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北欧本『「ニルス」に学ぶ地理教育: 環境社会スウェーデンの原点』村山朝子著 2020.4.18

近日公開の『グランド・ジャーニー』というフランスとノルウェーの合作映画を観ました。この映画のことは公開が近づいたら書きます。

少年がフランス南部からノルウエー北部へ、超軽量飛行機で、雁の旅に同行するという冒険映画なのですが。映画のなかで、何度か、『ニルスのふしぎな旅』がでてきます。少年が、鳥類研究家の父の書斎でこの本をみつけるところと、ノルウェーに降り立ったとき、世話になった地元の少女に名前をきかれ、「ニルス」と答えるところです。久しぶりに聞いたこの本のタイトルに心踊りました。

『ニルスのふしぎな旅』、最初に読んだのはたぶん、小学校の図書館だったかな。さっそく、Kindleで購入、再読しました。Kindleででているのは小学館の少年少女世界の文学シリーズの1巻、もちろん抄訳です。これでも充分面白かったのですが、探しているときに、偶然みつけたのが「新訂『ニルス』に学ぶ地理教育−環境社会スウェーデンの原点−」という本です。Kindle 読み放題でしたので、軽くDLして、読みだしました。こういう読書は時間があるときならではの贅沢ですね。

著者は村山朝子さんという茨城大学の教授。地理教育がご専門です。不勉強で、知らないことが多く、いちいちへー、そうなんだの連続でした。

まず、まえがきで、スウェーデンの20クローネ紙幣についてふれています。スウェーデンはEU加盟国ですが、通貨はユーロを使っていません。導入を見送った理由のひとつが、この20クローネ紙幣にあるのかもしれない、といいます。紙幣には、田園風景とその上空を飛ぶ白い鳥に乗った少年が描かれています。そう、これがニルスです。表には、作者でノーベル文学賞受賞のラーゲルレーヴの肖像画が採用されています。

ラーゲルレーヴが1906年に書いたこの小説、実は、学校で使われる地理の副読本として、依頼されたものだったのです。スウェーデンが農業国から工業化、近代化が本格化しはじめた時代。その国土、地理を、鳥の目で描くニルス少年の冒険小説の形をかりて、小学校高学年にわかりやすく、学んでもらおうというわけです。

この本は、ニルスの旅の舞台を順をおって紹介し、ラーゲルレーヴの意図を解説してくれます。『ニルスのふしぎな旅』のユニークなところは、ニルスの、人間の目、小人になってしまったための小動物の目、鳥の目、という3つの視点で世界をとらえていること。また、機会があったら、これを横において、完訳を読んでみようと思います。

関連する映画や、TVアニメにもふれています。スウェーデンと日本人との関わりも、いくつか書かれています。1994年に、大江健三郎がノーベル賞を受賞したときのストックホルムでの記念講演で、少年時代に魅了された本として『ニルス・ホーゲルソンの不思議な旅』をあげ、ラーゲルレーヴにふれていたことも、当時はスルーしていましたね。

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