一人になりたい時の話
※土曜日は読む人が激減することが判明したので、個人的な話を。
先日、ある女性の方から「男の生理」という面白い言葉を教えてもらいました。
「男性って特に理由もなく『一人っきりでいたい』っていう時があるじゃないですか。で、しばらくの間、放っておいて一人にさせておくと、また元に戻っていつものようにみんなと上手くコミュニケーションが取れるようになりますよね。あの『一人っきりになりたい期間』のことを『男の生理』って呼んでるんです」
なるほど。確かにそういうことってありますよね。たぶん女性にもそういう「一人になりたい」ってあるとは思うのですが、男性に顕著なような気がします。
みなさんはそういう「一人になりたいとき」ってどうしてますか?
ちなみに僕の父は、ある日突然、母に「ちょっとしばらく出てくる」と言って、車に乗り込んで、数日の間、日本国内のいろんなところを旅してくるそうです。
そういえば、僕の友人のデザイナーもあるスポーツカーを買ってたので、「どうしたの?」って聞いたら、「真夜中に音楽を聴きながら一人で意味なくドライブするんだよね」って言ってたことがありました。
車って一人になれますよね。男性が車を自分の部屋のようにしてしまうのはそういう面もありそうですね。
さて、僕は「この今、書いている瞬間」がそうなのですが、一人になりたい時は、早めに家を出て、お昼ご飯をどこかで食べて、bar bossaに行きます。
そしてPOMERAという小型ワープロを取り出して、こんな風にパタパタと文章を打ち込むのが「一人の時間の楽しみ方」です。
僕は「一人になりたい時」は街を歩くのも好きです。まあ一応、図書館に行くとか、レコード屋に行くとか、目的地はあるのですが、ただ意味もなくなんとなく街を一人で歩くのが好きです。
たぶん「雑踏の中での孤独」というのが、自分の孤独の好みなんだと思います。
ずっと前に「人間嫌いで、山奥で一人で住んでいる」という男性をテレビが取り上げたのを観たことがあるのですが、その人、やっぱりちょっと変わっている人でした。目を見ない人ですごく頑固そうでした。
でも、取材している人がお酒をご馳走したら、すごく酔って上機嫌になって、一人で延々と話しはじめたのが印象的でした。たぶんやっぱり誰かと話しをしたくなるんでしょうね。
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ところであなたは一人っきりで誰とも話さずにどのくらいの期間を過ごしたことがありますか?
女性は「誰とも話さないで一日が終わったことなんてない」なんてことが多いのじゃないでしょうか。
僕は10代の終わり頃、一度、1ヶ月近く、誰とも話さないで過ごしたことがあります。
目白台の風呂なしで2万円くらいのアパートに住んでいて、すごく安いパスタと缶のミートソースを大量に買い込んで、毎日毎日、本を読んで、レコードを聴いて過ごしました。
本当に話すのは銭湯の番台のお婆ちゃんに「こんばんは」と言うことくらいでした。
でもその「一人ぼっちの日々」はあっと言う間に中断することになりました。
隣がヤクザのおじさんの部屋で、僕が入居した頃はそのおじさんは住んでなかったのですが、ある日、突然戻ってきて、僕が大音量で音楽をかけていると、「ドンドンドン!」と扉をノックする音が聞こえました。
「はい」と出るとすごい怖い顔で「うるせー! てめえぶっ殺すぞ!」と言われました。もちろんすごく謝り、急いで音楽は止めたのですが、それからはそのヤクザのおじさん、寂しかったのか、真夜中に「俺の部屋に飲みに来い」とお誘いがあり、行くと延々と「戦後すぐの頃に苦労した話」を聞かされました。たぶんおじさんも寂しかったのでしょう。でもそれから良い話し相手が出来たと思われたのか、しょっちゅう「飲みに来い」と誘われるようになったので、「これは離れるときだな」と思い、引っ越して、そしてやっと普通の生活に戻れました。
ちなみにそのヤクザのおじさんの部屋の反対側にも若い学生が住んでいて、彼は真夜中に30分くらいお経を唱えるのが日課だったのですが、それにもそのおじさんは「うるせー!」と吠えていたのですが、その学生は全くお経を唱えるのはやめなかったので、おじさんはあきらめてしまいました。宗教の力って強いなあとそのとき感心したのを覚えています。
みんなと一緒にいたいのに孤独にもなりたい人間って大変ですね。
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