ポジション考(その1)

スキップはどのポジションで投げても良い、とルールで決まっている。

スキップが最終投石者、というのが歴史的にはスタンダードで、それを半ば前提として「スキップ」の語が用いられる文脈もあるが、この場合厳密には「フォーススキップ」という表現が適切になるのだろう。フォーススキップは現在多数派を占め、数多くの利点があるが、いくつかの欠点も知られている。

例えば、フォーススキップは運動量が少なくなりがちなので、体温(末端体温)保持が課題である。体温の低下は運動能力や判断力低下の要因となりうるそうだ。スキップがひとり暖かい恰好をしたり、足踏みしたり、投石に備えウォームアップをする光景をしばしば見かけるが、全てこの対策である。

ショットコール(発声)は熱を産生する運動なので、スキップの体温保持を補完する可能性はある。関与の程度についてはデータがなくはっきりとしたことは言えない(北見工大あたりが研究するかもしれない)。

その他の欠点としては、エンドやゲームの結果を左右する最重要ショット(8投目)、次いで重要なショット(7投目)のショットコールについて、どの選手をバイススキップに指名したとしても「慣れていない人」が担当することになる事が避けられない。

バイススキップはエンドにつきスキップの2投、頑張って相手のショットを観察したとしても4投程度が参考にできる最大数だ。一方、スキップは自分の投石以外の6投と相手の8投を観察する機会を得るので「4倍慣れている人」である。

実際、バイススキップはゲーム序盤でうまくショットコールできなかったり、中盤から終盤にかけてのアイスの変化に対応が遅れたりする場合がある。スキップはコミュニケーション能力や予測能力が高く経験豊富な選手をバイススキップに指名し、自分の収集した情報を伝達し勝負に備える。

バイススキップも情報収集を積極的に行う必要があり、限られた時間で達成する能力が不可欠である。現地観戦する機会があれば、すぐれたバイススキップがどのような動きをしているか観察していただくと面白いだろう。どのように情報収集し、チームメイトとコミュニケーションをはかっているかを。

これは、テレビ放送とかガンバっている系の動画配信では見切れている部分なので、近くで観戦する人しか追えない(どうしてもメインカメラはプレー中の選手を追ってしまうため)
。引きの動画でも確認できないことはないが、現地に行く機会があれば、ぜひおすすめしたい観戦ポイントのひとつである。

(2023年7月22日に投稿)

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