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ニーミの魅力とは【2.メカ編】

前回の初回記事から既に、複数媒体を反復横飛びする怪しさ満点の話をさせていただいたが、今回はいよいよゲーム本編を除けば参考資料が一冊だけという、ほぼ妄想を明文化したものをお送りさせていただくことをここでお断りさせていただく。

と、その前に、今回は何について述べるか、ここで設定させてもらう。
今回のテーマは、ニーミの艤装についてである。
こうした兵器擬人化ジャンルではキャラクターの装備品にギミックを施すのは自然なことであり、アズールレーンにおいてもまた例外ではなく、この装備品が艤装にあたる。
ただ、これまでアズールレーンで、艤装そのものについて焦点を当てた文というものは、自分の知る限りでは見たことがない。メカとしてギミックに非常に凝っているであろうこの艤装もニーミの魅力を形作るものである、ということで、今回はメカ編と銘打って取り上げることとした。

1.まず前提として

今回のシリーズはアズールレーンに触れたばかりであったり、未だに触れていない層をターゲットにしたものである。故に、認識を共有するためにまずはニーミの装備に関連する前提を二つほど抑えることとする。ある程度の理解が済んでいるという方は、目次から次項へ飛ばしてもらって構わない。

(1)ニーミのいる鉄血という陣営

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ゲームのローディング中に表示される陣営紹介。
技術に傾倒する鉄血の代表として出ているビスマルクも、実はインドアな学者肌だったりする。

アズールレーンのキャラクター達は、基本的に自身の元ネタとなる軍艦とゆかりのある陣営に入っている。
ユニオン(アメリカ)、ロイヤル(イギリス)、重桜(日本)など、各陣営は第二次世界大戦における主要な参戦国をモチーフとしている。その中でニーミの所属する鉄血はドイツモチーフである、というのは前回も記した通りである。

さて、このアズールレーンの各陣営にはそれぞれ独自色があり、鉄血の場合は
「(中略)新技術の開発に力を注いでおり、人工知能制御技術と生物工学技術では他の陣営を圧倒している(引用元:ローディング画面陣営紹介)」
というように、高度な技術を持つ集団という紹介をされている。さて、ここで気になる点が出てくる。文中に登場する「人工知能制御技術」と「生物工学技術」とは、一体どのようなものだろうか?

と、ここからは人工知能と生物工学について掘り下げてゆく。のだが、人工知能については明確な定義付けというものがなく、作中の描写についても判断出来るほど存在しない(艤装が自律的に動いてる以外に示せるものがない)。ということで、生物工学のみに絞らせていただく。

さて、生物工学とはどのようなものなのか。定義についてWikipediaのページにはこう記してある。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%B7%A5%E5%AD%A6#:~:text=%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%B7%A5%E5%AD%A6%EF%BC%88%E3%81%9B%E3%81%84%E3%81%B6%E3%81%A4%E3%81%93%E3%81%86,%E6%8D%89%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E7%9F%9B%E7%9B%BE%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82

>生物工学(せいぶつこうがく)は、生物学の知見を元にし、実社会に有用な利用法をもたらす技術の総称である。ただし定義は明確ではなく、バイオテクノロジー(英語: biotechnlogy)やバイオニクス(英語: bionics)の訳語として使われる場合が多く、この両方を含んだ学問の領域と捉えることに矛盾しない[1]。

さらに知らない言葉が増えてしまった。
ともかく、「バイオテクノロジー」や「バイオニクス」を意訳したものである、ということはわかったので、どちらかが鉄血に関係がありそうである。
無論、この二つも調べた。すると後者のバイオニクスについて、関連のありそうな記述が存在した。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E4%BD%93%E5%B7%A5%E5%AD%A6

>生体工学(せいたいこうがく、英:bionics)は、科学的方法や自然界にあるシステムを応用して工学システムや最新テクノロジーの設計や研究を行う学問領域である。
(中略)生命体には進化的な圧力による高度な最適化があり、効率的であるため、これを人工物の構築に応用することが考えられた。古典的な例としてはハス科の植物の表面を研究することにより、撥水加工技術が生まれた(ロータス効果)。他にも、イルカの肌を模倣した船殻、コウモリの反響定位を模倣したソナー、レーダー、医用超音波画像などがある

ようやく、縁遠い研究室の話から、軍艦まで近づいてきた(というか、公式紹介文で最初から「生物工学」でなく「生体工学」と書いてあれば、回り道をせず済んだのではないか……?)。
ともかく、このバイオニクス、あるいは生体工学というのは、端的に言えば、進化してきた生物のいいとこ取りをしてしまおうという学問だとわかる。上記のようなコウモリの超音波を模したレーダーであったり、我々の日常において例を挙げれば、カモノハシをモチーフにした新幹線のノーズがそれであろうか。

