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    短歌ゾンビは短歌を詠むゾンビ

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短歌7

数を撃ち当てろお前の持つ弾で溺れるほどの愛を求めて 僕の足少しだけ踏むふかふかの足その瞬間生まれる幸 ガラス製コップは手から滑り落ち粉々にじゃあ鋳造学ぶわ 皮膚の下複雑すぎて嫌だから内側を黒で塗り潰す作業 ジャンケンで買った方だけ食べられるアイス一口もらう幸せ 部屋の隅何の気なしに口を開け待ち構えてる奈落の底が 体内を巡る愛早く抜かなきゃもう手遅れああもっともっと 首振るわ喋りにくいわ扇風機告白の練習には不向き 深海の中みたい早朝の部屋天窓から差す光を追え

    • 短歌6

      窓を割る大丈夫これは氷製突き刺さっても溶けてなくなる 空ペットボトル一本二本三本四本五本もうだめだ ダーダン、ダーダン、迫り来る脅威よくよく見ればただのおじさん 手に入らないものが一番きれい例えばペットボトルの影 君が言う「猫撫で声が怖いのよ」僕は黙る「その態度が嫌」 吹き荒ぶ風に飛ばされないように一本のペンにしがみついて 空き缶を口につけて飲むふりする君と二本目買いたいけれど 俺を呼ぶな!!!!!狂わんばかりだ俺はこれから走って海まで行く 爆発のための檸檬は

      • 短歌5

        花の首夕陽に落ちて埋まってく首を掻き分け手を洗う ふくらはぎにししゃもが詰まっていると嘆く君はししゃもに謝れ ああ花でよかったどうせまた春に知られず好かれ知られず枯れる 笑い合うなんて私の夢見がち皿に残るふやけたそうめん ビリビリにちぎれた心拾わずにどうかそのまま散らかしといて 体から出る音全てが汚いお前呪いがかかってるのか? ひとりきり乾杯はノンアルコールビールでひとりじゃない明日に 抱きしめるわけにもいかないから代わりに喉から血でも出そうかな 結露を置き去

        • 短歌4

          幸せの形が大きすぎるので余りはラップして冷蔵庫 サークルモッシュの外周で参加する気分味わうような人生 あざやかな赤に歯を立て現るは湯気の立つよなひかる白色 ぷちぷちと時間をつぶす5時間はぷちというには図々しくない? 4畳半ロック鳴り響く小舟きらきら光る夜を進む もう時計は動いているよ眠り姫そちらの都合でしょほっといて 今日はもうおしまいですよの合図するフローリングに転がってビール 離陸する宇宙船から手を出して慌てて交換する番号 玄関で靴を磨くと怪物がやってくる

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        • 短歌ゾンビ
          7本

        記事

          短歌3

          赤と青螺旋を描く二本どり鼓動が聴こえそうなワイシャツ 水面を境目にして乾く肌滲んだ汗はお湯に溶けゆく わざとだとうわさされてる眠り姫わざとでもいい人だけ来いや 昔は良かった。どのくらい昔?葉っぱが闊歩していた時代 太陽の光を鏡で壁に移す囚われた光がぼんやり笑う 狩ってきた獲物を贈るアイラブユーごめんなさい歯磨いちゃったの 助手席でオレンジを割く香り咲くなるべく長く居てよどちらも 空き瓶に青空詰めます詰めますなんなら虹まで見せましょうか? 花の比喩三種類では足り

          短歌3

          短歌2

          音楽に合わせて体を揺らすよな幸福だけを集めて暮らす 1センチ残るコーヒーもう一度淹れたら?未練は残さないで 僕だけが知ってるベッドの裏のチリ掃除しなよ失せ物あります どうにせよ耳そばだてる他はない天使も悪魔も囁き声 今日もまた階段登る音がする一段ごとにすり減る心 幸を願うあなたの背を眺め隠し味には不幸をひと匙 境界が曖昧になる氷粒一粒転がり込んでカリッ 嵐吹き荒ぶは狭い部屋の中ただ布団に縋る深夜2時 わからずや照らさないでよ僕のことカーテンだって閉めているのに

          短歌2

          短歌1

          飲み口の中に隠れる天国があると信じて今日も覗く 網目柄消えない肌を憂いても知らんふりしてまたねじ込んで 奈落に落ちているけれども背中には枕スマホが手から消えゆく 冷蔵庫開いたり閉じたりやっと取り出すハム一枚ぺらだけ 二人して知ったかぶりの実のない夜悪いか何かを生んでやろう 口の中のマダラ模様触りたい3回に1回は試してる 小窓から見えるマンション小人が住まう国を覗く潜水艦 塩素ブルー 清潔な海 紙パック 今日はふたつジュース持ち込んで 明日には曇って見えない星空

          短歌1

          あの子に好きだと言ったなら

          あの子の部屋に遊びに行った時、寝室のドアノブにネックレスがかけられていた。雑然とした部屋のなかでそのドアノブだけが特別扱いされていることは一目瞭然で、それは彼女に男がいることを容易に想像させた。 解散、解散。無理です。あんな安っぽいネックレスを大事に特別扱いするような仲、どうしようもない… どうしようもない… 落胆するわたしにうさ耳のメイドさんが話しかけてきた。 「諦めちゃうんですか〜?」 「諦めるも何も、もともと舞台にすら上がってないんだ…」 「上がっちゃえばいいの

          あの子に好きだと言ったなら

          未来の王国

          僕はこの四畳半の部屋で暮らしている。 朝この部屋で起きて仕事に行く。さほど辛くない業務をこなして同僚と談笑し、またこの部屋に帰って眠る。平々凡々な毎日だ。 なのに、なんで毎日こんなに明日が来るのが怖いのだろう。 四畳半の部屋は嵐の中の小舟のようだった。 どこにでも行けるはずなのにどこにも行けず、狭く雑然とした部屋の中でいつも絶望していた。 どこかに連れてって、そう願いながら眠り起きて平穏な1日を過ごしまた眠る。 でもその日は違った。 朝目を覚ますと、天使が僕の上に腰掛

          未来の王国

          世界の終わりがあるならば

          「ピンクのスパンコールドレス着ることよりハードル高いことある?」 「ミニスカチャイナとトントンかな」 薄暗い店内でマリちゃんのタバコが小さく光ってる。 マリちゃんは鈍い銀色のチャイナドレスを着てきてた。 「世界が終わるっていうからさあ」 「死刑囚が最後の夜に食べるやつの気持ち」 「今日は足がちぎれてもピンヒール脱がねえからな」 「あ」 マリちゃんが不意に声を上げる。 「あと24時間」 マックの壁掛け時計が3時24分を指した。 マリちゃんはゆっくり息を吐く

          世界の終わりがあるならば

          The paradise

          美女が俺の手を引く…駅のホーム、空港、屋上、客船の受付、ヒッチハイク… 今日はバス停だった。 深夜、バス停のベンチに座っていると時刻表にないバスが来た。扉が開き、電球の光が俺を照らす。目的地の表示には ”paradise” とあった。俺は、それに乗れるのだ。隣には美女がいる。彼女は俺の手を引いて乗り込もうとする。 「乗りましょうよ。パラダイスですって。きっと旅行会社の広告みたいに素敵なところよ。」 俺は動かなかった。 それにしびれを切らしたように鳴ったブザーの音と共に

          The paradise