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超短編恋愛小説

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2015年10月の記事一覧

さっき恋が終わった話

先日、来店したショートカットで笑顔が素敵な女性がこんな話を始めた。

「林さん、私、さっき恋が終わったんです。

会社で好きな人がいて。よくランチも一緒に行くし、帰るとき駅まで一緒に歩くこともあったし、仕事のことが中心なんですけどよくLINEを送りあったりすることもあったし、たぶん良い感じなんじゃないかなって私、勝手に思ってたんです」

僕は彼女にカルバドスのソーダ割りを出した。

「それで昨日、

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堕ちた天使が望むこと

堕ちた天使が来店した。

天使はカウンターの席に座るとこう言った。

「実は僕、地上にいるある人間の女性に恋をしてしまって、天国から追放されたんです。それで、地上に堕ちた今、ここで祝杯をあげようかなと思いまして。何かシャンパーニュをいただけますか」

僕は少し悩み、かつてコンコルドで出されていたブルーノ・パイヤールのロゼ・シャンパーニュを開けて、天使に出した。

「あなたはその彼女には会えるんです

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恋が不器用な話

丸顔でメガネをかけた誠実そうな男性が来店した。

「好きな女性がいるんです。でも、彼女、カッコいい恋人がいて、完全に僕の片思いなんです」

「彼女に出会ったとき、彼女にはもうその恋人はいたんですか?」

「はい。彼女、普通にSNSなんかにその彼とのデートのことなんかを書いてますし、周りでも結構有名な仲の良いカップルなんです」

「でも好きになっちゃったんですね」

「はい。彼女の笑いかたとか服のセ

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