UA栗野さんのブレのなさ

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モード後の世界 ーユナイテッドアローズ創業者のひとり、栗野宏文による社会潮流の読み方ー(栗野宏文 2020)読了。

栗野さんファンとしては読まずに済ますわけにはいけない。これまで雑誌などで書かれた文章と書き下ろしを追加して一冊にまとめられた著書である。

読後の感想・・・正直、ビックリするほどの「お初!」感はなし。一番の理由は、自分は、かなりの栗野さんファン、ウォッチャーだから(笑)。だいたい以前、どこかで読んだことのある文章であることと、アフリカ関係も概知の事柄だから。学びといえば、いかに自分が栗野さんウォッチャーとして、しっかりフォローできていたか、という再確認くらい(笑)。

過去の文章と新しい書き下ろし部分は、違和感なく接続されて一冊にまとまっている。なぜか?編集が上手い?それもあるかもしれないが、やっぱり根本には、栗野さんの姿勢とそこからの発言に、過去も現在もブレがないから、だと思う。ファッションやクリエーションのような“華やかな””美しい”世界と接していても、“真っ当”な現実世界や社会から遊離しない強さ、冷静さが、栗野さんの強みなんだと思う。そこの冷静さが、社会潮流(ソーシャル・ストリーム)からUAのクリエイティブ・ディレクションへの落とし込みという仕事に一直線につながっているはず。

しつこい繰り返しになるけど、自分にとっては、もはや「耳タコ・・・」な本だけど、これまで栗野さんの文章や考えに、まとめて接したことがなければ、読んだらいろいろ触発されて考えることできる本だと思う。その意味でオススメです!

「いい本だから、読んでみて!」で終わったらいいんだけど・・・可能ならどこかの図書館で過去の雑誌とかでもとエッセイを見る、読むことをオススメしたい。やっぱりページ数の制限ある本より、写真やイラスト、文章が充実していたので。

例えば『マダム・フィガロ・ジャポン』の連載「モードとアートの交差点 230」(2012年3月)の方が、栗野さんの文章の巧さとしての固有名詞の出現や具体的シーンの再現もあって、よりいっそう魅力的ですよ!

もとエッセイのこの回では、海外旅行の心得を紹介していて、冒頭

「こちらの席にいらっしゃいませんか?」話しかけたのは上品なご婦人ふたり組、場所はNY、レキシントン・アヴェニューにある「Sel et Poivre」というレストラン。向かい側の靴屋さんのスタッフがレコメンドしてくれたレストランです。

ではじまり、以下で「僕の旅の心得」の紹介が続く。

 その1:うまいメシ屋は地元っ子に聞け
 その2:いつでもお洒落していよう
 その3:自分の足で歩き回ろう
 さらに:小規模なミュージアムやギャラリーを気にしよう
    :好きなお店には通いつめ、褒めちぎろう (「Odin」を紹介)
    :本屋さんは必ずチェック (「McNally Jackson」を紹介)
    :往きと帰りは通りの反対側を歩こう
    :出張ではリーズナブルな宿、プライベートでは贅沢に
    :長距離飛行時は腕時計を外す

いかがです?「クリノの旅の心得」が何かの参考になればうれしいです。ボン・ヴォヤージュ!

で締められてます。



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