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えすろくろくまる

とにかくプラスチック製のキャリーケースにシティーを入れるのに苦労して、引っ掻き傷を作りながら、血だらけで、我々は、愛車ホンダビートに乗り込んだ。

目指せ高尾山!車の屋根の幌はあらかじめ空けてあった。狭い2シーター。サリーが乗るには、キャリーケースを先に運転席に乗った私が一旦預かって、サリーがフリーハンドになることが必要であった。
それくらい低くて狭い室内、シート。シートベルトを締めた、サリーの膝の上に、シティーの入ったキャリーケースを置いてもらう。足元にはとてもスペースがない。置けなくもないが、サリーの足が乗って変な格好になってしまうので、サリーのジーンズ701の膝の上となった。
イグニッションキーを捻ると、セルが回って、エンジンがかかる。
その時、シティーは大声で鳴き始めた!

にゃーお!にゃーお!
大丈夫だよ、シティー、と、私は言って、ショートストロークのシフトレバーを、一速にいれて、走り始める。
走り始めると、シティーの鳴き声は更に大きくなった。
大丈かしら!?

車内に吹き込む風の音としての、鳴き声を上回る大声でサリーが言う。
そうのうちなれて、静かになるよと、私。

しかし、悲劇は走り始めて10分も経たずに起きた。

サリーが、

あー!あー!漏らした!シティーが、おしっこ漏らした!キャリーケースから溢れたシティーのオシッコは、サリーの701の腿の辺りを、グッショリ濡らしてしまった。

あー!シートには染みないようにしないと!なんとか、ジーンズで受け止めて!タオル、タオル!、あー、トランクだ!

やだー!もう無理!
サリーが叫ぶ。
中止!中止!無理無理無理!帰ろう!
車に慣れてない猫がこれほど、車に乗るとパニックになるとは、全く想像してなかった。

にゃーお!にゃーお!
あー!あー!足が、足、オシッコまみれ!


こうして、2人とシティーでのドライブは次回は無いことが決まった。

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