見出し画像

30代の女が、朝キャバで体験入店した話【前編】

タイトルどおり、朝キャバで体験入店してきました。その実体験を小説仕立てで、どうぞ。


朝キャバをやってみたい、と思ったのは「かわいいワンピースが着たい」という理由から。

自宅から30分以内で通える場所を条件に朝キャバをしているお店を探し「これは!」というお店に「お仕事をやってみたいのですが」と電話をかけた。すると「じゃあ、面接しましょう。〇〇日の〇時にお店に来られますか?」ということで、面接をすることに。

ちょっとおとなしめの、大人っぽい服装で、朝の11時にお店のビル前に到着。

お店は飲食店が複数はいった雑居ビルの5階にある。エレベーターで5階へあがると、最初にくすんだ朱色の絨毯が見えた。胸くらいの高さの長い棚が壁づたいに奥に向かって並び、すぐ左手に扉がある。でも誰もいない。

物音がしないので時間を間違えたかと不安になった。すると急に長髪の男がのそっと顔を出し「店長!」と奥に向かって声をあげた。すると奥から背の低い40代後半の渋い男が出てきた。

「〇〇さんですか? 店長の元木です。こちらで面接しますので」

左手にあった扉が開かれると、そこは誰もいない接客フロアだった。黒服の店長に奥のテーブル席にとおされる。

「ちょっと待っててくださいね」

と店長が席を立ったので、私はかばんから履歴書を出す。しばらくして戻ってきた店長はウーロン茶の入ったグラスをテーブルに置いた。私の履歴書を見る。同時に「あ、この時給なんですが……」といった。

履歴書には希望時給を書く欄があった。

朝キャバの相場を調べようとしたが、時給に関して書いているところはなかった。夜営業のキャバクラは場所にもよるが時給3,000円~が普通だと私は思っている。おそらく朝と夜では料金が違うだろうと思ったが、履歴書にはとりあえず「時給2,000円希望」と書いていた。

店長はその欄を見て「うちは1,500円からになっちゃうんですね」といった。

夜と朝はずいぶん時給が違うんだな、と思った。

安いな…… と思いつつ、「大丈夫です」と答える。それよりも気になっていることがあった。それが「私で大丈夫?」ということだ。

30代で大丈夫? この顔で大丈夫? この体型で大丈夫? など、いろんな意味の大丈夫? である。

だが、話の流れで「じゃあ、とりあえず体験で。明日とか、来られますか?」と聞かれたので「ああ、大丈夫なんだ」とホッとする。

ただ、もうひとつ気になっていたのがメイクだ。私は肌が荒れやすいので、濃いメイクをしたくない。面接当日もマスカラや口紅のみなど、ナチュラルメイクでのぞんでいたので「お仕事は、今のこのメイクでも大丈夫ですか?」と聞いてみた。

店長は私の顔を見ながら

「あ、だ~いじょうぶですよ。僕はもっと濃いほうが好きですけどね」

といったので「あ、そうですか」とホッとする。と同時に、やんわな印象の店長に対し「派手好きなのか…」と意外性を感じた。

店内は昼近いのに薄暗い。遮光カーテンでもひいているのか。おそらく明日働くときも同じような薄暗さだろう。

暗い部屋では、ナチュラルメイクはメイクしていないも同然。暗い部屋で映えるのは、濃いメイクだ。分かっちゃいるものの「大丈夫」とお墨付きをもらえたのをいいことに、体験入店は今日と同じでいこうと決心する。


つづきは【後編】へ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?