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47才の男性がイメージコンサルを都合3回受けたお話。その3 最終回

 色はビビッドでコントラスト強め。
 キッチリマジメなテイストよりも遊び心加えて、ちょっと夜の雰囲気も。

 パーソナルカラー(PC)診断、パーソナルデザイン(PD)診断を受けて、僕の服装はおよそ『定番』というスタイルが確立し、服選びも迷いがなくなってきた。
 幸いなことに、オシャレですよね、と言って頂けることも増えた。
 人前で話す仕事をしている以上、見た目は大事だ。
 よく内面の方が大事だと言う人もいるけれど、どなたか忘れたけれど、水商売をされている方が言った(と思う)

『人間40過ぎたら、外見に責任を持て』

 は正解だと思う。見た目に内面はある程度反映される。

 カラーに関しては、まぁメンズファッションだし、ダーク系、ダークブルー系で纏めることは苦労しない。カラーシャツに関しては、バブル崩壊、リーマンショック以降、カラーシャツそのものが減っていてチョイスの幅は狭くなったけれど、それでもスーツの専門店(専門店、デパート、量販店含む)に行けば、黒やダークネイビーのYシャツは必ず見つかる。目下の問題は、なかなかワインレッドの良いシャツがないことだ。大般若さん……
 問題はどちらかというとデザインで、昨今のオーバーシルエットの流行もあり、なかなかタイトな服が見つからない。
 サイズ問題というのはなかなか大きい。
 僕が師事している先生の旦那さんがイタリアの方で、お邪魔させて貰う度にシュッとした格好をしていて見とれてしまうくらいだ。
 先生に「○○さん、今日も素敵ですね」と言うと「服のサイズが合ってるからよ」と教えてくれた。
 そうなのだ。欧州の方たちは、アメリカンカジュアルなどのようなダボッとした服より、タイト目の、それこそワンサイズ小さな物をきっちり着こなしている事が多い。そうすることで長身の彼らはよりスマートに見える。
 昔は3桁オーバーだった僕の体重も、70キロあるかないかで落ち着いている。身長185センチ、体重70キロだと日本のカジュアルブランドやトレンド系はチョイス出来るものは多くない。
 もちろん百貨店やそれ相応のブランドに行けば幾らでも選べるが、それには我が財布はスリムすぎる。
 同時に、僕にとって服はある意味で制服に近い感覚があって、その人の個性を表現する、よく見えることがわかっているなら、ずっと同じテイストで問題無いのではないだろうか、と思っている。
 もちろん加齢による変更、成熟は必要だとしても、大きな路線変更せず、似合うパターンの物を着ればいいのではないか? と思っている。
 その上でパーソナルデザイン診断は、大変有効なのだ。
 けれど、決定打! と思っても揺れるのが人の心というか、おじさんである。
 イエローベース、ブルーベースの文字をほぼ毎日ファッション系ツイートで見るようになった昨今、パーソナルデザインも自ずと見かける頻度が増えた。
 その中で、
 『PDロマンスの男性は及川光博さん、GACKTさん、堂本光一さん、薔薇の花束が似合うタイプ』
 とか
『羽生結弦くんは氷上の貴公子。さすがPDロマンス』
 等と見かける度に『良いのか? 自分もPDロマンスで』と思うようになってしまった。
 もちろん彼らと自分を比較するのはおこがましさこの上ないのは分かっているけれど、自分にそんな王子さま、貴公子の雰囲気があるとは思えない。
 それに今年で47歳になったのだし(やっとここでタイトルの47才の男性がが出てくる)、もう一回診断を受けてみても良いかもしれない。
 なにより約3年近く、PDロマンスで服を選んで着てきたのだから、ブラッシュアップの意味合いも込めてセカンドオピニオンを貰うのも悪くないだろう。
 では、どこにしよう。誰に診断して貰おう。
 正直、こういう診断は、お医者さんや占い師さんを選ぶのと同じように、『何を見て貰うか』よりも『誰に診断して貰うか』が大事になってくる。
 アロマセラピーや占いと同じく、国家資格ではないイメージコンサルには、いくつかの流派が存在する。
 骨格などを見る骨格診断や、前述の見た目には性格が反映されることを加味した診断もある。
 僕が選んだのは、イメージコンサルタント、なかでもパーソナルデザインを1番最初に日本でしっかりと公開したK先生のところだった。
「ようこそいらっしゃいました」
 K先生はシックな黒い装いに、赤い小さな薔薇のコサージュが愛らしい方だった。身長は女性でも決して高い方ではなっかたけれど、小ささは微塵も感じさせない小気味よさがあった。
 加賀まりこさんっぽいなーというのが第一印象だった。(以下、加賀先生) 
