あの子に好きだと言ったなら

あの子の部屋に遊びに行った時、寝室のドアノブにネックレスがかけられていた。雑然とした部屋のなかでそのドアノブだけが特別扱いされていることは一目瞭然で、それは彼女に男がいることを容易に想像させた。

解散、解散。無理です。あんな安っぽいネックレスを大事に特別扱いするような仲、どうしようもない…

どうしようもない…

落胆するわたしにうさ耳のメイドさんが話しかけてきた。

「諦めちゃうんですか〜?」
「諦めるも何も、もともと舞台にすら上がってないんだ…」
「上がっちゃえばいいのに〜このままだとどんどん疎遠になって、二度と会わなくなりますよ〜」

わかっている。すでに疎遠になって五年だし、彼女はその彼と結婚している。終わっているのだ。

「連絡先知ってるんでしょ〜SNS監視してるの知ってますよ〜このストーカーがッ!!そのSNSで連絡とってあって貰えばいいんですよ〜」

気づくとメイドさんの手に私のスマホが握られていた。

「ひ・さ・し・ぶ・り・に…お茶でもしませんか…っと…」

わたしはあわてて彼女の手からスマホを引ったくるが時すでに遅し。なんと既読がついている。

「なんてことを…」
「大丈夫!あなたのことなんてな〜んとも思ってないんですから!!普通に返信きますよぉ」

スマホが振動する。SNSのメッセージには「お久しぶりです!」からなる、OKの返事がきていた。

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私はメイド喫茶で冷や汗をかいていた。なぜ五年ぶりに会う憧れの人とのお茶の場をメイド喫茶にしたのか?メイドさんがそう決めたからだ。

メイドさんはハイテンションでオムライスに魔法をかけている。助けてくれ。

「もえもえきゅん!!…ちょっと〜どうしたんですか〜?これから憧れの人に会うっていうのに、テンション低くないですか〜?」
「憧れの人に会うからだよ!しかもこんな場所で…」
「あ〜!!人の職場をこんな場所呼ばわりはないでしょ!最近は女性客も取り込んで頑張ってるんですから!」

【続く】