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リターンゴルファー着るものに悩む

毎月1回、ゴルフ仲間と定例でラウンドしている。

夏場の暑さで参って後半の集中力が途切れてしまって痛い目にあったのはついこの前のように思えるが、次のラウンドにはもう冬装備が必要だ。

定期的にゴルフに出かけるようになって、手持ちの服が増えた。例えば無地のポロシャツは12枚もある。着る人間は一人だし、汗をかく夏場のゴルフ場で着替えたとしても3枚もあれば事足りるはずなのに。

さあ、次のゴルフで何を着るか?取り立てて洒落者というわけでもないが、着るもので悩むのもまたゴルフの楽しみの一つでもある。仕事とは違う場所に足を運んで、普段とは違う空気の中で一日遊ぶ。その時の自分の気分をより盛り上げるための小道具としてゴルフの服選びはいつも楽しい。

日本のゴルフ場は昭和の頃から企業の接待の場になることが多く、クラブハウスに大事なお客を招いても恥ずかしくない雰囲気を保つことが是とされてきた。それに拍車をかけたのが会員権というシステムで、若い一見の初心者ゴルファーが群れてワイワイやってくるとゴルフ場の値打ちが下がるかのような視線もあった。

私が学生時代のゴルフ場にはまだまだそういう空気があったと思う。お客もクラブハウスの高級感を喜び、楽しんでもいたからそれに相応しい服装選びは必須というのがマナーでもあった。

時代は変わって令和の世の中では、そうした伝統的なカントリークラブの文化に拘り過ぎると新規の顧客獲得が難しい。そんなことに気がつき始めた現代のゴルフ場は変化の途上にある。すべてのゴルフ場がいわゆる名門ではないのだし、一般の大人の特に若い人を受け入れやすいよう、そしてゴルフ場も受け入れてもらえるよう、クラブハウスの雰囲気も服装に関する意識も徐々に変わりつつある。

服装というのは自分の周囲との関係性によってその意味合いもまた変化する。例えば昔のカントリークラブの価値観の中でトラッドな服装をすればそれは正統な形として見られただろう。一方でゴルフをレジャーとして若者も気軽にプレーできるスタイルに変化した現代のゴルフ場ならば、トラッドなゴルフウェアはそういう自己表現としてゴルフの楽しさ、面白さに貢献したことになるだろう。

我々50代という世代はゴルフ場の価値観の変化をリアルタイムに見届けてきたし、世の大人たちにあって50代という言葉の意味も他の年代と比べればもっとも大きく変化した年代ではないかと思う。

つまり、かつて50代といえば会社にあってもそろそろ退職時期を意識し始める頃で、若い頃に走り回って稼いだ会社への貢献をねぎらう意味で、立場があって時間もある閑職を当てがわれ、日がな一日会社の地下の食堂でスポーツ紙などを広げて座っていてもそこそこの給料を貰える。そんなものだった。今では考えられないがそういう時代が日本にもあった。そう、今では考えられないのだ。一方で今の50代はいかにして会社に貢献するか、あるいは貢献していると評価されるかで常に自分の立場を測り測られる。時にはいまだ若手の一人として現場を駆け廻っていたりする。

だから私はゴルフの日の服装に悩む。果たして周囲の視線の中で自分は若いのだろうか、それともそろそろ年配の苦味走った大人を振舞う頃なのだろうか。

ああ、このテーマは服選びの中でも一番深くて難しいところなので一旦横に置きたい。まずは実用の面から50代のそれほど上手くもないゴルファーのウェア選びについて考えてみる事にする。

暑さ対策

夏場のゴルフウェアは、男性についてはトップスはいわゆるポロ一択だろうと思う。ブランドなんかにこだわる必要はまったくない。普段買って着ているユニクロで十分だ。ゴルフなのだからいつもは選ばないような色を選んでみるのがいい。自分のゴルフにまつわるもの選びにテーマカラーを設定するのも面白い。私の場合はブルー系を基本に選ぶようにしている。

かといってそれにこだわる必要もなく、上下をグレーで統一するとか、グローブとトップスの色を同じにしてみるとか何か一つ意識してトライしてみるのがいいかと思う。

夏場の問題はボトムだ。その昔、男性のショートパンツはNGと言われた。まあ、おっさんのすね毛を見せられて気持ちの良い人はあまりいないと思うので、それはそうだろう。上にも書いた通りゴルフ場が大人同士の上品な空間を保っていた時代にはショートパンツが相応しくないと言われたのも分かる。