 加賀先生は、ファイルの資料を指さしながらPC、PDの説明をじっくりしてくれた。
 もともとイメージコンサルは欧米で、黎明期のハリウッド映画や、大統領選などのイメージ戦略に使われていたのが、当時、駐在員として滞在していた邦人の奥様たちが持ち帰ったのが日本への導入の流れだという。
 確かに、服装や仕草などで何千もの票が動く選挙や、それこそイメージ勝負な映画業界で、似合う色、スタイルというのは何においても重要だろう。(その流れ、トランプ元大統領がPDロマンスだと伺った。一瞬え!? と思ったが、確かに彼がSATCに出ていた時、肯く仕草は、なるほどと思わされる柔らかさだった)
 コンサル自体はYOU先生のところと同じで、まずはカラーを見極める所から始まる。
 カラフルなドレープがリズミカルに当てられてゆく。
 PC診断の時は電気を付けず、昼間の太陽光で診断するのが大事らしい。
 確かに照明によって色の見え方は全然変わってくる。昔はスーパーの精肉売り場で赤いライトを使ってお肉を綺麗に見せて売っていたって話もあるくらいだ。
「やはり冬カラーですね。シャープ、華やか、鮮やか、コントラストの効いた色合いが似合いますね。特に、バーガンディーはとってもお似合いですよ」
 そう言って加賀先生は、ドレープをくしゃっと丸め、ポケットチーフのように僕の胸元に飾ってみせた。
 わー、華やか〜。
 パーソナルカラーの面白いところは、似合う色が顔の近くに来ると、サッと顔色が変わり、印象深くなるところだ。
「この色の物は何かお持ちですか?」
「はい。Vネックの薄いセーターがあります」
「いいですね」
 加賀先生が楽しそうに笑った。
 マスク越しでもそれは充分伝わる。
 その後、スーツにするなら、ブラック、ダークブルーで……と基本的なことを教わった。
 さて、いよいよPD診断だ。
 既に加賀先生には今までに診断を受けたことがあること。そこではロマンスだと診断されたことなどは、メールでもお話ししたし、今日の目的もざっくりと伝えてあった。
 その上で、加賀先生は
 『お医者さんのセカンドオピニオンと同じで、前回の診断がどうであれ、最初から先入観なしに診断しますので安心してくださいね』との心強い返事だった。
「では、これはどなたにも伺ってますが、ファッショナブル、ナチュラル、グレース、ロマンス、ハイスタイルの5つですが、この中で2つ、絶対に『違う』と思いますか?」
「そうですねぇ」
 と僕は目の前に広げられた各タイプのイメージイラストを見ながら、
「ナチュラルと、グレースは違うかなって」
「その2つですか?」
「はい。ハイスタイルはもう概念にないというか」
「あら! じゃあ、ハイスタイルも除外ですね」
「あ! すいません、そうですね」
 Tシャツにジーンズ。短パンにパーカーのスタイルは、無いなってすぐに分かる。
 いや、無いのではなくて、イメージが合わない。服と自分の間にブレがある気がする。
 加賀先生は『うんうん』と納得した様子で重ねて訊ねてきた。
「身長は確か……」
「185センチです」
「スラッとしてらっしゃいますよね。入ってきたときもそう思いましたけど」
 曰く、事務所のドアを開けたときから、PDの診断は始まっているという。
 プロポーション。目鼻立ち、喋り方、立ち居振る舞いなど、いわゆる第一印象、外見のみで判断するのがパーソナルデザインなのだ。
「でも、威圧感というか、身長以上に圧迫感を与えると言うことはありませんね」
「あ、それはよく言われます。さすがに並んだりすると大きいねって言われますけど」
「ファッショナブルタイプではそういう反応はまずないですね。北大路欣也さんなんかそうですけど、実際の身長より大きく見えるタイプですから」
「あー、なるほど」
「そしてグレースも違う。もしグレースなら、そういうボタンを開けたシャツの着方をすると、一発で下品になります」
 この日、僕は、ピュアホワイトに、濃紺のストライプが入ったシャツ。そしてチャコールグレイのジャケットとベストというメンタリストのジェーンをリスペクトした装いだった。
「ってことは、やっぱりロマンスですか」
「はい。ロマンス以外無いですね」
「あはは」
 と笑って「でも」と僕は続けた。
「今、ネットでロマンス、男性って検索すると及川光博さんや稲垣吾郎さん、羽生結弦くんなんかが出て来ますけど、僕はその人達みたいに、こう、なんていうか、トロみのある色気って無縁な気がするんです」
 すると加賀先生は
「それはそうです。ロマンスタイプにもいろいろあるんです」
 とスマホを取り出して、とある俳優さんの画像を見せてくれた。
 何年か前に不祥事で話題になったIさんだった。
「この方に似てらっしゃるって言われませんか?」
「は、はい。凄く言われました。彼が起訴されるまでは」
