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【#観劇レポ】ここは、いつから地獄だったのか。



最近の私の口癖で、「この世は地獄だよ」という言葉がある。
最近、大なり小なり、そう感じる事件が多いから。身の回りでも、液晶画面越しでも。


でも、ああ、地獄なんか、望んで行かなくっても、顕現しようと努力しなくても、やっぱりこんなに近くにあったんだあ、と、終始鳥肌が立っていた。



上質なエンターテイメントは、観ると疲れる。
今すぐ、瞬間移動が出来たら家のベッドの上に今頃いるし、iPadを持ってたらそのメモアプリ開きっぱなしにして一気にドカドカと感想を書き出して、誰にも会いたくない。
それくらい疲れる。

でも、嫌な疲れじゃないし。上質なエンターテイメントを全身で浴びるために、私は劇場に行く。そのためなら疲れたって何だって構わん。










みきくらのかい 第九回公演リーディング『女殺油地獄』。


朗読劇は以前、一回だけ観に行ったけれど、それとはまた違う公演だった。
新鮮。面白い。興味深い。話が進めば進むほど、引き込まれる。

夢か現か、芝居か現実か。これが夢なら良かったのに。人間は浅はかだ。くだらない生き物だ。
だからこそ、こんなに簡単に地獄が成り立っている。



ずっと鳥肌が立っていた。



「あのとき、俺は確かに上手くやれたんだ」。



半蔵が何度も繰り返した、「あのとき」が、いつのことを言っているのか分かってしまった。
初音が闇の中、二人にしか聞こえない声で囁いた言葉。

ぶわあっ、と強く、体の素肌全体に鳥肌が立つ感覚を、久々に覚えた。





数年前から、「この世に『偶然』は無い」と思え始めた。
マチネ、14:00の公演にて。



終演の頃まで離れなかった、羽多野さんの足に、きっと意図せずだろう、絡みついた赤い紙テープ。

油。

罪から逃れたい意識。

「死にたくない」という、生に対する執着。

「離さねえ」という言葉。



全部必然的に繋がったように思えたのは、私の考えすぎかもしれない。




観劇後は撮影OKとの有難いお達しがあり、思わず。
すんばらしいセット。
一面に敷かれた赤い紙テープが鮮やかでまぶしい。
舞台奥、額縁のようにぽっかり空いた空間と、向かって右奥にごろりと転がった壺。
おそらく普段はセミナーなどに使われるであろう、未来館ホールは円形劇場のような造りになっていて、私はとても好きだった。







特徴的な声だというのも理由としてあるかもしれないが、私は、三木さんの声なら一瞬で分かるようになってしまった。声もお芝居も、好きすぎて。


少し歳上のお兄さんにも、ちょこちょこ歩くお爺さんにも、まだ成人していない少年にもなれる声は、某作品で三木さんの声に出会ってからというもの、ずっと私の頭の中の、『好きなもの』というラベルが貼られた棚の中に、カセットテープみたいに残っている。

密閉型のヘッドホンをして、味のあるカセットプレーヤーで聴きたい、その特別な声は、いつでも思い出せる。

某テーマパークの某アトラクションに乗って、乗務員のアナウンスが聞こえてきたとき、同乗していた友達に「待って???これミキシン(勝手に普段の私がそう呼んでしまっている。三木さんと呼べこのバカチン!!!)の声じゃね!?」と食いついてしまったくらい、一発で聞き分けられる。
それくらい好きな声。



かっこいい、だけじゃないんですよ。お芝居がまた上手いんです。

「かっこつけること」ならきっと、みんなできる。
でも、「かっこつけないこと」もできるのが、三木さんだと私は思っている。

至極ニュートラルなお芝居ができる人。
「普段の自分、普段のキャラクター」のままでもいられる人。



その声を全身で浴びるべく、初めて臨んだ『みきくらのかい』。幅広い年齢層の方々が観劇に来ているのを観て、ゲストの羽多野さんも、三木さんも、凄い人なんだなあ、と改めて感じた。今更だな。


声優さんという職業についている方を応援する場所は、主にテレビやスマホの画面の前。
元々舞台を観ることが好きな私は、「もしも好きな声優さんが舞台に出ることがあったら、絶対観に行くのにな」と思っていた。


それが!今回!タイミングよく「みきくらのかい」を観に行くことが出来るとは!
神様仏様、そして三木様、倉本様、羽多野様はじめゲストの皆様、スタッフの皆様、本当にありがとうございます…!


「推しを生で拝める」という環境があることに、私は改めて感動し、この奇跡に感謝した。


コロナ禍に苛まれたこの3年間、エンターテイメント業界は延々と、荒波に揉まれていたようなものだった。
好きな役者さんの活躍を、実際に劇場で観られることも、それまでとは格段に少なくなってしまったような印象がある。

だからこそ私は、このチャンスを逃したくなかったし、しっかり掴んで良かった、と思った。

そう思わせてくださった、三木眞一郎さん、倉本朋幸さん、ゲストの羽多野渉さんをはじめ、この素晴らしい企画に関わってくださっているスタッフの皆様に、改めて感謝いたします。



また絶対、観に行きます。そこが地獄であれ、天国であれ、推しが出てくれると言うなら、どこへでも。


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