ボジョレー・ヌーヴォーで考える日本人の消費行動のこと

ボジョレー・ヌーヴォー、今回、bar bossaでは扱いませんでした。

ボジョレー・ヌーヴォーは、「今年のワインの味をワイン関係者が確かめるために、秋のブドウ収穫後すぐ飲めるように特殊な醸造方法で作ったワイン」です。

このワイン、ご存知のように解禁日が11月の第3木曜日で、日本では時差の関係から本国のフランスより早く、先進国では一番最初に飲めるという理由から、「ボジョレー・ヌーヴォー解禁を祝う」という形でバブル期以降、大いに盛り上がりました。

これ、たぶん、サントリーさんが「あれ? このワイン、日本が一番先に飲めるんだ。じゃあそれを使って新酒を祝うという企画で新しい需要が生まれるんじゃないかな」って気がついて、仕掛けたんだと想像します。

こういう「誰かが儲けるために企画を仕掛ける」っていう「広告代理店の陰謀」みたいなの、生理的にイヤという方、多いですよね。「踊らされたくない」って感覚です。

でも芥川賞と直木賞も菊池寛が「売り上げや話題づくりのため」というのを考えて始めています。

あるいは土用の丑の日の鰻も平賀源内が、鰻屋に相談されて「夏に売れない鰻をなんとか売るために考えた企画」です。

こういう「売れないからなんとか話題にしたいと考えて、こういう企画を提案してみた」という姿勢、僕は小さいお店を経営する人間としてすごく好きで応援したくなるんですね。

B級グルメ・フェスとか、なんとか新人賞とか、○○の日とか、日本全国弁当祭りとか、札幌の雪祭りとか全部そういうのだと思うんです。

今まで砂漠で何もなかったところに突然大きな川が流れはじめて、オアシスが出来て、たくさんの人が集まってきて、お金と品物をぐるぐると交換してくれるって、経済効果もあるし、何より心がわくわくしますよね。

というわけでボジョレー・ヌーヴォー祭りは僕は肯定派だったんです。

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でも今年はご存知のように、すごく円安でして、ボジョレー・ヌーヴォーが高いんです。

bar bossaとしましては、「美味しいボジョレー・ヌーヴォーを飲んでいただきたい」と思うので、1本3000円をこえるのを仕入れると、最低でも1杯1200円にはなってしまいます。

で、はたしてボジョレー・ヌーヴォーを1200円で飲みたいとみなさん思うだろうか? と悩みに悩んで今回はやめてしまいました。

ちなみにボジョレー・ヌーヴォーは現地では1000円以下で売られているそうで、ほとんどが空輸便料金と為替の差額他税金諸々のお金なんです。考えてしまいますよね。

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さて解禁日当日の朝、今年はテレビで一度も「ボジョレー解禁です! 六本木のワインバーでは、深夜の12時にあわせて、こんなにたくさんの人たちが集まっています!」という大騒ぎのニュースを見なかったんです。

もし盛り上がっているニュースを見かけたら、近所の酒屋さんで1本だけ買って、「欲しいという方だけにテイスティンググラス単位で安く提供しようかな」と考えていたのですが、今年はやっぱりそうでもないかなと思ってやめました。

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インターネットの普及と簡単に海外旅行にいけるようになった環境で、「海外からのモノ」というのにあまり価値を見いださなくなりましたよね。

最近は「日本ワイン」がブームですし。

ボジョレー・ヌーヴォーがあまり話題にならなくなってきたこと、実は日本人の消費意識の大きな曲がり角のような気がします。

何にお金を払うべきか、改めて考える時代なんでしょうね。

#コラム

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