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【#映画レビュー】君が愛する世界が、どうか、やさしくありますように。


映画『his』を観て。


理想郷。


全ての人に、普くやさしい世界なんて無いのかもしれないけれど、それでも人は、その場所を夢見ることをやめない。
この作品を、「夢物語だ」「都合が良すぎる」と言う人もいるかもしれない。でも、私は、こんな世界が欲しいと思う。




「子供ができて・生まれてから、初めて親になる」。
よく聞く言葉だけれど、この言葉は、血の繋がっていない人々の間でも通用するのだ、と、私はこの映画に教えられた。親になる、親になっていく。


お父さんなのか、お母さんなのか、はっきりした立場は分からない。分からなくても良いのだろう。それでも迅は、確かに、空ちゃんの「親」だった。
空ちゃんには、「親」と呼べる人が、少なくとも私よりも、沢山いる。それって、幸せなことじゃないだろうか。





傷つけてしまったなら、それは謝るべきだ。
嘘をつくことも、騙すことも、良いことでは無い。でも、そうするしか無かったのは、世の中の風潮のせいでもあるのではないだろうか。


「普通」って何ですか。あなたの言う「普通」が、当然、私にとっての「普通」でもあると、まさかそんなおこがましいこと、お思いではないですよね。

あなたにも価値観というものがあるのは分かります。それと同じように、私にも、価値観があるのです。

あなたの価値観を、押し付けてこないでいただけませんか。あなたはあなた、私は私。

「自分たちは普通」だと曰う方々の、ネタにされるために生きてるわけじゃないんですよ。私たちは、笑いものにされるために、生きてるわけじゃないんですよ。


人を、好きになっただけ。

笑われるようなことも、悪いことも、何もしてないんだから、愛想笑いする必要も、謝る必要も無い。あなたのアイデンティティを、謝る必要など無い。誰かを好きになることの、何が悪いというのか。

だから、「許す」などという言い方も違う。
ただ、「知る」「認める(この場合は「その存在を認識する」という意味とする)」。
それだけで、みんな、生き方はだいぶ違う。

誰にも、それぞれの生き方がある。それを知り、理解する。
理解できなくても、理解しようと努力する。そして、その努力を惜しまない。
どうしても理解できないなら、せめて、傷つけようとしない。

あとは、今までと何も変わらない。みんな、自由に、生きたいように生きるだけ。
私自身のためにも、再三口にするが、誰にも、謝る必要なんか無い。許しを得る必要も無い。



好きだから。ただ、この人を愛しているから、この人と生きていく。



そんな、あなた方だってしている当たり前のことを、どうして赤の他人のあなた方に、とやかく文句を言われなくてはならないのですか?
「余計なお世話」って言葉、ご存知ですか?







現実は未だ、「赤の他人に余計なお世話を焼かれる」ことの方が、確かに、残念ながら多い。そんなつもりも無く、「余計なお世話を焼いてしまっている」人もいると思う。

私も、もしかしたらそんな立場に立つときがあるかもしれない。

でも、もしそうなったとき。私が予想していなかった答えが、相手から返ってきたとき、私は、ただその答えを素直に、受け止める人間でありたいと思う。美里さんのように、緒方さんのように、房子さんのように。


相手の人生と、私の人生。


もしそこに違いがあったとして、そんなこと、どうでもいい。取るに足らないことだ。
それが理由で、相手に変化があったわけでも無い。私たちが、個人の違いを、変な形で捉えてしまうだけなのだ。


相手は、今までの相手と、どこも変わらない。
だから私は、相手のアイデンティティを知り、受け止めて、今までと同じように、相手と過ごしたい。





愛し合う者同士がする口付けは、いつも、どの時代でも美しい。そんな当たり前のことに、改めて感動した。



あなたたちを傷つける人たちが、どうか、いませんように。



この映画のポスターに書かれたキャッチコピーは、「好きだけではどうしようもない」。
確かに、「好き」というだけではどうにもならないこともある世界だけれど、「好き」というだけで、道が開けることもある。





この先の将来が、そういうことが多くなっていくと良いな、と、私は、理想郷を夢見ることをやめない。

そして、追い求めずにはいられないのである。



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