ウクライナ、ロシアを『下流志向』から見る

1週間やそこらで、終結を見るとも囁かれた、ロシアによるウクライナ侵攻は、一向に着地点が見えてこない。
さらに、食料の問題、環境問題など、単純に局地的なものにとどまらない広がりを見せ始めている。

歴史を振り返れば、太平洋戦争開戦にあたっても、日本側は「ABC包囲網」という名の経済制裁など、やむにやまれぬ事情を抱えていた事実がある。
開戦そのものを避けえたかどうか、戦闘行為による人道的問題、戦局を終結させる決断など、ロシア側に改善の余地は大いにあるとした上で、社会として、両方の側面を検討することは、今後、新興国の挙動について考える重要な材料となるはずである。

ロシアの戦闘行為によるものを除いたとしても、政治・外交判断として、食料などの物価高騰や、地球環境全体に対する永久凍土や、メタンガス放出による温暖化についての問題が起こっている。これについて、見過ごされがちな点として、次を挙げたい。
1.国際経済的に不利な状況に置かれた側は、持っている外交カードは、どんなものでも使いうるものである。(食料や地球環境を人質に、自分たちの立ち位置を守ろうとする)
2.ロシアが、このようなカードを切る可能性があることが、どの段階で、どの程度、想定されていたかは、不十分ではなかったか。

・ソビエト崩壊によって、ウクライナなどを失った痛手が、ロシアにどのくらい影響していたか。
・1.4億の人口と、世界最大の国土を抱える国家として、食料を含めた環境問題において、その重要性は、国際社会で十分に認識されてきたか。「一票の格差」問題と同様の構造で、国土の保全・開発という意味では、むしろ負担が大きいことは、見過ごされてきていないか。
・もともと、低い人口密度は、「低成長」を意味し、雪で社会を閉ざされている北欧諸国は、歴史的にも、植民地主義(イギリス、オランダ)、IT(エストニア)、SDGsなど環境・人道に対する発言権(デンマークなど)によって、国家の活路を求めてきた。
・内田樹著『下流志向』でも指摘されたように、「不平の等価交換」という概念は、むしろ外交でこそ、頻繁に利用されるものであろうが、その幅に対する認識の甘さはなかったか。

BRICsなどと、地下資源や労働資源が注目されたにもかかわらず、そこから大きく逸れざるを得なかった事情があった時点で、むしろ、国際社会の側に、何かしら支援できることがあったのではないか。
「誰一人取り残さない」という、理想社会の実現に近づこうとするなら、やはり、それぞれの事情を十分に理解することが不可欠であるように思えてならない。関係が悪化してしまうことで、かくも修復が困難になることを肝に銘じつつ、当然ながら今からでもできることを模索していかなければならない。

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