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上から、プリンツ・ハインリヒ(1枚目)、ローン(2枚目)、U-522(3枚目)。
特に上記の巡洋艦や潜水艦のような艦種に陣営の特色が色濃く存在している。

この、生物の真似をした技術という要素は、鉄血の上位クラスが使用する装備品から垣間見ることができる。多くの陣営が史実の軍艦そのままなデザインを残した艤装を採用しているのに対して、鉄血の、特に大型艦は金属で生物を模したデザインの装備を多数採用している
例えば上に載せた画像のように、プリンツ・ハインリヒは東洋の竜と魚をミックスしたようなデザインの武装を従えているし、ローンは自らの尻尾の位置に龍を模したような頭を装備している(らしい、資料を見たことがないので位置について確証はない)。他にも、潜水艦のU-522が跨がるのはサメそのものと言っていい装備であり、水中から襲撃する潜水艦にはイメージ的にピッタリではある。
このように、バイオニクスという言葉には失礼なアバウトさではあるが、水上や水中で活動することに特化した装備を、棲息している生き物からヒントを得て作っているということはお分かりいただけたと思う。

(……ただ、これらの艤装において口に位置する部位には、ビームが発射可能と思われる砲口が据え付けてある。仮にそのような高出力なマシンを製造できる技術があるのなら、わざわざ既存の生物に形を似せずとも、パワーで勝てるのでは……?と思わないでもない。が、この項では概要を述べる以上は行わないので、疑問は置いておこう。)

ともかく、ニーミの仲間達は猛獣使いじみた姿や戦い方をしている、ということを抑えていただければ、十分である。

(2)ニーミの付けている艤装はどのようなものか

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初期のニーミ。鉄血の駆逐艦は、巡洋艦以上に比べれば大人しいデザインが多い。

さて、ようやくニーミの話である。ニーミの付けている艤装はどのようなものなのか。
一見したところ、前述の大型艦に類するキャラ達に比べればさほど禍々しさは感じられない、主張が控えめな装備に見える(ギザギザの口は鉄血らしいが)。これは鉄血の他の駆逐艦とほぼ同じものだが、形はともかくとしてスペックは侮れないものがある。
それについてはまず、元ネタとなった1936A型駆逐艦について述べる必要がある。以下は、アズールレーンwikiのZ23用ページ、その元ネタ欄から引用したもの。

https://azurlane.wikiru.jp/index.php?Z23

>これまでの1936型駆逐艦、つまりZ17型とは違い、主砲が150mmに強化され、船体はZ17型と共通なものの改良がおこなわれていることが特徴。

史実においては、主砲をより大型のものにすげ替えられたものの、先代と船体は共通である、とされている。1936型から1936A型への変更は、数字の変わっていない型番からも伺えるように、基本形はそのままで、小改良か、武装変更をしたバリエーション扱いというのがしっくり来る位置付けの仕方であろうか。
ただし、これはあくまでも史実の話であるアズールレーンのニーミそのものではない

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ニーミもとい1936A型の前級である、1936型のZ18(1枚目)とZ21(2枚目)。

史実において改良元となった1936型のZ18やZ21、そして改良先のニーミの画像を見比べてほしい。アズレン版デザインでは小さくない変化が見て取れるだろう。両脇に抱えていた魚雷発射管は片方のみにオミットされ、代わりとして空いた背中の艤装基部に主砲が接続されている。
この、Z23が魚雷発射管を一基減らした、ということは史実で確認されていない。では、何故このような変更が起きたか(キャラデザが違うから、というメタな理由は捨てておこう)。
推測の域になるが、150mmという駆逐艦が扱うには手に余る大型砲を撃つため、ではないだろうか。

さて、駆逐艦が扱う砲としては、ジャベリンの初期砲の120mm、綾波やラフィーの初期砲127mmなど、だいたい120mm台が平均的な大きさとなるだろう。
対するニーミは、もう一回り大きい軽巡洋艦が常用するクラスである150mm砲を扱う。この30mmという違いは、小さいようで意外と大きい。威力も射程も他の駆逐艦のものを圧倒できる代わりに、砲自体が重くて大きいから取り回すのに苦労するだろうし、小さな腕で砲撃の反動を受け止めることは難しいに違いない。
それでも、ニーミは巨砲を撃ちたかった。ニーミに巨砲を撃たせてやりたかった。……どちらが正解かはわからないが、ともかくニーミ自身か関係者に執念があったことは確かであろう。

では、この問題をどうやって解決したか。その答えのひとつが、背中の艤装への接続である。

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バイブリー版アニメより。主砲が多重関節のアームにより接続されていることが、このアニメでは何度も描写されている。

それを示したもので最も理解しやすいものが、バイブリー版アニメである。この作品におけるニーミの艤装は、主砲と魚雷をフレキシブルに動くアームで背中の背負い式艤装に接続している、という表現がなされている。
このアームがパワーアシスト機能を有しているのなら、重い砲を軽々と振り回すことも出来て当然であろう。また、鋼鉄製の腕が増えたのだから、砲撃の反動も抑えられる。この描写は非常に納得させられるものがあった。

