美味しいって難しい
パピコを鉄人シェフの新作としてスイーツ大好き女子に試食してもらったら「美味しいと」言ったっていうドッキリ動画、ご存知ですか?
美味しいって難しいですよね。
「人が何かを美味しいと感じるとき、本当の美味しさは3割」という話はご存知でしょうか。
例えばブルゴーニュワインを飲んで「美味しい」と感じるとき、「そのワインの味の美味しさ」は3割で、あとの3割は「このワインはドミニク・ローランという作り手がモレサンドゥニというところで作っていて…」という物語とかブランドに「美味しい」を感じるそうなんです。
そしてあとの4割は「その時の雰囲気」らしいんです。例えば「夜景が見えるレストラン」とか「すごく大好きな人と一緒に食事をしている」とかそういうものです。だから喧嘩をしていたり、苦手な人と食事をしていると「不味い」そうなんです。経験ありますよね。
だから「パピコの実験」は「高級レストランとシェフいうブランドと雰囲気」でかなり「美味しい」と感じたわけなんです。
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ところでこの3割の本当の味の美味しさでも僕はしょっちゅう疑問に感じています。
例えばワインのテイスティングをしたことがある人なら「そうそう」って言うかと思うのですが、「これはシャルドネです」って教えてもらうと「シャルドネ特有の香り」が自分の鼻の中に感じられるんです。
で、品種を教えてもらわないブラインドテイスティングなら、「シャルドネかなあ、うーん、ちょっとリースリングっぽいし、でもソーヴィニヨン・ブランもこんな香りするんだよなあ」って感じで、香りをとればとるほど、もうどんどんわからなくなっていくんです。
有名な話ですが、色も隠されて温度も同じだと、プロのソムリエでも「白ワインか赤ワインをあてるのも大変」とよく言われます。
結構、僕ら人間の「舌」って、「こういう素材を使ってこういう風に作った」という情報をこみで「美味しい」とか「美味しくない」とか判断しているんです。
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あと、当然ですが、「美味しい」って流行りや人の好みや経験値で色々と変わります。
例えば「江戸時代はトロは油がベタベタして捨てるところだった」って有名ですよね。
でも今は「肉食」を知って、あのトロの脂たっぷりを美味しいと感じるようになったというわけです。
そういう「味が濃くなっていく」とか「味に複雑味がある」とかを「美味しい」と僕らはよく判断しますよね。
例えば、「豚骨魚介スープ」というラーメンを先日、話題のお店で食べたのですが、あれってやっぱり「いろんな味が複雑に絡まっているから美味しい」と感じるんです。
でもこの「油っぽくて濃い」とか「味に複雑味がある」とかが美味しいって感じるのも、いつも間にか古くなってしまって、「野菜本来の素朴な味わい」とか「鶏ガラだけのシンプルな美味しさ」とかっていうのが反対に「美味しい」になったりもします。
そうなんです。「美味しい」って経験と流行りもあるんです。
そういう意味では「音楽」とよく似ています。
クラシックを全く聞かない人がストラヴィンスキーを聞いても「良い」って思わないだろうし、レゲエを聞いたことない人がダブを聞いても「良い」と感じないと思うんです(もちろん例外はありますが)。
同じように、生魚やお寿司を食べたことのない外国人が生まれて初めて銀座で10万円のお寿司を食べても美味しいとは思わないでしょうし、僕ら日本人も明治の最初は牛肉やチーズが臭くて食べられなかったんですよね。
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さらに「美味しい」が難しいのは、「その時のその人の調子」っていうのもとても影響されます。
有名なのに「その日の一口目のワインは酸味が強く感じられる」そうなんです。人間の舌や感覚って当然ですが「一定」じゃないんですよね。
焼き肉を食べた後、激辛カレーを食べた後、刺身を食べた後、コーヒーを飲んだ後、とにかく満腹の時、とにかくお腹がすいている時とか、当然ですが、「同じものを美味しいと感じたりそうでもないと感じたり」しそうです。
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だから絶対的な「美味しい」ってどこにもないんですよね。
変な話ですが、「比較的たくさんの人が美味しいと感じたらそれは世間的に比較的美味しいという状況」でしかないんですよね。そしてそれに関して「いや、自分にとっては全く美味しくない」って感じている人がいても、それはその人の感性で間違っていないということなんです。
美味しいって難しいです。
僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA
この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています。今日は「最近僕が美味しいと感じたものベスト3」です(本当に大したこと書いていないです)。
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