アークナイツ二次創作【ミヅキサイドストーリー】まとめ⑤
――――時刻18:35
イーサンはベッドで寝転び、ミヅキは窓際で外を眺めていた。
待ち合わせの場所までは遠くない。15分もあれば到着できる距離にある。
「んっ……」
ふとミヅキが時計を見つめて、首を少し傾けた。
そして、イーサンの方へと振り返る。
「ねぇイーサン、そろそろ出発する? 遅れるとドクターたちにも迷惑がかかるかもしれないし」
「ん~……あぁ、そうだなぁ。相手が先に待ってたら悪いし向かうとするか」
「うんっ」
イーサンが上半身を起こして「うーん……」と伸びをする。
任務の数十分前だというのに、ここまで気の抜けたオペレーターもそうは居ないだろう。
「イーサンはすごいね。緊張とかしないの?」
「緊張ねぇ……。色々な場所、価値観の違う奴ら、そんなのに出会ってからは身構えても仕方ないって思えてなぁ」
「ふーん、イーサンも色々あったんだね」
「まぁな。つっても、他の奴らに比べりゃ大したもんじゃねぇけどよ」
「そうなんだ」
「ああ」
ミヅキが荷物を持ち、イーサンがペンギン急便との待ち合わせ場所へ向かおうと部屋を出ようとする。
イーサンの手がドアノブへと触れる。
「ねぇ、イーサン」
「ん?」
「悪い人が現れた場合はどうすればいい?」
「悪い人?」
「うん」
「そりゃ……」
イーサンがドクターとアーミヤから言われた内容を脳裏に走らせた。
『――――ミヅキの能力は使用させないこと』
「外に居るのか?」
「うん、数人と……一人、強そうな匂いも混じってるかな」
「はぁ……どうしたもんかねぇ……」
「戦う?」
「……いや、戦ってたら時間が過ぎちまうからな。窓から出てペンギン急便の奴らと落ち合うのを優先しようぜ」
「うん、わかったよ」
「――――おい! ここにロドスの奴が居るだろ!」
二人がドアから離れた途端に、廊下の外から男の声が宿の中に響き渡る。
「い、いや……知りません……」
「嘘をつけ! ここに居るのは分かってんだよ!」
「いや、本当に知らないですってば……」
「ああ、そうかい。なら――――」
「な、なにを――――――」
次の瞬間、店主らしき者の叫び声が宿中に響き渡った。
宿の中へと侵入してきた人物たちは、何をしてでもイーサンたちの居場所を聞き出すつもりらしい。
「ちっ……無関係な奴まで見境がねぇのかよ……。おいミヅキ、早く行こうぜ」
「……なきゃ」
「ん、なんだって?」
「あいつらを消さなきゃ……」
「お、おいミヅキどうした?」
「…………」
いつものふんわりとした声音に被さるように低い声が混じる。
敵の行動がミヅキの癪に障ったのか、ミヅキは部屋を出ようとイーサンを押しのけた。
「ミヅキ、落ち着けって!」
「……イーサン、悪い人を見つけたらね、それが周囲に悪影響を及ぼす前に片付けなきゃいけないんだ。ロドスは良い人たちの集まりだからそうしているんだよね?」
「それは…………」
「そうだよね?」
ミヅキの微笑みにイーサンは苦い表情を浮かべた。
純粋な瞳に迷いはない。ただ、そうするべきだという想いだけが伝わってくる。
ただ、それを簡単に、単純に肯定するわけにはいかない。世界や人々の繋がりはそう単純なものではないのだから。
「……ミヅキ、おめぇの言いたいこと、言っていることはよく分かる。だけどな、俺はお前のことを頼まれたんだ」
「頼まれた? 誰に?」
「ドクター、それにリーダーからもな」
「それで、僕を行かせないとでも言うつもりなの?」
ミヅキの声には鬼気迫るものがある。
簡易な言葉で否定すれば、その敵意は誰にでも向けられるだろう。それがロドスのメンバー、ドクターの仲間だったとしても……。
それほどまでに、ミヅキの中にある闇は深いのかもしれない……。
――――――どうすりゃいいってんだ……。ミヅキをここに置いて店主を助けに行くか? それとも二人で廊下に居る敵を倒すか? いや、それはドクターたちの頼みを裏切ることになる可能性が……。
「――――お、お前何者だ! えっ……うあっ!」
「――――ぐっ……!」
「――――こ、こいつは俺たちの手には……ロストノアは何をしているんだ!」
……誰かが戦っている?
