成功する新規事業に必要な3つのこと

「本業の落込みをカバーする為に中長期的に新規領域に討って出る必要がある。我が社の新規事業の戦略を立ててくれ」

 突然ですが、そう言われたらどうしますか?なんか意識高いセミナーに出てみるか?そこで出来た人脈と情報交換してみるか、ビジネススクールで最新の経営理論を学んで、ドメインを再定義して、コアコンピタンスを発見し、SWOT分析に基づき、市場地位を踏まえたマーケティング戦略でも立ててみますか?

 一応「新規事業」と言われる物には、相談を受けるレンダー、計画策定、モニタリング、投資評価他、色んな立場で割と長い事携わってきました。その結果なんですが、新規事業はまぁ当たらないです。千三つってのは正にその通りで、本当に筋の悪い物にも係わって来ましたし、途中で立ち消えになる物も山ほど見てきました。バラ色の事業計画なんか、表面の数字はカッコいいですが、中開けてみると、突然ネーム不明の顧客が5倍湧いて出る、みたいな出鱈目な仮定が置かれており、こう言っちゃなんですが大体当たりません。

 そうしたことも踏まえ、新規事業が当たるか当たらないかを事前に判断するのはざっくり言ってしまえば3つの観点しかないと思います。それについて書いてみたいと思います。


【分析は正直後付け】

 横文字のなんかカッコいい分析は一応やります。何故かと言えば対内・対外の説明の必要があるからです。市場分析・競合分析・感度分析・リスク評価…それらをとりまとめてなんかカッコいいpptを作って発表し、あんま意味のない質疑応答をやります。銀行からはお金引っ張らないといけませんし、彼らが稟議書にくっつける書類は必要なので。ビジネスに携わって長い方はこれらがあんまり本質ではない事は直感的に感ずる所があるのではないでしょうか。

 勿論、その分析の中で新たな視点、例えばリスクが洗い出されてその対応を検討したりだとか、計画を修正するという事はあります。一方で、そうした物は正直を言えば後付けというか事後対応であって、「そもそも何をするの?」をそこから引っ張り出すことは困難、というかその様なアプローチで机上検討されたものを素人が本業から引っ張った金と余った人でやってみた所で、なれるのはツルハシ屋(※)の肥やしだけです。保って5年くらいで畳むことになるのが鉄板ルートな気がしてます。

(※)ゴールドラッシュで唯一儲かったのがツルハシ屋だけだったという故事にちなんでいます。

【そもそも新規事業は何故勝てないのか】

 例えば、突然
全盛期のマイクタイソンとボクシングで勝負して買ったら100万円
と言われたら勝負するでしょうか?

しないですよね。感覚的に絶対勝てないしボコボコにされて痛い目を見るだけなのが目に見えているからです。しかし、これよりも更に不利な話が新規事業(あるいは起業一般)なのです。何故って、ボクシングであれば仮に相手が全盛期のマイクタイソンだったとして、彼は限られたリングの中で、1vs1で、拳だけを武器に戦ってくれるんですよ?これが新規事業で先行者と戦う時にこんなフェアな戦いをしてもらうことができるでしょうか?答えはNoです。既にその業界で生きている先駆者はあらゆる物を既に持った状態です。顧客網、仕入の商流、ノウハウ、バックアッププラン、償却済の設備、雇用や資金調達が可能な信用、あらゆるトラブルに対応するマニュアル…端的に言えば丸腰の新規参入者に対して、フル装備の大群が戦車に乗って襲ってくる様なもので、勝負にすらならない…というのが千三つの内の残り997回の結果なワケです。

【有効なアプローチは3つしかない】

 では、そんな絶望的な戦いの中でどこから切り込めばまともにワークして収益可能な新規事業になるかと問われれば、多分大まかには3点(個人的にはそれ以上浮かばない、という意味)です。それぞれを一言で言ってしまうと「●●性」と「●●上●●可能な●●●」「●●●●」の3点です。

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