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無茶苦茶な理由を受け入れてくれた先生

 小学校1~3年生まで、私は北海道帯広市に住んでいた。その頃、私はめちゃくちゃ泣き虫で、何かあるとすぐに泣いていた。小1の時の家庭訪問で「お宅のお子さんはちょっと注意すると、すぐ泣くからかわいい」と母は担任の先生から言われたそうである。なんだか好きな子をからかう男子のような教師にあるまじき発言内容だけれど、その先生のことは結構好きだった(相思相愛)。

 小1の担任が偉くなって、どこかよその学校に転任するというので、3学期の終業式ではクラスのみんなが泣いていた。後から教室に入った私は、みんなが泣いているのに気づき、「みんな何で泣いてるの?私も泣こ!」と言って泣きだしたら、周りで泣いていた子たちに笑われた。何が言いたいかというと、私はそれぐらいすぐに泣く子だったのである。

 小2になり、新しい担任の先生が来た。この先生がお題の先生である。当時は何とも思わずに受け入れていたけど、今思うとめちゃくちゃ変わった先生だった。性別は男、髪の毛はもじゃもじゃ天然パーマ、ちょっとロン毛気味。「うひょー」とか言う謎のリアクション。美術が専門の先生で、図工で自画像を描いたときは、肌色禁止令(顔を肌色で塗ってはいけない)が出た。登山で拾った熊のうんこを持ってきて、クラスのみんなに回して見せてくれたりもした。

 ある日の昼休み、何がキッカケか忘れたけれど私が泣きだして、クラスでちょっとした騒ぎになった時があった。友達にからかわれたとかそんな理由だったと思うが、あまりにもずーっと私が泣いているもんだから、先生が来て「何でそんなに泣くのですか」と詰問気味に注意された。私は泣きじゃくりながら、いつも親に言われていたことをつっかえつっかえ答えた。

「あのね、えっく、、、な、な、なきぼくろがね、、、ひっく、あるからぁ、、、すぐに、、、えっく、、ないちゃうのぉ、、、びぇーーーん!」

 私は家でもすぐに泣くため、「泣きぼくろがあるから、よく泣くね」とたびたび親から言われていた。だぶんクラスの子たちは「え?なきぼくろ?なにそれ」と思ったことだろう。私だって子どもながらにそんなの理由になっていないような気がしていた。だから先生が言った一言に逆に驚いた。

「そっかぁ。泣きぼくろがあるから、あなたはよく泣くんだね。」

 それを聞いた瞬間、救われた気がした。自分を受け入れてもらえて、すごくほっとした。それまで「何でこんなことで泣くの!」って怒られても、わからなかった。涙が出ちゃうんだから、仕方ないじゃない。我慢したくても、出てきちゃうんだから。何で泣くのって言われても、理由なんてわからなかったのだ。少なくとも、その当時の私には。

 まさか先生が、こんな無茶苦茶な理由を受け入れてくれるとは思ってなかったので、ものすごく嬉しかった。今思えば、○○ちゃんとケンカしたからとか、こうこう言われて悲しかったから、というような理由が求められていたのかもしれない。先生も斜め上からの答えが返ってきて、びっくりしたのではないだろうか。それともちょっと変わった先生だっただけに、オモシロ回答キターーー的な感じだったのだろうか。

 それ以来、私は先生のことがもっともっと好きになった(すでに最初から気に入っていた。)結局その年、私は別の校区に転校したので、先生とは正味10か月程度の付き合いとなった。だけど先生と交わしたこの場面は、数十年たった今も鮮明に頭に焼きついている。

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