「好感度99%のニェンと一日デート?」
「――――だーかーらー! このまえ私と一緒に飯行くって言っただろー!」
「だから今日は仕事が……」
「だぁー! オメーいっつもそればっかじゃねーかよ!」
「……」
その日は朝からロドス艦内に騒がしい声が鳴り響いていた。声のする廊下では、ニェンがドクターへと詰め寄っている姿が見える。
「オメー、いつになったら暇になんだよ!」
「そう、だな……今日はオペレーターの訓練視察と龍門との通信会議、その後はアーミヤとロドスの行き先を話し合って……そのあとケルシーとオペレータについて――――――」
「あぁああ、なげぇーって! もういいから、うだうだ言ってねぇでついてこい!」
「うだうだって…………ッ……!」
ニェンがドクターの手を引っ張りずかずかと廊下を歩いていく。
ドクターは足下がおぼつかない様子で時折り転げそうになっている。
「ちょっと待ってくれニェン……、私はやる事が……」
「うるせー、そんなにやることあったらウチと出かけらんねーだろ? 今日のオメーの予定は全部キャンセルだ!」
「キャンセルってそんな……」
「キャンセルっつったらキャンセルだ! 出かけるぞー!」
ぐいぐいとドクターの手を引っ張りながら廊下を歩き続けるニェンに、ドクターは困惑していた。
「出かけるって……どこに……?」
「出かけるっつったら出かけんだよ、分かったか?」
「そんな無茶苦茶な……」
「へへんっ、ケルシーだって好きにさせろって言ってたんだろ?」
「それはそうだが……」
話をしつつ、辛うじてドクターが引っ張られまいと足を踏ん張ってみせるものの――――――――――
「っ……!」
「フフンッ♪ オメーが踏ん張ったところでウチの力に勝てるわきゃねーだろ? 諦めろよなっ」
「……」
ニェンの言う通り、ドクターがニェンの力に勝てるわけもなく、そのままずるずると引きずられていく。
「ふふーん、今日はどこに行くかなぁ♪――――――――そうだ、飯屋がいいな! それに昔ながらの鍛冶屋を見に行くってのも乙なもんだ! 技を磨いた職人が丹精込めて作り上げた物はな、その職人の魂も一緒に刻み込まれてんだ。ああいうのは一度は目にした方がいいってもんだぞ?」
「…………」
「もー! ほら、久しぶりに出かけるんだからもうちっと嬉しそうにしろよな!」
「そう言われても……」
ドクターが小型の端末を片手で操作して今日の日程を再び確認する。
――――訓練視察をすっぽかせば、あとでドーベルマン教官に何を言われるか分からない……。龍門との会議も、出席しなければウェイやチェンに何を言われるか……。アーミヤは許してくれるだろうが、そのあとのケルシーが………………。
ドクターがどんよりと沈んでいく様子に、振り返り見ていたニェンが嘆息を漏らす。
「ちぇっ……なんだよ……(ウチと遊ぶより仕事かよ……)」
「ん……今なにか……?」
「んなっ、なんでもねぇ! ほら行くぞっー!」
口から出た言葉をうやむやにしつつ、ニェンがドクターを引き連れていく。
ドクターが足を踏ん張ってみるものの、その足を浮かせるようにニェンは引っ張りあげる。
「諦めろってば!」
「いや、しかし……」
「ふんっ……諦めの悪い奴は嫌われんぞー?」
「……」
――――諦めの悪い奴とはどちらなのだろうか……。
そう思うドクターだったが、それを口にすることはしなかった。
そうしてドクターが連れ去られる最中――――――
「あっ、ニェンさんじゃないですか! 久しぶりに会えましたねっ♪」
交差する廊下でアーミヤが右手から現れた。
