なぜネットでレコメンドされるのがしっくりこないのか?
以前、僕がバーテンダー修行をしたお店はメニューがなかったんですね。
お客さまと「どんな感じがお好みですか?」とか「普段はどんなものを飲まれていますか?」なんて感じでコミュニケーションを取りながらお飲物を決めるというスタイルだったんです。
でもやっぱり「メニューがない」と告げると「じゃあジントニック」とか「俺、ハーパーソーダ」とかって感じのメジャーどころしかあまり注文されないんです。
「バーテンダーと話して、自分があんまりわかってないっていうのが思われるのがイヤだし、バーテンダーに妙に高いものを勧められるかも」っていう気持ちが働くんだと思います。
一応「メニューのような全体像をつかめるものを見て、その中から知っているお酒を見つけて、そして注文したい」のでしょう。
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以前、ある友人がイタリアのあるレコード屋に行ったら、カウンターがあって、そこに店員が立っていて、その店員の後ろにレコード棚があったそうです。
「どうやって買うのかなあ」って困惑していたら、「どんな音楽を探しているの?」って英語で質問してきたらしいんです。
で、友人が「じゃあジャズとかボサノヴァが聞きたいんだけど」って言ったら、その店員が何枚か棚から出してきて、そのレコードを解説して聞かせてくれるというスタイルだったそうです。
「面白いなあ」とは思うけど、僕たちにはどうもしっくり来ないですよね。どうしても「その後ろの棚を全部、自分でチェックさせてもらって良いですか?」って言いたくなります。
やっぱり僕らは「全体の商品情報」を自分で確認して、そのお店の品ぞろえの構成を把握して、納得して購入したいんだと思います。
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ところでアップル・ミュージックの類のサービス、あるいはアマゾンのレコメンド・システム、結構便利だし、かなり良いところをついてくるなあって感じるけど、やっぱりしっくり来ないですよね。
これってやっぱり僕らは「能動的」に「自らが選びとった」っていう感覚が欲しいのではないでしょうか。
本棚、レコード棚、あるいはネット上にあるリストを全部ながめて、そして自分の頭の中でそのリストを完全に把握して、そして自分が1曲を1冊を選んだという「狩りと似た感覚」が欲しいのではないでしょうか。
歩いていて、目の前にウサギが飛び出してきたり、上からリンゴが落ちてきたりしてばっかりだと楽しくないですよね。そんな感覚ではないかなと思っています。
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とかなんとか言いながら、こういう「時代の感覚」ってアッと言う間に変化するので、5年後に「レコメンド・システム良いよね」って僕が言ってたらごめんなさい。
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