「そうなんですよね。彼、それがあるからあまりブログとかでは取り上げられないんですけど、彼もPDロマンスなんですよ」
「え! ファッショナブルではなくて?」
「まさか! ロマンスですよ」
「えー、ネットではファッショナブルって言われてますよね」
「ネットの記事は当てにはならないですよ」
 ほほほ、と加賀先生は笑った。
「芸能人のデザイン判定はとても難しいんです。彼らは演じますし、なによりライティングやメイク、修正でいくらでも変わってしまう。だから私は直接お目にかかることのない芸能人の場合は、長い時だと数年かけて判断します」
 す、凄い。さすがはプロって所だ。
 (後で、Iさんがバイクと共に写っている動画を見たが、確かにロマンスの特徴を備えていた。バイクというある種とても男臭い要素の傍らなのに、彼の笑顔はとても柔らかかった)
「人は、6種類(男性5種類)しかないのでは無くて、同じデザインでも幅が合って、ロマンスでも、稲垣さんや大野さん、中村倫也さんみたいに、ゆったりとしたロマンスもいれば、Iさんや玉木宏さんみたいなシュッとしたロマンスの方も居るんです」
「なるほど。僕がお手本にするというか、属するのは後者のロマンスって事ですね」
「そうです。間違ってもフリルとか着ないでください」
「あははは。それは着ません。着られませんッ」
 当たり前のことだけど、すべてはグラデーションでキッチリ境界線がある訳では無いし、同じ系統の中なら、みんな判で押したように同じという訳ではないんだな。
 それがあるから女性のPDにはサブといって、ロマンス・グレースとかフェミニン・ロマンスなんていう括りがある。
 男性にサブが付かない理由は、そういう分類を増やしても、服や装いに選択肢がないからなのだろう。
「それと、伺いたかったのがPDを踏まえて、そぐわない行動というか、アクションってあれば聞きたいです」
 そうですね、と加賀先生は少し間を置いて、
「特別にパーソナルデザインごとにはっきりと区別がある訳でもありませんが、PDに合わない所作ですと、人に違和感を与えることがあるのは確かです」
 次のことを気をつけて欲しいと話してくれた。
・大声を出す
・大きな身振り手振り
・相手を威圧する
・忙しく動く
・目をキョロキョロ動かす
 あー、これらは仕事の時に『演じる上で』はするけど、日頃はしないなぁ。
 でも、やっぱり慌ててたり、余裕がないときはどうしてもこうなってしまって、そういう時に限って、何となく雑に扱われたり、安く見られたりする。
 もちろんそれは誰も同じだろうけど、ゆったりと行動しているときとの落差が酷い。
「わかりやすく言えば、粗野な動きや、子供っぽい動きです。あと、へりくだりすぎるのも注意してください」
 ああああ、耳が痛い。痛いよ。
「ありがとうございます。じゃあ、キレイめを意識して、スーツとかもタイトめで」
「そうです」
「じゃあ、ルパン三世で行きます」
「そうですね! ルパン三世。お似合いです。彼もロマンスですよ」
「そうなんですか?!」
「そうですよ。女性にとても優しいですし、常にソフトじゃないですか」
「あー、確かに」
 カリオストロの城のルパンなんて、その極みかも知れない。
 最後まで話が弾み、笑いが絶えないコンサルタントだった。
 翌日、青紫のシャツにスキニーな黒いボトム。それにチャコールグレイのジャケットを羽織った画像を友人に送ってみた。
「まんまルパン三世やん!」
 との事だった。

 最後に。
 パーソナルカラー、パーソナルデザイン、どちらの診断も、なにか確実な定規があるわけではありません。診断する人によりズレがあったり、また芸能人の診断にも幅があります。
 なにより自己診断、素人判断は間違いが多いです。気になる方はぜひプロ診断を。
 僕が都合3回受けて思ったのが、1つの指針として使うなら大変役に立つと言うことです。
 診断されたカラー、デザイン以外が似合わないのではなく、それがベストだということ。
 またどうしても自分のデザイン以外の服を着なきゃなら無いときは、出来るだけ外れ度合いを小さく出来るということだなと。(幾らなんでも僕も海や山に行くときにボタンシャツでは行きません。でも、そういうアウトドアでもキレイめを目指してどこか頑張ることは出来ます)
 それに、オシャレは自分のためにする部分も大きいですよね。
 だから、そういう時と、良い印象を持って欲しいときを別けて考えても良いのかもしれません。
 今日は自堕落に過ごすぞーって時は、僕もTシャツ1枚でネトフリ三昧ですし。
 服やメイクが、毎日をちょっと楽しくしてくれたら、こんなに幸せなことはないですよね。


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