「お、おぉ……アーミヤか……ひさ、久しぶりだな……!」
ニェンにとってもアーミヤに会えるのは喜ばしいことなのだが、誘拐の真っ只中に会うのは想定外らしく…………――――――
「げ、元気そうでなによりだ……!」
「はい♪ ニェンさんも元気そうでよかったです♪」
「お、おう……」
ニェンが気まずそうに目を逸らしながら挨拶をかわす。
アーミヤはニェンのあまり見せない様子に首を右に左に傾けてみる。
「ん……?」
そうして、アーミヤはニェンの後ろにいる人影へと目が移った。
「ニェンさんが珍しく連れている人は……ってドクター?」
「アーミヤ…………」
「ドクターどうしてここに……? ニェンさんと何かあったんですか?」
「それが……」
アーミヤに犯行現場を見られ、いてもたってもいられなくなったニェンが冷や汗を流す。
ドクターとアーミヤが視線を交差させるとともに、ニェンが小さく「うっ……」と声を鳴らし――――――
「……えっと、んまぁ……その、あれだ! 今から出かけてくるから、あとよろしくな!」
「今から出かけ……ってニェンさん!?」
「で、出かけるっつったら出かけるの!」
通り過ぎていくニェンの後ろでは、ドクターがアーミヤへと手を差し出していた。
アーミヤの頭の上には、大きな疑問符が浮かびあがっていく。
「っ……」
声にならない声でドクターが助けて、とアーミヤに伝えた。
だが、アーミヤは楽しそうに揺れるニェンの尻尾を見て、次にすべき行動を瞬時に考えていた。
アーミヤが手帳を開き、今日のドクターの日程を急いで確かめ始める。
「えっと……今日のドクターの日程はたしか…………」
「…………」
「オペレーターの訓練視察と……龍門会議と…………」
「…………(これは、行っていいのか?)」
止められると思っていたニェンが、睨みを効かせながらチラリと後ろを振り返る。
「……な、なぁ、アーミヤ?」
「あ、はいっ! ニェンさんなんでしょうか!」
「その……止めなくていいのかよ……こいつにも仕事があんだろ……?」
ニェンは拗ねた子どものように、目を合わせないままアーミヤへと訊ねた。
その間も、無自覚なのか、ニェンの尻尾は絶えず揺れ続けていた。
「そうですね、たしかに今日のドクターの日程はすべて埋まっています……」
「そっか……やっぱそうだよな……」
ニェンの尻尾がしゅん……と、うな垂れていく。
あからさまに元気を失うニェン。それに対して、アーミヤは手帳を閉じて優しく微笑みかけた。
「ニェンさん」
「なんだ……?」
「確かにドクターの予定は埋まっています……でも、私のほうで対応できそうなのでどうぞ行ってきてくださいっ」
「――――――――ッ!! ほんとかっ!? ほんとにいいのかっ!?」
ニェンが満面の笑みを浮かべ、ニカッと尖った歯を見せる。ニェンの尻尾も見事に元気を取り戻し、無意識にブンブンと振り回している。
「嘘じゃないよな!?」
嬉しそうにするニェンにアーミヤも笑顔で「はい♪」と気持ちのいい返事を返す。
「そっかそっか! んじゃドクターは借りてくぞ!!」
「……ア、アーミヤ?」
「ドクターもたまにはゆっくりしてください♪」
「そんな……」
「ふふーん♪ アーミヤ、今度なにか作ってやるよ!」
「えへへ、ニェンさんありがとうございます♪」
「んじゃな!」
「はい、いってらっしゃい♪」
ニェンがドクターを肩に担ぎ上げ、さながら誘拐のごとき姿で連れて行く。
後ろで見送るアーミヤにドクターは救いの手を求めるが、アーミヤは笑顔で手を振るだけだった。