――――ガギンッ……!
重い金属音……剣が鞘と擦れる音……敵か味方かも検討がつかない。
けれど、これはイーサンにとって大きなチャンスだった。
「ミヅキ。店主のことは外で戦っている奴に任せて俺たちは集合場所に行くぞ!」
「え、ちょっとイーサン……!」
イーサンがミヅキの手を掴み窓側へと走る。
幸いにもここは2階。
この程度の高さから飛び降りるのは昔から慣れているイーサンがミヅキを抱きかかえる。
「軽っ……。おめぇ、もうちょっと飯食えよ?」
「イーサン! 敵がいるのにどうして背を向けるの!」
「お前は俺の後輩だからな……怪我でもしたらドクターにドヤされちまうだろ?」
「でも!」
ミヅキが廊下に繋がっている扉を見つめ、焦燥に駆られる。
罪のない者が、悪ではない者が、その命を危険に晒されているかもしれない。ならば助けなければならない……。
「イーサン放してよ!」
「ミヅキ、おめぇは俺よりも強ぇ。それに、曲げられねぇもんを持ってるんだろうな…………けどよ、それでおめぇが傷ついたら悲しむ人が居るってことを自覚してくれよ」
「それはどういう……」
「ほら、ちゃんと捕まってろよ」
「え、えっ……!」
窓枠に足をかけて下を見る。
一人であればどうということはない。しかし、いくらミヅキが軽いとはいえ、2人分の重量を受け止められるかは分からない。
――――うまく着地できればそのまま走ってペンギン急便の場所まで移動。足を挫いた場合はミヅキを行かせてこの付近で隠れて待機ってところだな……。
「さてと……たまには、カッコいい所見せてやるよってな……!」
落下するに従って風圧が二人を包んでいく。
ああ……地面が近づくと怖ぇな……。
「……イーサンは良い人だから、傷ついてほしくない……」
「なに言って……――――!!」
二人が地面と接触する手前、その触手のようなものをイーサンは瞬間的に目にした。鉱石病の者が使うアーツではない。
きっと別の類、触れてはいけないであろうミヅキの能力が顕現していた。
触手がすべての衝撃を吸収した結果、イーサンとミヅキが怪我を負うことはなく、柔らかく地上へと着地した。
「イーサン大丈夫?」
「……ああ、助かったけどよ。先輩の顔を立てるってのも、今後は忘れないでくれよ」
「うん、わかった」
抱きかかえている無垢な笑顔に、横を向いてため息をもらす。
――――ほんとに分かってるのかねぇ…………。それに、こいつに能力を使わせちまった……。ドクターとリーダーに合わせる顔がねぇな……。
イーサンが深いため息をする。ミヅキは飛び降りた2階の窓を見つめていたが、すぐに意識を目の前に戻す。
その視線の先には……。
「――――お前がイーサンなのか?」
「ん? あんた誰だ?」
イーサンとミヅキがロストノアと対峙する。
「ロドスの奴に間違いなさそうだな……炎輪壁牢……」
「「…………ッ!!」」
煮え滾るような炎のアーツにより、周囲は火傷しそうなほどに温度が上昇し、イーサンの額に汗が流れ落ちていく。
「イーサン、僕の後ろにいてね」
「お、おい……」
イーサンを庇うようにミヅキが手でさがるようにと促す。
「他の奴らは通信途絶……宿の中に残っている奴も手練れか……」
ロストノアの独り言にミヅキが冷たい視線を送り、
「僕たちは君に用はないんだ。悪いけど行かせてもらうよ」
と言い終える間際。
ミヅキがロストノアから離れるように後退するその刹那に、炎の壁が三人を取り囲むようにして拡がった。
「熱っ……! ミヅキこいつやべぇぞ!」
「うん、悪い人の仲間みたいだね」
「お前たちに直接的な恨みはないが、ロドスのメンバーならここで大人しく死んでくれ」
