古代の女性天皇の系譜

『女性天皇』(瀧浪貞子、集英社新書、2004年)読了

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新書であるが内容はとても充実して濃い。アマゾン古書で高価格維持も納得。

女性天皇は古代で6人・8代出ている。(江戸期にも2人女性天皇が出ているが、もはや政治とは関係ない存在なので本書では対象外)

1:推古天皇(飛鳥時代)すいこてんのう
2:皇極/斉明天皇(大化改新戦後)こうぎょく/さいめいてんのう
3:持統天皇(飛鳥から藤原京)じとうてんのう
4:元明天皇(奈良時代)げんめいてんのう
5:元正天皇(奈良時代)げんしょうてんのう
6:孝謙/称徳天皇(奈良時代)こうけん/しょうとくてんのう
※2と6は重祚(ちょうそ)・・・再度の即位

 自分にとって、本書での一番の発見というか衝撃は、この6人の女性天皇の系譜は、生存期間が一度も途切れることなく重なりあって続いていることである。つまり554年の推古が生まれた時から770年の称徳が没するまでの間に、次の女性天皇は、なにかしら前世代の女性天皇と同世代で生きて知っていたことである。このことは、資料編【女帝在位表】を見ることで、はじめて気づいたというか知った。バラバラではなく、ひと続きであった古代の女性天皇という存在。

終章でまとめてもらっているように、女性天皇(女帝)とは
・究極的にはすべて「中継ぎ」としての役割を担わされた天皇である
・ただし前期と後期では「ロングリリーフ」と「ショートリリーフ」で役割違う
・言い換えると前期が「皇位のリリーフ」と後期が「皇統のリリーフ」になる

1:推古・・・皇后であり未亡人として即位 崇徳暗殺を受けての非常時に
2:皇極/斉明・・・皇后であり未亡人として即位 譲位で皇極天皇でなくなる
          斉明の時には女帝実子は不可問題をクリアして天智へ継承
3:持統・・・皇后であり未亡人として即位 子はU30のため即位できずリリーフ
       先に子(草壁皇子)が亡くなり、孫(文武)へ継承 譲位
4:元明・・・草壁皇子の未亡人(皇后でない)・・・子(文武)から引き継ぎ
       孫の首皇子(聖武)に継承させる計画のため
5:元正・・・未婚・元明の娘 首皇子(聖武)への継承前のショートリリーフ
6:孝謙/称徳・・・未婚 天武系/草壁系の皇統を継承させるため
          安積親王が先に亡くなり計画狂う。天智系回帰で着地させる

■目次
はじめに
第一章 嗣位すでに空し
 1穴穂部皇子の反乱
 2女帝「ワタミタフリ」
 3所生皇子の排除
 4もう一つの”大化改新”
第二章 皇位継承法を変えた女帝
 1吉野の盟約
 2称制の女帝
 3女帝の挑戦
 4母娘二代の女帝
第三章 女帝幻想
 1悲しき女性皇太子
 2呪縛された女帝
 3”孝謙院政”の実現
 4皇位と皇統
終章 女帝とは何だったのか
 1女帝の係累
 2女帝と斎王
 3女帝と皇位継承
資料編
主要参考文献

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