「なりゆきで入った飲食業、いずれは独立した方が良い?」という質問に答えました。
※水曜日は質問に答えています。
【質問】
僕は学生の時にバイトをしていたレストランの職場が気に入り、そのまま大学卒業後も働いています。うちの会社は他に2店舗経営していて、たまにそちらにヘルプに入ったりもします。
うちの会社で働いている人たちは僕とは違ってみんな飲食業に真剣で、いずれは独立するつもりで働いている人もいれば、他の業態を勉強するために転職する人もいます。
僕はこのお店の居心地が良いのでずっといるつもりなのですが、飲食業の先輩としてどう思いますか?
いずれは独立して自分のお店を持つのがやっぱり飲食業では普通なのでしょうか? だったら他のお店も経験した方が良いのでしょうか? なんか全然自分がない人間みたいですみません。林さんが思うことを教えてください。
【答え】
まず僕がすぐに感じたのは、貴方は飲食業にすごく向いているのではないでしょうか。
普通、飲食業を志す人は、「親が飲食店を経営している」とか「やっぱり今は手に職が必要なので調理を覚えるとどこでもやっていける」とか「他にやりたいことがあるのだけど、とりあえず生活のため」とか、僕みたいに「自分でお店を持ちたいから」といった人が多いと思います。
それが「学生の時にバイトでいたレストランが気に入りそのまま就職」って本当に向いているんだと思いますよ。
さて質問はこのふたつですよね。
1.独立するのが良いのか?
2.他の業態や店舗も経験した方が良いのか?
まず「独立するのが良いのか?」です。
飲食業は特に「全ての調理方法や仕入先やお客さまとの接し方」を学べば、同じ業態のお店を別の場所で開けば良いという独立には向いている要素があります。これが出版やアパレルやIT系の会社ならそうはいきませんよね。
さて独立するメリットですが、まず今よりお金がたくさん入ってきます。想像するに貴方は年収3~400万円くらいでしょうか。
独立して繁盛店になれば業態にもよりますが、年収1千万は別に夢でもなく普通です。あの人もあの人も、たぶんあなたの社長も1千万はじゅうぶんこえています。
でも、正直に言ってしまうと「独立して自分で全部管理しながらお店を持続させる」ってすごく大変です。もうしょっちゅう「困ったこと」や「イヤなこと」が起こるし、「売り上げが低い」と最悪な気持ちになります。
それらを全部楽しんでこなせるくらいでないと、「経営」ってかなり難しいです。
こんな暗い話はちょっとあれなのですが、10軒、新しいお店が出来ると、7軒はいずれは閉めると言われています。
かなり大変な世界です。「どうしてもやりたい」という気持ちがない限りはオススメは出来ないです。
ちなみに貴方はどんなタイプの人間ですか? 頑固ですか?
常々思うのですが、小さい個人店経営ってやっぱり「頑固な人」が向いています。「もうここだけは譲らない」っていう頑ななこだわりが最後は決め手です。
例えば僕はほとんどこだわりはないのですが、「お客さまと僕との距離やお客さまと他のお客さまの距離」というのはすごくこだわっています。他の方に迷惑がかかれば帰っていただきますし、「全てのお客さまが心地よいかどうか」にはすごくこだわります。
長くお店を続けるのって、そういう「頑固さ」が全てのように思います。
もし貴方がそういうタイプでなく、「みんなと上手くやっていきたい」って感じの調整役みたいなタイプでしたら、組織の中でいる方が向いていると思います。
「調整役」って簡単そうでいて、実は誰にでも出来ることではありません。自信を持って、「俺は組織をうまく回していくののプロフェッショナルだ」という気持ちで働くのが良いのではないでしょうか。
※
さて、2番目の「違う業態も経験した方が良いのか」という質問ですが、僕はした方が良いと思います。
僕が以前バーテンダー修行をしたお店は、広告代理店やテレビの人が多いバーだったのですが、僕はそういう人たちとはそれまでの人生で全く接した経験がなかったのですごく勉強になりました。
あるいは「外国人はこういう接客が喜ぶ」とか「接待で使うときはこういう接客を求められる」とかもあります。
僕は何度か和食屋さんで働いたことがあるのですが、そのときも勉強になりました。
想像するに、社長はあなたのことをすごく重宝していると思います。
でも飲食業の経営者って「良いスタッフが離れて他の職場に行く」って慣れています。
正直に社長に自分の気持ちを伝えれば、「そうか。じゃあ俺が良いお店を紹介してやろうか」って言ってくれるかもしれません。
他の業態を経験して、また今の会社に戻ってくるのも良いと思いますよ。
※
僕は飲食業を20年以上やってきて、いつも思うのは、「やっぱりこの職業はどれだけ社会が変わってもなくならない」というのと「新しい業態を思いついたり試せたりと誰にでも成功する可能性がある」のと、「やっぱり誰かが食べたり飲んだりしているのに関わるのは楽しい」というのがあります。
飲食業、楽しいですよね。お互い、頑張りましょう!
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