ロストノアの拳が燃え盛る。
炎の熱が自身を燃やさぬように制御する力、広範囲まで及ぶアーツ。
現時点で、ロストノアの能力を「脅威」だと認識するのに、そう時間はかからない。
「心配は要らない。すぐ灰になる」
ロストノアの左手には、火球となった炎が形状を大きく変化させていた。
炎の壁によって作られた戦場、照らされた空間は、イーサンの能力を発揮するには厳しい環境だ。
それに加え、ミヅキの能力を使わせることへの躊躇いがイーサンの額により一層の汗を滲ませていく。
「イーサンごめん、彼を止めるためには僕が戦わなきゃダメそう」
「っ…………」
「すぐに終わらせるように頑張るよ」
「……」
――――また俺はなにも出来ねぇのか……。
ミヅキがロストノアの火球を受け止めようと臨戦態勢に入る。
微かに、だが確実に、ミヅキの周囲には蠢く影が見え始めた。
「これで受け止めきれるかも分からないけど、大切なものを奪われるのは嫌だからね」
「大切なものを奪われる……?」
ミヅキの言葉にロストノアが問いかける。
「そうだよ。僕が大切だと思ったものを、見知らぬ誰かに奪われるのは嫌なんだ」
「そうか……。ならば二人仲良く散るといい…………」
ロストノアは言い終えると、火球を投げつけるように勢いよく放出した。それは拡大しながら二人へとまっすぐに飛んでいく。
業火、灼熱の球体。アーツによって生み出されたそれはまるで太陽のようだった。
「――――おやおや、夜だというのに此処はやけに明るいですねぇ」
「「「――――!?」」」
不意に聞こえた声にイーサンとミヅキ、ロストノアが揃って空を見上げる。
帽子を片手で押さえながら、上空から颯爽と飛び降りてきたのはリーだった。
リーは火球に対して垂直に、綺麗な回転とともにかかと落としを決める。
――――ドォオォオオオ……!!
爆散した火球の衝撃波によってリーの姿が一瞬にして視界から消え去り、咄嗟に動いたイーサンがミヅキを庇うように背中で衝撃を受け止める。
ロストノアは自身のアーツを一撃で打ち消したリーの姿を捉えようと目を細めていた。
「イーサン! 大丈夫!?」
「……ん、ああ。怪我はしてねぇみたいだ」
「よかった……」
安堵するミヅキを横目に、イーサンは自分の背中をぺたぺたと触り異常がないかを調べる。
あの衝撃を受け止めれば火傷くらいはするだろうと覚悟していた。だが、無傷のままでイーサンの身体はその場に留まっている。
そして、煙の中から声がする。
「さぁて、お二人さんは野暮用がおありでしょう? ここはしがない探偵に任せてお行きなさいな」
リーは少しだけずれた帽子の位置を片手で直しながら微笑を浮かべる。
「この場からは誰一人として逃がさんぞ。お前も含めてな」
「いやいや、遠慮しますよ。戦いってものは苦手なんでね」
「あの一撃を止めておいてよく言う……」
言い終えるとともにリーへと駆け寄るロストノア。燃えた拳から繰り出される攻撃をギリギリで躱し続けるリー。
「これでも手数が足りないだと……」
「いえいえ、精一杯ですよ?」
「そうか……」
攻撃の手を緩めることなくロストノアが呟いた。
右の拳、左のストレート――――――そこに加えて蹴りが繰り出される。
蹴り上げとともに炎を纏う足先がリーの顎を掠め、放出された熱が皮膚を焼き尽くそうと燃え上がる。
「おっと……!」
後ろに反り返り、そのまま後転することによって炎の噴出を回避するリー。
「なっ……! ちょっ、ほんとに戦闘は苦手なんですってば」
「……攻撃しても、アーツの熱を空気中で軌道修正することで火傷を防ぎ、物理的な攻撃を躱すその身のこなし。戦闘が苦手……? バカにするのも大概にしろ!」
