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2020年公開 北欧映画を振りかえる 映画祭篇「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」 (9/26〜10/4 オンライン)で観た3本。

●『願い』スウェーデン・ノルウェー合作 =SKIPシティ国際Dシネマ映画祭最優秀作品賞
主人公はスウェーデンでは名前の知れた舞台人夫妻。脳腫瘍の診断を受けた妻にどう向かい合うかー夫婦と6人の子どもたちの、クリスマスから大みそかにかけてのドラマです。
担当した振付の仕事が千秋楽を迎え、自宅に戻ったアンニャの体調がすぐれません。クリスマスの前日、病院で診てもらうと、脳腫瘍、それもかなり重度の診断です。世の中はホリデーシーズン。この期間に、手術を受けられるのか、余命はあるのか、夫婦は医者探し、セカンドオピニオン探しに走ります。
夫婦といっても、ふたりは事実婚。お互いの連れ子も含め、6人の子どもがいますが、入籍はしていません。これまで幾度もチャンスはあったのですが、アクシデントがあり、見送られてきました。余命わずかではありますが、夫トーマスは手術前に、結婚をしようときりだします…。
アンニャを演じているのは、アンドレア・ブライン・フーヴィグ。日本公開は『女教師アニタ ただれた情事』というすごいタイトルの映画だけですが、スウェーデンでは舞台などで有名な女優。歌手としてアルバムもだしているそうです。トーマス役はステラン・スカルスガルド。この人はよく見かけます。『ドラゴン・タトゥーの女』スウェーデン版や『ニンフォマニアック』などの北欧作品だけでなく、『マンマ・ミーア!』や、最近でも『異端の鳥』でドイツ兵士役を演じていました。
監督はマリア・セーダル。2012年に末期ガンを告知され、そこから復帰した自身の体験を元にしています。
ジャパン・プレミア
原題 Hope
製作年 2019年
製作国 スウェーデン/ノルウェー
上映時間 125分
監督:監督:マリア・セーダル
出演:アンドレア・ブライン・フーヴィグ、ステラン・スカルスガルド

●『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』デンマーク/フィンランド
うちのカミさんは、エベレスト登頂成功なんてニュースの映像をみると、登ったひとより、それをカメラに収めたカメラマンの仕事にいつも感心しています。ローラーコースターに手放しで乗って大騒ぎ、というテレビの番組をみても、カメラを抱えて後ろ向きに撮るカメラマンに注目します。
このドキュメンタリーを観て、まず感動するのは、戦場カメラマンを撮るカメラマンの仕事です。イラク北部のモスルで、イスラム国とイラク軍の戦闘を取材するデンマークの戦場カメラマン、ヤン・グラルップを追うドキュメンタリー。常にどこかで銃声が聞こえる戦場です。防弾チョッキにヘルメット、グラルップも命知らずですが、ドキュメンタリーのクルーはそれ以上です。
ヤン・グラルップは、50からみ、でしょうか。授賞者にはセバスチャン・サルガドなどもいるライカの写真賞を受賞したこともあるデンマークのカメラマンです。モノクロで撮られた戦場の生々しい写真や、戦禍の人間を収めた作品は、映画の中でも紹介されます。
映画は、コペンハーゲンの家に戻ったグラルップに訪れたある転機を描きます。別れた妻が重病にかかり、妻と暮らしていた4人の子どもたちが彼と同居することになります。思春期の娘、多感な息子たち、忘れていた家族との生活のなかで、父親としてどう彼らと向き合うのか…。やがて、元妻がなくなって。それでも彼は戦場にもどるのです。
ちらちらでてくるコペンハーゲンの町の映像もいいですね。最初のころの、あれはなんというのでしょうか。水兵さんのような帽子をかぶった若い男女がトラックに乗って、町をパレードする。時々止まって、ビールをかっくらうイベント。その中に娘がいて、パパの家にもやってきてビールを飲むという、ほのぼのしたシーンですが。
原題 Photographer of War
製作年 2019年
製作国 デンマーク/フィンランド
上映時間 78分
監督:ボリス・B・ベアトラム

●『カムバック』スウェーデン映画
福祉国家スウェーデンについての本を読むと、他の北欧諸国同様、いかにも幸せそうな国、なのですが、映画は陰々滅々とした暗いものが多いです。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、今年のコンペに出品された『カムバック』もそう。女子バドミントンの花形選手だったかつての栄光と、その世界を去る原因となったあるいさかいをひっぱり、「負け犬」生活を送る中年女性の物語です。
主人公のアンは、30年前のスウェーデン国内大会女子決勝で、ジャッジに抗議し審判に傷つけ、退場となった元バドミントン選手。いまや酒浸りで、失業者対策の仕事で日々を送っています。一人息子メティアスもダメ息子。夫婦喧嘩のすえ、家を追われ、車上生活をしています。アンはあるきっかけがあり、因縁のジャッジをした審判と再会。あのマッチがもういちど組まれることになります。相手もそれなりに、過去をひきずって生きてきた風。アンは、息子を巻き込み、久しぶりにトレーニングを開始したするのですが…。
バトミントンの世界ランキングをみると、デンマーク勢がいいポジションにします。スウェーデンでも盛んなようですね。
ややブラック・コメディのテイスト。ロイ・アンダーソンばりのシュールな映像もでてきます。主演アンキ・ラーションは『ミッドサマー』(19)に脇役で出演、ダメ息子役マティアスのオッレ・サッリは『サーミの血』『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』に出演していたそうです。
ジャパン・プレミア
原題 The Comeback◊
製作年 2020年
製作国 スウェーデン
上映時間 93分
監督:パトリック・エークルンド
出演:アンキ・ラーション/オッレ・サッリ/ジミー・リンドストローム/ベングト・C・W・カールソン/ピア・ハルヴォルセン/アルビン・グレンホルム

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