【書籍】表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 (著)若林正恭

日中はお互いの仕事や幼児をして夕方ゲルに戻って夜寝るまで過ごす。仲が良い日もあれば悪い日もあるだろう。たくさん話す日もあれば話さない日もあるだろう。そうやってまた朝を迎えてお互いの仕事をする。それを何年も繰り返してきてこの柔らかい笑顔でぼくとの写真を撮ってくれたのなら僕は結婚というものをしてみたいなと思った。

アメトークで「人見知り芸人」としてテレビにでていたことを思い出す。オードリー若林さんは勘違いされやすい人だと思う。本当の自分とは違う姿をテレビ(仕事)で見せることができることは不本意な気持ちもあると思うけど、やっぱりそれができるのは才能だろう。

若林さんには意外と思われる側面がいくつかある。日本語ラップが好きだったり、若いころ売れなくて風呂なしのアパートに住んでたり、実は男子校元アメフト部のゴリゴリの体育系だったり。ラジオリスナーとしてはそれは当然しっていることだし、それを意外と思うのは世間が勝手に勘違いしているのが原因なのだけど、世間が思うことが若林さんのいう”灰色の街”(日本あるいは世間)では正解なのだからその勘違いをせめてはいけないし、そういう姿をもとめられるのだろう。

この本はそんな辛い20代を乗り越えて30代で売れるために必死で”灰色の街”に適応しつつあった若林さんが、ふと立ち止まったときに、この”灰色の街”の正体を少し理解するために正反対の国だとおもわれたキューバに行ったお話だ。それも初めての一人での海外旅行。

そして文庫版ではモンゴル・アイスランドへの旅行も綴られている。一発屋かと思われたオードリー(若林)はなんとか生き残って、結婚して普通のひとになったんだって思うかもしれないけど、それにはたくさんの葛藤があって、もがいた跡があって、この本にはそんなことが少しだけ垣間見ることができる。

この本が斎藤茂吉賞をとったことは少し驚きだった。まだ読んでなかったけど、正直、芸人が書いた旅行記が賞をとるってちょっと違和感あるなって感じた。先に結論をいえば、それは賞を与えた審査員の方が正解だったと思う。ただ、旅行で起きたことを書いているのではなく、そこで出会ったことを自分の普段感じている違和感を消化して飲み込んでいるのだ。とても素晴らしい。

普段はボケて暴れて、時には番組を回すMCにもなった若林さんの口に出したら照れてしまいそうな本音が読める素敵な一冊です。

#表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬  #読書の秋2020 #オードリー #若林正恭

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