だが、この補助アームを活用するには、背部の艤装に接続するスペースが必要になる。そう考えたときに、接続を阻む魚雷発射管は邪魔な存在である。故に、片側を撤去し、スペースを確保した形になった、という考えが成り立つ。
仮にそうであったなら、ニーミの艤装は大型の砲を撃つために他を犠牲にした、少しピーキーな作り、という見方も出来る。魚雷は駆逐艦にとって、戦艦すら沈められる可能性を秘めた切り札だ。そんな必殺武器を捨てて砲を積む、という割り切り方はかなり思い切ったものであるし、主流から外れる覚悟を決めてまで拘りきったのであろう。

ニーミの艤装は、一見するとごく普通の駆逐艦装備だ。しかし、そこには努力や苦心の跡が見受けられるし、その結果として尖った思想の装備が生まれたのかもしれない。
まあ、これがニーミの魅力を述べる記事である以上、そんなところもカッコいい、という話になるだけなのだが。

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びそくぜんしんっ002話より。今回書いたもの以外にもニーミは努力を示唆している。

2.ニーミ、ハジける

さて、十分にピーキーであると示したニーミの艤装であるが、それでもZ24(ニーシェ)やZ25(ニコ)などのゴテゴテとした妹達の装備、また先述したプリンツ・ハインリヒやローンなどの大型艦装備に比べれば、大人しい印象は拭えない。

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Z24(ニーシェ)。駆逐艦の禍々しさではない。

だがしかし、アズールレーンには改造というパワーアップイベントが存在する。そしてニーミも、改造により進化していることはご存じの方も多いであろう。

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Z23改。キャラの背中に隠れている部分もラフ画に起こされており、かなり凝っている(これを書きたいがために今回書いているまである)。

改造前の「主砲×1、副砲×1、魚雷発射管×1」という武装が、改造後には副砲が合計三倍まで追加(これについては、クロスウェーブの3Dモデルが理解しやすい)。また対空砲も増設され、なによりレイアウトが変化している。

そう、あの竜とも魚ともつかぬ、強いて言えばリュウグウノツカイのような、あの鉄血独特のフォルムにかなり近づいている。そして主砲の鎮座する口から喉へ辿っていくと、また鉄血の装備にありがちなエネルギーパイプらしき管が見える。
喉からエネルギーが供給される先は主砲。つまり、砲の火力もパワーアップしているということが理解出来るし、進化したのは形だけでないことは明らかである。
火力が上昇したことは、他の部分からも伺える。以前のように背中に接続するだけでは反動を制御できなくなったのか、補助アームがさらにニ本追加されているし、一本だったグリップも倍に増え、両腕で構えることを前提としている。取り回しの良さをさらに磨いたという面もありそうだが、威力と共に増加した反動や重量を受け止めるには、そうするしかなかったのであろう。

だが、砲火力が増した代わりに、他については外見から大きな変化は見受けられない。以前に半減した魚雷発射管は増加どころか復元すらしていないし、他に改良されたことといえば対空砲が設置されたくらいだろう。
つまり、駆逐艦離れしていた火力に満足せず、さらに砲火力を全力で強化したというわけであり、マッチョイズムそのものな動機といえる(単刀直入に言えばバカ)。
また、駆逐艦であまり見られない対空砲の追加、艤装の形状そのものを上位クラスのものへ変化させたことを鑑みれば、駆逐艦としてさらに強化するというものではなく、駆逐艦で巡洋艦を作りたかったという思想が見えてくる。

3.終わりに

ニーミというキャラがどういうものかについて、前回取り上げた。そして今回は、そのニーミが担ぐ艤装がどのようなものか、という点に注目した。
ニーミが地に足つけた思考の持ち主であると前回述べたが、そのニーミが背負う装備は、実のところ非常に冒険的な思想の下で作られたものであった。
現実主義者のニーミが、理想により出来た装備を身にまとっている。そう考えればこの姿は、よく出来た凸凹コンビであり、また人とモノとして考えれば意外性に富んだ組み合わせと言える。

まあここまで長々と書いてきたわけであるが、結論として「そんな艤装そのものもニーミもカッコいいよね」としかならないわけであるが。
ただ、ニーミというキャラクターがロマンを具現化した装備を身に着けている、というギャップは理解していただければ、ここまで書いてきたこちらも救われるというものである。

最後に、ファーストアニバーサリーアートコレクションを購入してくれたIくん。おかげで今回、このような記事が書けています。本当にありがとう!

それでは予定通りなら来週、次回の史実編でまたお会いしましょう(日本語の文献がどれもあやふやすぎて、もう辛い)。

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