最近はアメリカ本土などに見られる何も気負ったところのない地元の草ゴルフ場的な文化の存在も理解されるようになりゴルフ場のドレスコードも急速にカジュアル化しつつある。暑い夏には涼しくて動きやすいショートパンツが合理的だという考え方も否定してばかりはいられない。

とはいえ、男性がショートパンツを履く場合はハイソックス着用などというドレスコードを真に受ける前に、その格好をしている自分の姿を想像してみる事だ。短パンにハイソックス。まるっきりとっちゃん坊やじゃないか。そう。ゴルフ場の言うドレスコードが現代のトレンドをフォローしていると考えてはいけない。大体服選びを自ら考えることなく何かの基準に合わせるということは、他者と自分自身との関係性を他人の口に語らせるようなものなのだ。考えよう。それを楽しみだと思うべきだ。

寒さ対策が大変だ

ゴルフの時の服装で難しいのはむしろ冬だ。日本のゴルフ場は大抵街から少し離れた小高い丘陵地帯を切り開いた場所にある。だから冬場は天気予報の情報よりも一段階寒いのが普通だ。スタートホールのティーグラウンドが凍っていてティーを刺そうとしたら折れたという経験は誰しもあるだろう。ウェッジで50ヤードのアプローチがダイレクトにグリーンに落ちたらカチーンと弾かれてオーバーするのは予想の範囲内だ。

それがあに計らんや、天気が良ければお昼前ごろには汗ばむほどに気温が上がったりすることもある。ちょっとクラスの高いゴルフ場は南斜面の良い場所にあって、上りホールは特に日当たりの良い開けた作りになっていることがあるのでなおさらだ。

一口に調節しやすい服装、と言ってもそこはスポーツだ。重ね着の仕方によってはボールを打つどころではなくなってしまう。確かに一昔前と比べれば軽くて薄く、しかも暖かいという機能性の高い服は増えた。しかも安価でお洒落だ。

私が思うにゴルフに限らず屋外のアクティビティー での寒さ対策のキモは風を防ぐことだ。特に胴体の部分が大切で、防風性能を持ったベストのようなものがゴルフには最強だと思う。私はそれをバイクに乗って学んだ。肩や腕はまあ普通の長袖を着ていさえすれば実際それほど問題ではないのだ。一方体幹部分は冷たさを感じることを極力避けるべきだ。身に付けるものに防風性能は必須であって、肌が直接外気に触れることは極力避けるようにする。帽子や耳当て、ネックウォーマーなど小物を活用して動きを妨げずに身体を寒さから守る対策を考えよう。

最近もっともコストパフォーマンスに優れ、ファッション的にも鈍感なおじさんにハマらずに服選びができるのはホームセンターの職人が着る防寒着だ。ワークマンなんちゃらという一つのビジネスにもなっているが、結構侮れない。

自分は若いのか

さあ、一旦脇に置いた課題について考えたい。「今の50代は若いのか」問題だ。

個人的な話だが、最近自分が磯野波平より年上だという事に気がついて愕然とした。

人生100年時代と言われる現代、確かに20年前の高齢者と比べると元気で若々しい高齢者が増えた。人生はより多様で複雑で長くなった。そういう時代の生き方を指南するLIFE SHIFT という本が売れて話題になったのはもう5年も前のことだ。

戦後の時代に大人と子供の間にティーンエイジャーという世代が加わった。それと同じように今の50代には新しい世代の概念が必要なんだろうと思う。若くはないし、高齢者でもない。そしてかつての中年というイメージよりも精神的には若さがあり、とはいえ人生の酸いも甘いもよく知っている。そういう年代だ。2000年代にちょいワルと言われた世代はすでに老年期であって、彼らの過ごした50代とも違う。新しい50代だ。

私はこれをチャンスだと思う。新しい50代なのだからこれまでの50代の概念に捉われない新しい自分らしい50代を表現して生きることができる。その手段としてファッションは手近で有効な手段なはずだ。

どういう形でもいい。自分が好きな歴史上のゴルファーのスタイルをなぞるのも、自分なりにドレスコードを解釈して提案するのでもいい。新しい世代らしい2020年代の50代を表現してみたい。そんなふうに思う。



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