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医師国家試験 神経領域の解説A

2月5-6日と、医師国家試験がありました。
受験生の皆さんお疲れさまでした。
というわけで神経領域の問題の解説&周辺知識の整理をしていきましょう。
なお僕は念のため調べたりしてますので、受験生の方が見て「いや分かんねーよこんなん」という問題もサラっと解説するかもしれませんが、気に病まなくて大丈夫です。

ということで問題はこちらからスクショしました。
早速参りましょう。

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実は血管性認知症の定義って少し難しいところがあるんですが、
「認知症の診断基準+脳血管障害との時間的前後関係」または
「認知症の診断基準+びまん性脳血管障害と症候とに関連がある」
と解釈できます。

ので、
×a,c 50歳台で脳梗塞を発症し、それが初回であっても認知症の診断基準(これは別の問題で出てくるので一旦スキップ)を満たすようであれば血管性認知症(VaD)と診断できます。
〇b 脳血管障害を伴いますから、運動野や上位運動ニューロンの障害を合併することが他の認知症に比べて多いはずです。
×d 脳血管障害があるはずなので、頭部MRIやMRAで異常がないのはおかしいです(MRAだけ正常、はあっても良い)
〇e 脳血流SPECTにおける血流分布異常は、人によってどの領域がどう障害されてるかが異なるので、特定のパターンを示さないことになります。たとえばアルツハイマー病で見られる側頭葉内側の血流低下とか、レビー小体型認知症で見られる後頭葉の血流低下とか…そういうのではないということ。

てなわけで答えは「b、e」

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不適切な場面で発作的に眠ってしまう睡眠発作、力が抜ける情動脱力発作からナルコレプシーと考えられます。ナルコレプシーは入眠時幻覚や睡眠麻痺(金縛り)が有名。なので答えは「a」。
「睡眠中に」ではありませんが、「脚を動かしていない時がすまず眠れない」はむずむず脚症候群(RLS)に特徴的なエピソードです。

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字を書くだけの運動・感覚・運動調整機能はあるのに、字を書こうとすると変に力が入ってしまって動かないのを「書痙」と言い、「局所性ジストニア」の範疇に含めます。同じように、「特定の動きをしようとするときだけこわばって(意図しない筋収縮が起こって)しまって上手くできない」状態に「職業性ジストニア」があり、演奏家の方やスポーツ選手に見られることがあります。野球の「イップス」がまさにそれですね。薬物治療を行うこともありますが、効果は限定的なことが多いです。精神的な影響も多いと言われています。書痙の場合、いっそ字を書く手を逆の手にしてしまうという方法もあります。答えは「a」

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左片麻痺で搬送され、MRIのDWIで右半球の高信号域を認める患者。
頸動脈雑音を聴取せず(総頸・内頸動脈からのA to A塞栓らしさは低い)、脈不整があり、想定される心電図所見はどれか?という問題。
まぁ普通に考えて心原性脳塞栓症の原因となる「a」ですね。
てゆーか問題文、
"impaired consciousness" "E4V4M6"
て書いてあるのに
"Neurological examination was unremarkable except for left hemiplegia"
はおかしいやろってツッコミを入れたい。この範囲の脳梗塞で片麻痺だけってこともないでしょう…神経内科医はこういうカルテ見つけると早口で激詰めしてくるので注意。医者になってからも頑張ってね。

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頚髄損傷の問題ですね。
(間違いがあったのでご指摘を受けて修正しています)
上腕二頭筋がC5-6、上腕三頭筋がC7、深指屈筋はC8、小指球筋群はTh1。
C8以下はほぼ完全に障害されていることがわかりますね。
ざっくり言うとC8障害により、指を曲げることができなくなります。
つまりこの患者さんでは体幹・下肢の運動能力の喪失と、上肢は指の屈曲ができない状態にあります。

〇a そんな状態でカテーテルなんか摘まめるのか?と思ってしまうわけですが、C6損傷までなら、手首の屈曲が保たれておりカテーテルの保持は可能のようです。https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0098/G0000339/0019
〇b 下肢筋・体幹筋の筋力低下はあっても、肘の進展はでき、22歳男性のMMT 4であればそれなりの力が保てており、車いす移乗はできると考えられます。http://www.rehab.go.jp/beppu/book/pdf/livinghome_no31.pdf 
×c 指を曲げる機能が障害されており、自助具があっても箸は難しそうです
×d,e これはさすがに体幹・下肢筋力の障害が強く、難しいです

その他の詳しいことは↓が参考になります。
これ知らないと難しいですね…

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グラム陰性双球菌の髄膜炎、つまり髄膜炎菌による髄膜炎ですね。

https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/hib-meningitis.pdf

〇a 起炎菌が髄膜炎菌で確定していれば第一選択薬はペニシリンです
×b 培養自体は37度程度で培養しますが、培養開始までの間や、輸送等が必要な場合は冷蔵保存が推奨されています(国立感染症研究所のpdf)
→なお、髄膜炎菌では冷却により検出されにくくなるおそれがあるため、非推奨ということでした
〇c A、C群混合の髄膜炎菌ワクチンがあります
×d 侵襲性の髄膜炎菌感染症として「ただちに」届け出が必要です
〇e 同居家族等の緊密な濃厚接触者や、適切な飛沫予防策を伴わずに挿管、口から口への人工呼吸、気管吸引を行った医療従事者などが対象となるため、一般的な診察や髄液検査をしたくらいの接触で予防投与をどうすべきか…という議論が出てくると思いますが、他の選択肢との兼ね合いでこれを〇とすべきという結論に至りました。

「診療の舞台裏」を問う問題が多くなったように感じます。
しかしこの問題は選択肢のひっかけが多すぎてひねくれてますね。
割問になってるのも納得です…
※当初、a,b,cと解説していましたが、髄膜炎菌における冷却非推奨の話を後から知ったためa,c,eを正解と訂正しました。何にしてもクリアに感じない選択肢だったように思います。

b左内包の脳梗塞により右上肢の重度の麻痺・痙縮と、右下肢遠位優位の麻痺を来している状態ですね。

〇a 右手が上手く使えない中での更衣動作を習得してもらいましょう
×b さすがにこの状態で書字訓練は現実的ではありません。残存機能を有効に使う形で日常生活動作の向上を目指しましょう。左手で書字訓練するのはアリです。
〇c 痙縮(上位運動ニューロン障害による筋緊張の亢進)をそのままにしておくと関節が固まってしまい(拘縮)ひどい痛みを伴う原因になります。なので、重度の麻痺・痙縮があっても他動的にしっかり動かすことで関節可動域を保つ(可能なら改善する)必要があります。
〇d 前脛骨筋の筋力が低下しており、垂れ足になってしまいます。床や段差にひっかけてしまい歩行の支障になります。なので短下肢装具で足関節を背屈させた状態を保てば、比較的保たれている下肢近位筋の筋力を使って歩行訓練ができます。
×e 体幹筋力は保たれているので、座位は普通に自分で取れるでしょう。わざわざリクライニング車いすを使用する意味はなさそうです。

そんなわけで「a, c, d」

予備校の正答と照合はしてませんが、参考になればと思います。
もしご指摘有ればよろしくおねがいします!

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