「いやいや、ほんとにギリギリなんですよ? だってほら、探偵ですし」
「嫌な奴だ……」
「あぁ……うちの若い連中にも、よく言われますねぇ……なにが悪いんでしょう……?」
飄々としたリーの態度にロストノアは眉間にシワを寄せる。
「「…………」」
ミヅキが隣に立っているイーサンへと視線を移す。突如現れた探偵を名乗る男の態度に、ミヅキは困惑しているようだった。
「イーサン、僕もあの人に加勢するよ」
「いや、俺たちにはやることがある。ここはリーさんに任せるぞ」
「あの人を知っているの?」
「ああ、少しだけな。リーさんなら大丈夫だ」
「うーん……」
ミヅキがイーサンの言葉を聞き、戦闘する二人の姿を目に映す。
炎のアーツを使うロストノアの攻撃を避け続けるリーだが、反撃する素振りは見せない。反撃ができないのか、それとも手を抜いているのか。
ミヅキはリーの姿をよく観察した。
「……」
「ミヅキ、行こうぜ」
「…………」
「ミヅキ」
「……うん。でも、まずは道を切り開かないとね」
ミヅキがリーに背中を向け、炎の壁をまっすぐ見つめる。手に持つ傘を一文字に振るうべく構えるが――――
「……!?」
ミヅキが動くよりも早く、イーサンが火の壁に穴を開けた。その両手にはスプレー缶らしきものが握られている。
投げ捨てられたスプレー缶がカラカラと音を立てて転がった。
「だからよ、少しは先輩を信用してくれって言ってるだろ?」
「それは?」
「スプレーって引火しやすいからな、念のために消火用も持ってんだ。ほら、行こうぜ」
「え、なんでそんな物を……? ……あ、ちょっと待ってよ」
なぜそのような物を持っているのか。それを聞きたかったミヅキだが、走り出したイーサンを追うために口を閉じる。
「待て!」
「おぉっと、俺と話でもしましょうや」
「――――ッ!!」
二人を逃がしはしないと、駆けようとするロストノアの前にリーが立ちふさがる。
「どけ!」
「それは出来ませんねぇ」
「どけと言っているだろ!!」
――――ガキンッ!!
殴りかかるロストノアの拳。炎の爆発。それを銭剣で受け止めたリーにロストノアの瞳が大きく開いた。
「すみませんがねぇ、あの二人の邪魔をされると依頼主が怒るんですよ」
「依頼主だと……?」
「ええ、一応これでも探偵なんでね」
「ちっ…………まぁいい。お前だけでも確実に殺す」
「帰りを待っている子たちが居るんでね、遠慮させてもらいますよ」
ロストノアがリーから距離を置き、次の一撃のために身構える。
――――ガガッ……ピーッ……ザザッ……。(現場に残されたレコーダー)
「やめておきましょうよ。俺がここで死んだ所で、世界は変わらないですし、あなたの復讐の火は収まらんでしょう」
「知った風な口を聞くな……」
リーとロストノアの声に周囲の雑音が混ざっている。
「ロストノア、レユニオンには所属せず鉱石病患者のために色んな所で活動をしていたらしいですねぇ。種族はコータス。レユニオンの幹部だったフロストノヴァさんとは、ウルサスの鉱山で一緒だったとか……」
「なに……?」
リーの口からこぼれた内容にロストノアが動揺した。
「なぜお前がそのことを……」
「これでも探偵ですからねぇ」
「ふん……それを知ったところで俺は――――」
「己の視野だけで判断するのは、時期尚早だと思いませんか? それで命を落とせば、せっかく救われた命が勿体ないとは思いませんか?」
「……なにが言いたい?」
「レユニオンとして一生を終えるにはまだ早いってことですよ。フロストノヴァさんの最期を知っている者たちに、真実を聞くという方法でここは手を打ちませんか?」