「ニシシッ! これで大手を振って歩けるってもんだ!」
「……」
ドクターの視界にはニェンの外套と左右に揺れる尻尾だけが映る。
ドクターは思考を一旦放棄して、ただ目の前で揺れ動く物体だけを眺め続けた。
「なぁドクター、腹減ってねーか?」
「…………少し」
「そうか! ならウメー飯でも食いに行くか!」
「……ああ、そうしよう」
嬉しそうに話すニェンに諦めたのか。ドクターは「下ろしてくれないか」と小さく頼みこむ。
「やだよ、オメーは足が遅いからな。この方が早いんだ」
「……それなら――――――――」
ドクターが天井を指差し、ニェンが首をかしげる。
「上になんかあんのか?」
「……どこかに行くなら、飛んでいく方が早いだろう」
「おー! オメーもなんだかんだでノリ気じゃねぇか♪ よっしゃ! このまま走るぞー! 善は急げだ!」
「え……待っ……下ろしっ――――――――――――」
ドクターの言葉はその場に置き去りにされ、ドクターは担ぎ上げられたままニェンとともにロドスの甲板へと向かった。
時々、振動と揺れでニェンの肩が腹部に食い込み、ドクターが小さく嗚咽を漏らす。その事実にニェンが気づくことはなく、嬉々としてドクターを運び続けた。
甲板へ辿り着いたニェンがようやくドクターを丁寧に下ろす。揺れから解放されたものの、ドクターが足をよろめかせる――――――
「……ッ」
「お、おい!」
倒れかけたドクターの手を掴み、
「……っと、大丈夫かー?」
と問いかける。
「あ、ああ……」
「ならしゃんとしなって。これから飯食いに行くんだろ?」
「そうだな……」
「ふふっ……あははっ……!」
ふらふらするドクターに、ニェンが自然な笑みを浮かべる。その表情には嫌味も嫌悪もない。ただ純粋に笑っているだけの可愛らしい女の子でしかなかった。
「あー……あははっ、それでロドスのトップが務まんのかー?」
「……」
ニェンのせいでこうなっているのだが……とは、その純粋な笑顔を見て言えるわけもなく。
ドクターは足下がしっかりするまで、確認するように足踏みを繰り返した。
そして、二人の前には数少ない航空機が一つ。
現在、ロドスの停滞している付近では天災の兆候は見られない。しばらくは空を飛んでも問題はない。
「っしゃぁ! これに乗って行くんだな!」
拳をパンッと鳴らしてやる気満々のニェン。
だが……。
「…………」
ドクターが辺りを見渡してなにかを探している。
「おいどうしたんだよ、早く飯食いに行こーぜ?」
「……」
――――――あたふた……あたふた……。
「どうしたんだよ?」
「……」
周囲を見渡すドクターに、ニェンが目を細める。
「おい、まさかオメー……」
「…………」
「操縦できねぇってか!?」
「……(こくり)」
ドクターが静かに頷くと、ニェンは頭を抱えてその場に蹲っていた。
「ばっかオメー、操縦もできねぇのになんで空から行こうとしたんだよ……」
「だから、操縦できるオペレーターを探して……」
そんなドクターの姿に、ニェンはしゃがんだまま顔を上げて吠える。
「やーだ! あたしはオメーと飯が食いたいんだ! 他の奴を連れて行くのはいやだ!」
子どもがわがままを言うような態勢に、ドクターにとってニェンの頭がちょうどいい位置に……。
ドクターの手が自然とニェンの頭の上に置かれる。
「んなっ……!?」
「……」
「――――ちょ! お前なに急に撫でてんだ!」
「……なにもできなくてすまない」
オペレーターではなくとも、一人の願いも聞き受けられず、無力な自分を責めるドクター。
