年長者が場を仕切らなくてはいけない話

先日、新宿のベルクの井野さんと、ある雑誌での対談があったんですね。

場所はbar bossaだったのですが、出版社の方が4人、ライターの方、カメラマンの方、広告代理店の方が2人、メーカーの方が2人と、もうとにかく大人数が集まったんです。

で、もちろん、最初にみんなで名刺交換をしながら、僕が共通の友人の話や、「この名字、珍しいですね」なんて感じの会話をしていたら、井野さんが突然、大きな声で「それじゃあ、さっさと始めましょうか」って言ってくれたんです。

もう、そこに参加している全員が「とにかく早く対談を始めたい」とは感じているのですが、あの「名刺交換をしながら和気あいあいとした雰囲気作り」に時間をとられてしまうんですよね。

みなさん、全員がそういう現場に慣れていて、それぞれが優秀な人たちなので、いざ対談が始まったら、それぞれの役目をこなすのですが、僕も含め、どういうわけだか、「さっさと始める」ことって難しいんです。

そういう時、井野さんのような「対談の主人公」であり、「一番の年長者」が「さっさと始めましょうか」って言うべきなんだなあ、すごいなあと感心してしまいました。

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さらに、対談が終わった後も、みなさん何となくその場で残って「どうですか、最近?」みたいな雑談になりますよね。

よくイベントとかでもありませんか?

全員が実は「早く終わって帰りたいなあ」と感じているし、主催者側やその場所を提供している側も、「早く終わって片づけたいなあ」と全員が感じているのに、ダラダラとみんなが現場に残ってしまって、「じゃあこれでそろそろお開きに」とならない雰囲気です。

するとまた、ベルクの井野さんが、「じゃあ、bar bossaの林さんもお店の準備があるので、とりあえずみなさん、店の外に出ますか」って突然、言ってくれたんです。

とりあえず「お店の外」に出ていただくと、僕も片づけがしやすいですし、参加した人たちも「それでは僕は会社に帰ります」って言いやすいんですよね。

ここでもやっぱり「うわあ、こういうシーンでやっぱり一番の年長者が大きい声で言わなきゃならないんだなあ」って思いました。

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最近、「若い人たちが飲食店の使い方をよく知らない」ということが話題になっていますよね。

いつも思うのは、やっぱり「年長者が若い人を誘って飲みに行かないから」だと思うんです。

昔は本当に年上の人間が「飲みに行くぞ」って言って、居酒屋やバーでの「粋な飲み方」っていうのを教えてくれたんです。

でも今は「下の人間を飲みに誘うの」ってちょっと難しいそうですよね。

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ちなみに、以前、僕がバーテン修行をしたフェアグランドのボスの中村悌二さんは、こういう風にしていました。

仕事が終わった後で、バーのスタッフと、もう一軒、経営している和食店のスタッフも誘って「じゃあちょっと飲みに行こうか」って言って、みんなで飲みはじめて、30分くらいしたら、かなり多めのお金を置いて「じゃあ先に俺、帰るから。後はみんなで楽しんで」って言って、さっと帰りました。

年長者やボスが「場を仕切ったり」、「さっとお開きにしたり」、「さらっと多めのお金を置いて先に帰ったり」って本当はすべきなんですよね。

僕も46歳で、いいかげん、一番の年長者のことが多くなってきたので、本当は「場を仕切ったり」「みんなを飲みに誘って、多めにお金を置いて先に帰ったり」しなきゃいけないなあと考えているところです。

#エッセイ   

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