孤独な王様の物語
王様から「この国の物語を作れ」と命令された。
もちろん僕は注文を受けたらどんな物語でも期限以内に作ることが出来るプロのライターだ。
しかし、こんな何もない荒涼とした小さい星の上で、たった一人で椅子に座っている王様の国の物語となると話は別だ。
僕は王様に質問した。
「国の物語と言うのは神話のようなモノを捏造すれば良いということでしょうか」
王様は怒った表情で答えた。
「違う。私は物語が欲しいんだ。かつてこの国にいた若者達の恋物語や裏切り話。天から降りてきたミューズが歌う曲やそれに合わせて舞う半裸の美女。そしてその美女を連れ去る鋼の身体を持った男。川に映った月を二つに割ったものだけが手に入れられる不思議な力。そして私だけがなぜ今ここで一人で座っているのか。それを語る物語を紡いで欲しいのだ」
僕は困ってしまった。
もちろん今王様が言った話は全部彼の妄想だ。
彼は家来もコックも兵隊も革命も知らずに、一人でこの小さな星で死んでいくのだろう。
毎日誰とも話さず、夜空の月と星ばかりを眺め続けてきた彼の人生。
彼の数十年もの孤独を思うと苦しくなってきた。
僕はそんな彼の人生に壮大な物語を吹き込もうと決めた。
王様の前にひざまずいて僕は語り始めた。
「その国には希有な才能と悲しい運命を持った王様がいました…」
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