1} = (-\frac{1}{3})^n}
$$

以上の2つの式から$${a_{n+1}}$$を消去して、

$$
{a_n = (\frac{2}{3})^n - (-\frac{1}{3})^n}
$$

答えから、これらの遺伝子は時間がたつと発現確率が0に収束してしまうことが分かる。このような簡単な依存関係を考えると、多くの場合発現確率は0か1に収束する。実際の生体内では、多くの遺伝子が発現を切り替えながら恒常性を維持しており、そのような制御を可能にする精巧な仕組みが備わっている(進化している)ことが示唆される。

遺伝子AとBの相互作用を用いた確率的漸化式を解析し、時間が経過すると両遺伝子の発現確率が0に収束する現象を明示し、生体内の遺伝子制御の複雑さを示唆。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はDALL-Eにより生成

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