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風 の 盆

おわらの里へ 靡く風
焦がれ 魅せられ 人のむれ
三味の音 胡弓 町流し
遠く近くに 聞きながら
彷徨い歩く 坂の町

月の明かりが 井田川の
水面に散らし 流れゆく
深き想いの ひとゆえに
別離のつらさ せつなくて
忘れようとて 旅枕

ぼんぼり灯りに 顔染めて
すげ笠乙女の 舞い姿
男踊りの 若い衆
むらさき夜の 夢世界
八尾おわらの 風の盆

         あゝ風の盆
                         風の盆    


 ★ 信濃路を旅した折
  ふと 出合わした ご婦人
  今は 亡き夫と幾度か「風の盆」を見に
  行かれたとか、懐かしそうに語られた
  別れ際 その人の頬に 一筋の涙

   今も忘れられない  

★   平成二十九年五月十三日 
©堀口兵策






 

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