挨拶はどこまで

以前、新宿駅構内で、すごく知っている顔の人が前から歩いてきたんです。

ちなみにbar bossaは月に500人来店していただいてまして、1年に6000人僕は人と会っていることになります。

あたりまえですが、そんなにたくさんは覚えられません。3年前に一度いらっしゃったら、その間に僕は2万弱の別の人と会っているんです。

でも、その新宿駅構内で前から歩いてくる人は「絶対に知っている顔」だったんです。これはまあとにかく「お店に時々来店していただいている方」だろうと判断して、すれ違いざまにすごく良い笑顔で「こんにちは」って言ってしまいました。

するとその方、変な表情を見せて僕に挨拶はしなかったんです。

で、「あれ? 誰か似た人だったのかなあ? それとも僕ってネクタイしていないとbar bossaの林ってわかってくれないからなあ」とかなんとか色々と考えていたら、その人が誰だったか思い出しました。僕の自宅の近所のセブンイレブンの店員さんだったんです。

そういうことってありますよね。特にコンビニってほぼ毎日行ってたりするから「顔見知り」なんだけど、でも「都会の暗黙のルール」で話しかけたりしないということもあるし、なかなか距離が難しいものです。

それと似たようなことがありまして、僕の自宅のマンション、これも暗黙のルールでマンション内ですれ違ったら「挨拶をする」って決まっているんです。でも、マンションを一歩外に出ると「挨拶はなし」って決まっているんです。

これ、理由がありまして、うちのマンションの前ってマンションの敷地内の私道なのですが、他のマンション住人以外も「通り抜け」で頻繁に通る道なんです。だから「マンション住人」だと思って、「こんにちは」って声をかけたら、相手に「変な表情をされた」というのをみなさん何度か経験して、「マンションの外に一歩でも出たら挨拶はなし」って決めてしまったんだと思います。

でも「明らかにこの人はマンション住人だ」とわかっているときもあって、そういう時、声をかけるべきかどうかすごく悩んでしまいます。

 ※

こういう「こちらから挨拶するべきかどうか問題」というのがバーにもあります。

例えば「バーから年賀状を出す」というのってありますよね。これ、僕がバーテンダー修行をした時にボスの中村さんから教えてもらったのですが、「誰でも彼でも名刺をいただいたからといって、会社や自宅に年賀状を出してはいけない」というルールがあります。

というのはすごくお堅い職場で「バーから年賀状が届く」って、あまり歓迎されません。ショットバーだと伝えても、古い人なら「なんかいかがわしい」と判断されます。そしてもちろんご自宅なら奥様から「え? こんなバーに行ってるの? 誰とどんな時に行ってるの?」って言われます。

バーって難しいものですね。でもそのくらいの立ち位置だからこその「バーの魅力」だとは思いますが。

#コラム

僕のcakesの連載をまとめた恋愛本でてます。「ワイングラスのむこう側」http://goo.gl/P2k1VA

この記事は投げ銭制です。この後、オマケで僕のちょっとした個人的なことをすごく短く書いています(大したこと書いてません)。今日は「お盆休みはどこまで」です。

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