バーチャル建築家の1年
[これは悠々自適な生活をしている人ではなく、ただ休憩してる人です]
バーチャル建築家の番匠カンナです。2019年4月26日で、生まれて1年になりました。
こういう「書くチャンス」は面倒がらずに大切にしたいので、こういう人が存在したという記録と、今後も存在するということの宣言のために、ちょっと振り返り記事を書きます。
1) Vtuber期
2018年の年初にミライアカリちゃんのVRChat動画を見て4ヶ月、気がついたら私は肉体を手に入れていた。そしてまず“Vの人”は動画を撮るんだという謎の先入観によりVtuber化した。
2018年5月9日に最初の動画をVRChat上で撮り、「建築界、やばい人いないんだよね」というイキリ発言や「人生を極めて論理的に間違いたい」といったポエムを披露する。だいたい動画タイトルが「ファンズワース邸にて建築界に物申す」なので、この人は何か鬱憤が溜まっていたらしい。(でも見た目は金髪で今より爽やか)
初めて他人のいるVRChatに入ったのもこの頃で、4月29日に開催されたDJ Sharpnelさんのイベントだった。VR上のクラブ体験から、この空間が間違いなく人類の新たな生活空間になっていくと実感した。ついでにクラブに行くなら光らないといけないという強迫観念により、Emissionを学んだ。当時の私はblenderもUnityも触り始めてまだ1ヶ月だった。
その後、ピーター・クックの文章から着想を得た6畳一間の動画やTiltBrushで描いた絵にVRで入る動画をつくる。この頃は動画一個つくるためにVRCワールドを一個つくるというハイカロリーなことをやっていた。今はペース落ちまくりだけど、見返すとかなり楽しそう。
そして、ほどなくVRアカデミアに参加。なんとなくバーチャルな人が何かを教えるという謎の団体で、ニュートン記念堂の動画、建築×VRの今と未来、サヴォア邸を投げながら講義したVR建築の5原則といった動画を作った。
ニュートン記念堂の動画は、神戸芸術工科大学の花田佳明先生に褒められたりして、伝わる人には伝わるんだと嬉しかった。
ちなみにVRアカデミアは、互いに専門的過ぎて深入りできないという特徴によりいい意味でゆるやかな結びつきを実現している。ここでの出会いは、後に「立体核図表VR」につながることになる。立体核図表については前に書いた記事があるので割愛。
2) xRArchi
5月には、今の私の根城である「xRArchi」をのちに作ることになる松本ちなつさんとも知り合った。私の最初のイキリ動画を気に入ってくれたらしく、建築コンペやプロポは今後VR空間で行われていくべきという話で盛りあがったので、私の唯一のファンアイテムであるところの小説をDMで送りつけたりした。これ↓(ダイマ)
ちなつさんが始めたxRArchiは「xR×建築」という言葉に反応するクリエイターや企業の人が集まるお遊びグループ。私は委員長としてdiscordを共同運営しているんだけど、基本は盛り上げ役と調整役とVRChat沼への招待役。建築設計者が少なくビジュアライザーが多いのが特徴で、実はみんなが何言ってるか8割はよくわかってない。まぁそれはそれで楽しくて、私は私で「VRは生活空間でしょ」という方向で自由にやっている。最近は同じく設計者であるsabakichiさんとよくプレゼンテーションルームで三次元の意味の分からない図を書きながら話し込んでいる。
そんなxRArchiの有志では、2018年秋に「第0回VR建築コンテスト」を開催した。(詳細はhukukozyさんの記事参照)
今、その進化版として「VRAA」というイベントを企画中で、GW明けから夏にかけて大々的にやるので、ぜひぜひご参加ください。
xRArchiにいて面白かったことの一つは、建築家の豊田啓介さんから東京藝大の点群データをもらったことで、豊田さん、いわゆるアニメアイコンの私にも臆せず「点群データあるんであげます」と言ってくれて嬉しかった。この点群の話は、龍lileaさんのTogetterに全部まとまっている。点群ではphiさんの技術の謎み(謎ではなく自分が知らないというだけ)に触れられたことも良かった。
