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読書備忘録

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本を紹介したnoteをまとめています
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2020年8月の記事一覧

コロナ黙示録 (47-50)

海堂尊氏の桜宮サーガと呼ばれる一連のシリーズは、不定愁訴外来医師 田口公平と厚生労働省 白鳥圭輔のコンビの活躍でドラマ化・映画化もあって人気のシリーズです。 そのシリーズ最新作がまさに今も連日報道を賑わせている「新型コロナウイルスcovid-19」を題材にしている作品だけに、発売前からとても期待していました。 元々、病院の問題をいち早く取り入れたフィクションを得意とする著者ですし、作品の重要人物 白鳥圭輔も今問題視される厚生労働省の役人ですので、未だ解決といかないコロナ問

人は忘れ、真実にたどり着く (46-50)

おはようございます。日中の暑さも応えますが、夜しっかり眠れないのも体に応えますね。昨夜もなかなか寝付けず、朝は朦朧としつつ早くから起きています。 せっかく早起きしたのだからと、借りてきた本を読みはじめましたが、朦朧とした頭で読んでもなかなか思うように進みません。 しかし作者の力のおかげか、1冊読み終えることができました。津村記久子氏の新刊で、SNS上での評判も上々の作品です。 アルバイト先に忘れられた一冊の本。それは誰からもまともに取り合ってもらえなかった千春がはじめて

昨日壊れはじめた世界で (45-50)

おはようございます。6時に起きたのですが、もう既に太陽がギラギラと輝いていて、今後暑くなることを予感させています。 さて、昨夜今回図書館から借りてきたもう1冊、初めて読む作家さんの作品を読み終えました。 「小説新潮」に連載された連作短編集を、2作ほど改題して発表されたこの作品は、今の日本の若者たちが背負っている社会問題、それによってもたらされた苦しみを静かなタッチで描いた佳作でした。 「実は、世界は、もう壊れはじめているんだ」幼馴染の翔子と再会した書店店主・大介は、すっ

描写の激しさに戸惑いつつも 頑張って読んだ作品(44-50)

今週も始まりましたね。少しは暑さがおさまったらいいですね。 さて今回図書館から初めて読む作家さんの作品を借りてきたとご報告しました。その1冊、小野美由紀氏の作品を昨日読み終えました。その作品は私には衝撃的なものでした。 遠い未来、地球軌道上の人工衛星で暮らす女性たちは、国を守るために子供を産むこと、そのための妊娠を義務付けられていた。ただしそれには、地上に棲む男たちを文字通り「食べる」ことが必要とされる―そんな変わり果てた世界で「普通の」女の子として生きるユミの葛藤を描き

つけびの村 (43-50)

昨夜は本当に暑く寝苦しくて、3時から起きています。まだ外は真っ暗です。そんな夜、とても興味深いノンフィクションを読みました。そしてこの作品は今年のノンフィクション大賞の候補にも選ばれています。 2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。犯人の家に貼られた川柳は“戦慄の犯行予告”として世間を騒がせたが…それらはすべて“うわさ話”に過ぎなかった。気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された“うわさ話”を一歩ずつ

作家が愛したTシャツたち(42-50)

週も後半に入りました。今週の調子はいかがでしょうか? 私は昨日図書館に行き、本2冊と漫画を1冊借りてきました。 漫画は「新テニスの王子様」のコミックです。意外でしょうけれど、ジャンプ連載時から愚息とともにファンで、幸いにも図書館がコミックを入れてくださって、最新刊を続けて読むことができています。 そして借りた本2冊のうち、1冊は村上春樹氏のエッセイで、昨夜読み終えました。 それがこちらでした。 つい集まってしまったTシャツたち。『ポパイ』連載の人気エッセイが一冊になり

法定遊戯(41-50)

不思議な題名だと手に取った時から、気になっていました。そして読み終えてその謎が解けても謎からの開放感を味わえずにいます。 その作品は第62回メフィスト賞を受賞し、改題された五十嵐律人氏のデビュー作です。 法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義(くがきよよし)と織本美鈴(おりもとみれい)。二人の“過去”を告発する差出人不明の手紙をきっかけに、彼らの周辺で不可解な事件が続く。清義が相談を持ち掛けたのは、 異端の天才ロースクール生・結城馨(ゆうきかおる)。真相を追う三人

母語は血と同様に選べない(40-50)