「黙れ、ロドスの奴らが彼女を、フロストノヴァを殺したことに違いはない。遺体も奴らが持ち帰ったと……。それが真実だ!」
「確かにそうでしょう。ですがね、結果だけを先んじて行動するというのはいただけませんねぇ。結果に至るまでの過程、道筋を見ようとしないのは、亡くなった方に失礼だと、俺は思いますがね」
「…………。そんなものをお前たちに聞いたところで、話の内容を書き換えられ捏造されるだけだ……!」
――――周囲の雑音に何者かの声が混じる。
「聞いた話によれば、ロドスは彼女を受け入れようとしたらしいです。ですが、彼女は己の仲間を最優先に考えロドスと衝突したそうです。彼女の最期の言葉を聞いたロドスのリーダーは、死者の言葉を捻じ曲げるような低俗な人物じゃありませんよ」
「フッ……俺にそれを信用しろとでも言うつもりか?」
「仲間とともに散りゆく前に、あなたには真実を知る権利がある、と俺は思いますがね」
「…………」
「それをも拒むと言うのなら、これ以上、俺がなにを言っても無駄でしょう。ねぇ、Sharpさん」
「――――――俺は仕事をしているだけだ。個人の事情などどうでもいい」
一つの足音が近づいてくる。
「……宿の連中を片付けたのはお前か」
「俺の仕事は終わった。そいつの処遇はあんたに任せる」
「そうですかい。とはいえ、さすがに時間が迫っていますねぇ」
Sharpとは違う足音が、どこからともなく聞こえてくる。
「――――火事だぞ! 消化の準備をしろ!」
「「「はい!」」」
近衛局の部隊と思われる声が周囲に響いた。
「さて、あなたには二つの道があります。ここで近衛局に捕まるか、それとも俺と一緒にロドスに向かうか。どうします?」
「俺をロドスに? 俺の目的を知った上で言っているのか?」
「ええ、承知の上ですよ」
「「お前、気は確かか?」」
Sharpとロストノアの声が重なる。
「正気ですとも。言ったでしょう、貴方には真実を知る権利があると。納得できなければ、そこで好きなだけ暴れてください」
「……」
「リー、責任を取るつもりはあるんだろうな? 仕事の範囲外だぞ」
「まぁ……事情が事情ですし……。ドクターなら、こうするでしょう?」
「ふん……まぁいい。俺は先に戻る。俺の仕事は終わったからな。ではまた」
「はい、また会いましょう、Sharpさん」
「……」
足音が一つ遠ざかっていく。
「…………食えない奴だ」
「自分では分からないんですが、それもよく言われますねぇ」
「…………」
暫くの間、周囲の雑音だけが録音されている。
「……」
「決まりましたか?」
「死者の思いを無下にはできない……だが、俺が生きることを、死んだ連中は許さないだろう」
「安心してくださいな、宿にいるメンバーなら大丈夫ですよ」
「……なに?」
「ドクターが言ったのは『敵の無力化』ですから。今ごろは宿の中で気絶しているだけでしょう」
「…………」
「――――宿の中にレユニオンの残党が居るぞ!」
「――――拘束しろ!」
「――――この火はどうするんだ!?」
「……俺を近衛局に突き出さないのか?」
「私は争いごとが嫌いなんでね。中に居るレユニオンの人たちも、あとで近衛局に連絡しておきますから」
「……本当に、お前は食えない奴だ…………」
「フフッ、それは誉め言葉として受け取っておきましょうかねぇ」
リーの一言のあとには、微かな笑い声だけが残されていた。
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