3)VRChat
VRCについてはなかなか遊びに行く時間を取れず、Twitterで「みんな楽しそう…すごい技術カコイイ…」と眺めてることが多かった。既存グループに飛び込むのも下手で、わりと一人でワールド巡りすることも未だに多い。ただ、ニュートン記念堂の内覧会のSSを改めて見てみると、のちのちお世話になるbutadieneさんやナルくんやヨツミさんに会っていた。向こうから気軽に来てくれているお陰で私は助かっている。
立体核図表をpublic化した9月あたりからは知り合いも少しずつ増えはじめ、とくに立体核図表ワールドに"水"を提供してくれたらくとあいすさんとは、その後も何かといろいろ一緒にやった。VoxelKeiさんには無限に面白いものを見せてもらったり、いまも何かおかしなことを始めるときはまず相談に乗ってもらっている。ぷるぷる震えてるけど頼れる兄貴的存在。
他にも、カズユキさんのアルテマ音楽祭では、なぜか楽曲提供と演奏で参加した。VR空間内でVR楽器を複数人で演奏するため、指揮者のごとく腕でカウントして人力同期をする、という稀有な体験をした。一人で練習に入るたびに空飛ぶイルカを見送った。
VRCで関わった最大のイベントといえばバーチャルマーケット2で、動く城のフィオさんが誘ってくれて参加した。VRCは基本的に趣味の世界なので、どんなワールドをつくろうが自由、来たい人だけが来る(だから美しい)。対して、バーチャルマーケットは不特定多数が訪れる「VR上の公共建築」を対価をもらって設計していたので、ワールドをつくりながら「あ、いま建築家っぽい」と思った。そして圧倒的にUnityとGitの勉強になった。
この辺の記事は2回に分けてたくさん書いた。
4)職業としてのバーチャル建築家
秋には、clusterに2週間ほど行ってVRスタートアップの雰囲気を肌で感じたり、はいえろちゃんからのお誘いでxRTechでバーチャル登壇をしたりと、少しずつVR業界自体を見るようになった。
いろいろとやったことをnoteにまとめたりしていたお蔭か、年明けの2019年1月~3月には、建築ヴィジュアライゼーション方面ではKviz、バーチャル空間から届けるニュース番組のV-TV2nd、しらいはかせさんにお誘いいただいたVRSionUP!、マル知る!さんインタビュー等、たくさんVR登壇した。
特に面白かったのは東大物性研の計算物質科学研究センター主催の見える化シンポジウムで、文科省の人やガチ研究者たちが見つめる秋葉原UDXの大画面で、らくとあいすさんと2人でウラン235が臨界を迎えるVR空間から40分喋った。ここでは見える化=Visualizationじゃなくてこれからは空間化=Spatializationじゃ!と打って出たけど、反応はわからない。来ていた誰かの心の奥深くに届いていればいいなと思う。
私は、実空間の建築設計をそれなりの場所でそれなりの期間やってきた人間だけど、職業としてのバーチャル建築家は、まだ「何をすべきか」「何ができるか」「誰に必要とされるか」、どれを取ってもはっきりしない存在なので、そのわからなさが楽しい。少しずつVR空間デザインのお仕事というものがあり得る時代になってきたけど、私は建築家=建物のデザインをする人とは思っていないので、バーチャル建築家もVR空間デザインだけをする人と思っていない。もっと先へ行きたい。本当は、建築家という言葉を捨てたほうがいいのかもしれないと思ったりもする。
そんなこんなで、1年が経ちました。正直、これほどまでわけのわからない予測不能な世界に来ると思っていなかったので、楽しかった!
来月、令和元年の最初の月には、次の1年がまたちゃんと予測不能になるように、さらに生まれ変わりたいと思います。
(あ、番匠カンナは生き続けるよ)
番匠カンナ
https://www.banjo-kanna.com/
xRと出会った建築をもっともっと面白くしたい! いっぱい活動したいので、どんどんサポートお願いします〜