相変わらずこの暑さの中、朝から夫はゴルフを楽しむため出かけていきました。おかげで私はのんびりと過ごしています(笑) 今日は私があまり手に取らないようなギャンブル小説を読みました。それがこちらです。 東アフリカの大国エチオピアとの国境付近。ルイこと龍一は、そこで知り合ったイタリア人の男・ピアッサとE国へ潜入した。バベルの塔を思わせる巨大な螺旋状の塔内に存在する無数のカジノが、その国の観光資源だった。そこは、砂漠のなかに屹立するギャンブラーたちの魔窟。上階へ行くほど賭け金は上

ひこばえ(39-50)

「暑いですね」会う人会う人、この言葉が挨拶がわりの今日この頃、皆さんお元気でしょうか?こちらも日中35度を超える日々が続き、夜更かしをする日が続いています。 今日紹介する本は、新聞に連載中から好評とのことで図書館に予約し借りたたものの、実際に手に取ったときの重さにこの暑さの中、読み終えることが出来るのかと不安がよぎりました。 しかし重松清氏が描く物語は予想を裏切ることなく、実に深く、読む年代を問わない力強さでグイグイと私を引っ張ってくれました。 世間が万博に沸き返る19

ポラリスが降り注ぐ夜(38-50)

本との出会いは様々です。本屋に平積みされた新刊、図書館新着の作品、covid-19の影響が大きくなってからは、出版社のwebサイトやメール、最近では出版社note、またnoteの読書感想文からも情報をいただいています。 今日紹介するのは本屋で題名に惹かれ、読んでみたいなと思って温めていたところ、図書館で借りられることになった作品です。 借りた時は気づかなかったけれど、先般の東山彰良氏、今回の季琴峰氏ともに台湾のご出身。私も台湾に縁があるといいなとニンマリしています。 多

過ぎ去りし時間は誰にとっても輝いている(37-50)

曇り空に少し高い気温が遮られる感じですが、午後はどれだけ上がるか心配です。皆さんがお住まいの地域はいかがでしょうか? 暑さのせいで自宅以外はエアコンがガンガン効いているので、買い物などの外との出入りで身体が怠く、日中の読書が進まず、やっと熱が収まる夜更けに本を読む日が続いています。 読み終え今日紹介するのは初読み作家、池永陽氏が2018年に発表した作品。 私のように古き良き昭和時代を生きたおっさんたち主人公が、昨今問題化されている商店街の生き残りをかけ活躍する作品だけに

幼い頃を鮮明に(36-50)

昨日は37度を超えた田舎町は、熱帯夜となり、今日も35度を超えています。 まさに真夏です。とにかく喉が渇き、汗が噴き出て、熱中症に気をつけねばというその思いで過ごしています。 さて今日は祝日、山の日です。連休のために何冊か図書館から本を借りてきて、まずはこの1冊を読み終えました。 台北の紋身街は、日本でいえば新宿・歌舞伎町一番街の一角か、あるいは渋谷センター街の裏路地か――世界中のどの街にも必ず一本はあるだろうと思われる、細くて小汚い、猥雑な通りだ。昼間でも夜みたいに暗く

SFトリビュート作品に惹かれて(35-50)

土曜日の昼下がり、そして連休第1日目をいかがお過ごしでしょうか?こちら時折雨がちらつき、昨日までの暑さではなく、湿度の高い1日になりそうです。 こんな不安定な日に夫は早朝からゴルフに行きました(苦笑) さて私は早川書房のnoteをフォローさせていただいているのですが、以前このnoteを読んで、是非作品を読みたいと図書館に予約をしました。 図書館でも人気が高いようで、やっと順番が回ってきて、「三体」の第二部を読んだばかりですが、SFを楽しむことができました。 いくつもの

宮部みゆき氏の新時代小説(34-50)

こちら昨日はこの夏の最高気温を記録し、久しぶりの熱帯夜も経験しました。けれど暦は立秋、秋に突入です。梅雨が長かったせいか、これで夏が終わるのは寂しいです。 昨日人間ドックを受診、新車の点検を終えてから、ゆっくり宮部みゆき氏の時代小説を楽しみました。 舞台は江戸深川。いまだ下っ端で、岡っ引きの見習いでしかない北一(16歳)は、亡くなった千吉親分の本業だった文庫売り(本や小間物を入れる箱を売る商売)で生計を立てている。やがて自前の文庫をつくり、売ることができる日を夢見て……。