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アークナイツ二次創作「ラップランドの一日」

 ――――――ラテラーノ市街、昼。

 ラップランドはドクターとアーミヤから依頼を受け、ラテラーノへと足を運んでいた。
 ラテラーノの郊外でオリジムシの大量発生が確認され、ラテラーノの上層部がロドスへと依頼。そこで選ばれたのがラップランドだった。

「フフッ、ラテラーノは良い所だね」

 街は美しい建物に囲まれ、美術的価値もあるように見える。
 静かな街に、感性豊かな環境は――――

 ――――――ドガァァアンッ!!

 爆発音とともに、価値のありそうな建物が吹き飛んでいく。

「やった! ジョアンナ見てみろ!」
「ええ! とても独創的な壊れ方だわ、カーク!」
「…………」

 そこに住んでいる者たちが、その建造物と比較して同等の品性であるかどうかと問われれば……。
 半数が口を閉じてしまうかもしれない……。

 ――――――ドガァアアアアンッ!!!!
 ――――――ドゴォオオオオオオオ!!!

「フフッ、相変わらずここの連中は愉快だね」

 爆発音が響き渡る中、ラップランドはカフェテリアで優雅に軽食を済ませていた。
 周囲の人々が彼女の武器をまじまじと見つめるものの、本人は気にもせずサクサクのトーストにかじりつく。

「こんな所に長居なんてしたくないと思っていたけど……フフッ、まぁいいや」

 尖った歯が顔を覗かせる。
 ラップランドは愉快そうに微笑んでいた。

「……さてと、依頼の内容は単純でつまらないし、さっさと終わらせようか」

 ナプキンで口を拭き、自分の背丈よりも大きい風変わりな剣を、腰に携えて歩きだす。

「じゃあ行こうか」


 ――――ラテラーノ郊外。

 街から随分と離れた場所にやってきたラップランドは、目の前に広がる討伐対象を確認する。
 そこには様々な種類のオリジムシが無数に蠢いていた。

「へぇ、オリジムシの大量発生って本当だったんだね。でも、これじゃ面白くない……なにも面白くないよ、ドクター……」

 にこやかな顔が少しずつ狂気を帯びていく。
 無表情の背後には、ただならぬ殺気の狼煙が上がっていた。

「ドクターには、あとでたっぷりお礼しなくちゃね…………フハハハッ!」

 踏み込んだ一歩で飛ぶように、水の中を流れるように標的へと向かう。
 オリジムシの群れに突っ込んでいるのにも関わらず、鞘から剣は抜かれていない。
 接触まで5、4、3、2……。

「さぁ、始めようか!!」

 オリジムシの棘の間にラップランドの足が食い込み、そのままグシャリと不快な音が鳴る。
 刹那に引き抜かれた剣が横薙ぎに、オリジムシの群れを真っ二つにしていく。

「フハハハ! フハハハハハ! 鳴くことも出来ないまま壊れていくといいよ!!」

 ザシュッ……グシャッ……ジャキッ……!

 戦闘狂という言葉が似合うオペレーターは誰かと聞けば、彼女の名前が出ないことはない。
 それほど彼女の戦闘に対する意識は他のオペレーターたちと一線を画している。良い意味でも、悪い意味でも。

「ハハッ! 君たちは汚いなぁ!!」

 オリジムシの飛び散る体液で地面が腐食していく。突き刺し素早く距離をとれば、オリジムシが爆発する。
 潰され斬られ、次々とオリジムシが死んでいく。

「―――――ッ!」

 数十……百に近いオリジムシの死骸が出来上がっていく中で、ラップランドが接近してくる何かに反応した。

「へえ……」

 背後からは無数の棘が、ラップランドへと向けて飛散していた。

 カンッ……カキンッ……カカンッ……!

「フフッ、君たちは初めましてだね。これはドクターに教えてあげなくちゃ……!」

 オリジムシの中に、黒く禍々しい個体が数匹混ざっている。
 背中の棘が再び生成されラップランドへと射出される。

「アハハ!! 君たち、変わってるね……!!」

 放たれる無数の棘を、ラップランドは軽々と打ち落としていった。
  

「源石―オリジニウム―を飛ばす個体か……いいね。だけど……」

 ラップランドが剣を横振りにしようと低く構えた。

 そして、回転とともにラップランドの剣が青白く光り、雷龍がうねるかのような斬撃が新種の個体を飲み込み切り刻んでいく。

「――――そんなんじゃ、ボクは満足できないよ!!」

 斬撃の通り道は地面ごと抉り取られ、そこにいたオジムシは消し飛んでいた。
 そうして、嵐龍が通り過ぎたあとにはラップランドと砂埃だけが宙を舞っている。

「フフッ、やっぱりロドスのオペレーターや龍門の近衛局の隊長みたいなのと死合いがしたいね。これじゃ消化不良だ」

 ラップランドがそっと優しく地に舞い降りる。
 踊るように、暴れるように戦闘を繰り広げていたラップランドには傷一つ付いていない。

「あと数十匹ってところかな。危険な個体は殺したし、これくらいならラテラーノの子どもたちが来ても大丈夫だね」

 剣に付着したオリジムシの体液を振り払い、そのまま鞘へとしまう。

「やっぱり退屈な任務だったね……ドクター……この衝動をどうしてくれるんだい……?」

 誰かに話しかけるでもなく、独りで呟きゆっくりと歩く。
 呼吸に乱れはなく、百匹近いオリジムシを討伐したあととは思えないほど清々しい姿のラップランド。

 襟を軽くなおして、空を見上げた。

「……フフッ、そうだ! 時間もあるし、ドクターにミルフィーユを作ってあげよう! それがいい!!  きっと喜んでくれるだろう! フハハッ!」

 そして、ラップランドはラテラーノで材料を買い、ロドスへと帰還した。

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