ブックレビュー 【砂の女】
安部公房(1924~1993)
『砂の女』
私が安部公房作品を読んでいつも感じるのは、「こんな作品を書いてみたい」という憧れから引き寄せられる力と、「私にはこんな作品は書けない」という諦念から突き放される力だ。
この同時に訪れる作用・反作用の力は私を悲しませるものではなく、むしろ喜ばせるものである。
嫉妬や悔しさなど思うわけがない、ただ感謝の気持ちが残る。
同時代とは言えないが、後の時代に生まれて(作品を読むことができて)良かったと。
私の初めての安部公房体験は『箱男