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バラクーダの物語

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私の愛を込めた物語たちの保管庫。
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記事一覧

失われたレモンを求めて #シロクマ文芸部

 レモンからオレンジ、そしてベルガモット。柑橘系の香水を彼女はよく使っていた。  匂いと…

バラクーダ
3週間前
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雨の七夕 #青ブラ文学部

 ヒグチくんは声が小さい。  おまけにボソボソと喋る。  長身だけど痩せていて、自らオーラ…

バラクーダ
3か月前
29

祖父と紫陽花 #シロクマ文芸部

「紫陽花を見つけたら、そこを左に曲がるんだよ」  幼い僕に祖父はそう教えてくれた。  も…

バラクーダ
3か月前
28

【料理小説】ハードボイルド パエリア リポート

 雨は嫌いじゃない。  だが雨の日に仕事をするのは嫌いだ。  だから今日みたいな雨の午後は…

バラクーダ
4か月前
33

【短編小説】五月病ドライブ (後編)

前編はこちら  そもそも健吾は車に興味はなかった。  大学時代、取れる時に取っておこうと…

バラクーダ
4か月前
17

【短編小説】五月病ドライブ (前編)

 突然、健吾の携帯電話が鳴った。  まぁ、電話というのは突然鳴るものだが、未だに電話がな…

バラクーダ
4か月前
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遥かなるオルゴール #青ブラ文学部

「なんでも、小さなオルゴールを貰ったらしいのよ」  晩酌中の妻が言った。  先日13歳になった中学生の娘の話だ。 「それがどうもボーイフレンドからっぽいの。かわいいでしょ?」  赤ワインを飲みながら嬉々として喋っている。  ボーイフレンド?  父親の私としてはその言葉にひっかかったが、実はオルゴールという単語にも興味が湧いていた。 「へぇ、オルゴールねぇ」  動揺と興味を悟られないよう、私も缶チューハイに口をつけた。 「ベッドの横に置いてあって私にも触らせてくれないのよ」

祈りの雨を待っている #青ブラ文学部

今回はこちらの企画に参加させていただきます。 山根さん、今回も宜しくお願い致します。 「…

バラクーダ
5か月前
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クレヨンと選挙ポスターと多様性 #シロクマ文芸部

今回はこちらの企画に参加させていただきます。 よろしくお願いします。 「変わる時が、来た…

バラクーダ
5か月前
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マッチングアプリ(短編小説)

「だから、誰にでも出来ることって価値がないのよ。そう思わない?」  強制的に同意を求める…

バラクーダ
6か月前
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公園にて (短編小説)

 リストラされたサラリーマンが昼間に向かうのは公園と、昔から相場が決まっている。  たま…

バラクーダ
6か月前
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春めくコッペパン # 青ブラ文学部

今回はこちら、山根さんの企画に参加させていただきます。 よろしくお願いいたします。  雪…

バラクーダ
7か月前
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梅の花とかけまして #シロクマ文芸部

久しぶりに物語が書きたくなったので、こちらの企画に参加させていただきます。 よろしくお願…

バラクーダ
7か月前
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秋桜と日本酒 #シロクマ文芸部

「秋桜っていう日本酒があるの知ってる?」  今井部長が僕に訊ねる。  知りませんと答えると、岐阜のお酒であること、それと「秋櫻」という漢字の方で広島にもあることを教えてくれた。  部長のお猪口が空になったので僕は両手でお酌する。「おかわり頼みますか?」部長に伺うと、「次は違う日本酒にしようかな」そう言って部長はメニューを手に取った。  入社3年目の僕が部署移動となり、そこで出会ったのが今井部長だ。男勝りの性格だなんて表現すると部長は怒るだろうが、常に的確な指示を出し、問題解