「べ、別に謝ってほしいわけじゃねーよ……」
「そうか……」
ドクターの手がそっとニェンから離れていく。だが、ニェンは離れようとしたドクターの手を握りしめた。
「待て……もう少しだけ……許してやる…………」
「……?」
「んなー! だーかーらー! もう少し撫でろって!」
「いいのか?」
「いいって言ってんだろ!」
「わ、わかった……」
ふてくされた子どもをなだめるように、ニェンの頭を撫でるドクター。
しゃがんだまま、膝の間に顔を埋めてされるがままのニェン。だが、背後では尻尾が右に左にと揺れ続けている。
しばらく、無言のまま時間だけが過ぎていく。
「はぁ……もう仕事に戻れよ……アーミヤも待ってんだろ……」
「……?」
「オメーが他の奴らにとっても大切な存在だって分かってるからよ……、私のわがままで、短い人生の一日を無駄に過ごすなんてこともねーだろうよ……」
「……ニェン」
ドクターがその場に、ニェンと向かい合うようにしてしゃがみ込む。
「な、なんだよっ……」
「たしかに、ニェンの過ごしてきた時間に比べれば、私の人生は僅かであり短いものだろう。…………でも、その一日を使ってニェンと居ることが無駄だとは言わないでほしい。私にとっては、これも大切な時間だ」
「んなっ……」
ドクターのセリフにニェンの顔が少し赤く染まる。
「テメー……」
「……ん?」
「少しは自分の言ったセリフの意味を考えやがれ……」
「……」
ドクターはニェンに伝えた言葉を振り返る。しかし、特段気にする言葉を使った覚えはないことに、ドクターが首を傾ける。
「……なにか、気に障ることを言ってしまっただろうか?」
「ちげぇよ、バーカ……はぁ…………」
膝に顔を埋めて隠れるニェンに、ドクターはまた頭を撫でる。
「…………(撫でてほしいのだろう)」
「…………(くっそぉ……なんだってこんな奴っ……)
ドクターはまた、しばらくニェンの頭を撫で続けた。
「……もうやめたほうがいいか?」
「ん……」
尻尾がしゅん……と元気を失う。
「なら、もう少しだけ……」
「うん……」
尻尾がふりふりと揺れる。
「…………そうだ、ニェン、いつもありがとう」
「なにがだよ……、オメーに礼を言われることなんてしてねーぞ……」
「エンジニアのオペレーターたちが君に感謝していた」
「オメーから言われる礼じゃねーってば……」
「いや、君のおかげで彼らのやる気もずいぶんと上がっているんだ。私からも感謝をしなければならない」
「…………ならよ」
「……?」
「…………」
ニェンの言葉を待つドクター。
しかし、ニェンは目線をドクターに向けるだけで続きを喋ろうとはしなかった。
ドクターが首をかしげる。
「ニェン……?」
「……」
「……?」
…………コツン。
ニェンがドクターのマスクに軽くデコピン をした。
「ばーかっ」
「なにを……」
「オメーはほんとバカなやつだな……」
「……?」
ニェンの言動に対して、ドクターの頭に無数の疑問符が散らばっていく。
「……私はまたなにかしたのだろうか?」
「――――ニャー! もういい、今日はやめだやめだ!」
サッと立ち上がるニェンがドクターに背を向け、尻尾の先であっちに行けと合図を送る。
ニェンは腕組みをしながら――――その横顔から見える頬はぷくっと膨れていた。
「ほら、さっさと行けよ……!」
「もういいのか……?」
「いいっつってんだろ! ほら、しっし!」
「……」
ドクターを足蹴にするかのように、ニェンがあしらおうとしていたその時。
――――――ぐううぅぅるるるるぅ……!
ドクターの腹とは別の……ニェンのお腹から鳴ったであろう音に、ドクターがニェンを見つめる。
堂々とした立ち振る舞いだが、その顔は赤面しているのが窺える。
「な、なんだよっ! こっち見んなよっ!」
「ニェン?」
「んゃ……その……これはあれだ。別にオメーと飯食うからって空かしてたわけじゃねーからな! 単純に腹が減っただけだ!」
「……そうか、なら」
「…………んっ」
ドクターが腕組みをしているニェンの腕をそっと解いていく。そして赤面している顔をドクターに見られまいと、ニェンは明後日の方向を見つめた。
解いたニェンの手を取り、今度はドクターがニェンを連れて行こうと引っ張ろうとする。だが、ニェンは足に力を込めてその場から動く気はなかった。
「な、なんだよ……!」
「腹が減っているならカフェテリアに行こう」
「別に独りで食うからいいって……触んなって……」
「ここまで君のわがままに付き合ったんだ」
「だ、だったらなんだってんだよ……」
「今度は私がわがままを言ってもいいだろうか……?」
ドクターの質問にニェンの顔が曇る。
無理やり連れてきたのに、ここで言われる「わがまま」なんて悪いことに決まっている。
「……なんだよ……もう誘うなってか……? あーはいはい、わーったよ。もう連れ出したりしねーって……ウチが嫌なら嫌って言ってくれれば――――――」
「腹が減ったんだ。一緒に食べに行こう」
「ッ…………」
ドクターの言葉にニェンの瞳がキラキラと輝きだす。垂れ下がっている尻尾の先もバタバタと激しく揺れていた。
しかし、喜んでいることを知られたくないのか。ニェンはすぐにムスッと頬を膨らませて切り替える。
「べ、別に……オメーが行きてーって言うなら仕方なくついていってやる……」
「ふっ……」
「んなっ!? 今オメー笑っただろ!!」
「いや、失礼……なんでもない……」
「ちきしょう……なんでこんな奴……」
繋がれた手をそのままに、もう片方の手で頭を押さえる。
――――――どうしてこいつに惹きつけられるんだ……。
「ほら、行こう」
「あ、おいっ! 引っ張るな! んなー! 行くから引っ張んなってば!」
ドクターに連れて行かれるままに、ニェンはその後ろを歩いた。
甲板からロドスの艦内へと戻り廊下をひたすら歩いていく。
途中すれ違うオペレーターたちが不思議そうに二人を見つめては通り過ぎていく。
「だぁー! もういいから離せって! 恥ずいだろ!」
「ダメだ」
「はぁ? なんでだよっ……」
「途中で逃げられたら、独りで食べないといけないだろう?」
「だから、その……もう逃げねーって…………恥ずいってば……」
俯きながら小声で話すニェンに、「そうか」と返事をするドクター。
ただ、ドクターはその手を放そうとはしなかった。
ニェンもまた、ドクターの手を無理に手を解くことはしなかった。
「……なぁ、ドクター?」
「……?」
「ウチがロドスのオペレーターになったら嬉しいか?」
「ああ、もちろん」
「そっか……」
ニェンがドクターの言葉を噛み締めるように自分の中で吟味していく。
誰かが喜ぶ、気に入っている人物が喜ぶなら、オペレーターになるのもやぶさかではない。
やぶさかではないが――――――
「もしかして、なってくれるのか?」
「そうだなー……、それも良いかと思ったが……」
「……」
ドクターの手を放して前を歩き出すニェン。
「オペレーターになったら好き勝手できねーだろ? 誰がなってやるもんか」
「……ふふっ、そう言うと思っていたよ」
数歩先を進むニェンが振り返る。
ドクターがニェンの顔を見つめる。
「……?」
「あっかんベー、だっ」
「っ……」
ニェンの仕草に、珍しくドクターがその場に固まっていた。
「ん? ほら、飯行くんだろ。腹減って仕方ねーんだって」
「あ、ああ……」
先を歩いていくニェンの後ろでドクターが胸を押さえる。
一瞬、ニェンの仕草にキュンとした心臓を確認する。
――――異常は……ないな……。
「ほらぁー! やっぱ遅いじゃねーか! もういい! 担いでいく!」
「え、待っ……ちがっ……」
「ほら、運んでやるって」
「だからそうじゃな……」
軽々しく持ち上げられたドクターが、ニェンの肩へと担ぎ上げられる。
諦めたドクターはカフェテリアに着くまで、ニェンの揺れる尻尾を見つめ続け、周囲の眼差しを見ないようにした。
そのあと、ドクターの奢りで注文された料理は、すべてが真っ赤に染まるほどに香辛料が詰め込まれていたのだった――――――
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