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12冊目のボードゲームクイズ本「ラボ」の紹介


1.はじめに

1.1 辞める辞めない、から

ボードゲームというジャンルに縛ったクイズ本も、2017年の第1冊目から数え、はや6年目、12冊目の本を上梓することができました。

常日頃、周りに「この本が最後、今後これ以上のクイズ本ができる自信も時間も取れそうにない」と言い周ったので、ボージョレーヌーヴォーのようなイメージを持たれる方も大勢いらっしゃったことでしょう。すみません!

それでも、喉元過ぎたる熱さを瞬時に忘れることに定評のある私、昨年ゲームマーケット秋を終えた翌日から、出展で上がったモチベーションを元に早速次回に向けたボードゲームの早押しクイズを作ることにしたのでした。

とはいえ、12月に控えた「北海道シュピールフェスト」に向け、イベントはこれが最後、と、来年も出展できたらする、の気持ちも同居しておりました。

創作をキッパリと辞めたなら、どこか地方にひっそりと住もう、それなら北海道の北の方かな。
そんな考えが頭をもたげる中、シュピールフェストではイベント主催者の応援もあり、何とか盛況の一端を担えたのかなと思います。

1.2 やっぱり難しい?

考えてみると、昨年、一昨年と感染症の最中、動画コンテンツが主体のボードゲームチャンネルやVtuber、ボードゲームWebラジオも、体感ではなく本当に見聞きするようになりました。

中には、ありがたいことにボードゲームのクイズをテーマとした放映回やコーナーも生まれ、クイズとしてボードゲームの楽しさのひとつになるようにも感じました。

それでも、やっぱり「ボードゲームのクイズ」が「難しいクイズ」「マニア向けクイズ」であることが払拭されていないようにも感じました。
一例を挙げると

  • コンポーネントをひとつ取り上げて「これは何?」を問うクイズ

  • ボードゲームのタイトルを上げて「この制作者は?」を問うクイズ

少しひねると、

  • コンポーネントを抜いた穴からタイトルを推理するクイズ、

  • パッケージの一部分をズームアップしたりモザイク処理を施したりなど加工された画像から元のタイトルを推理するクイズ、

など、自ずと「パターン化」されているように感じたのです。

果ては、各種ボードゲームカフェやYouTuberが企画する「ボードゲームのクイズ動画」の中で、明らかに難問を出題する司会者が「これは簡単な問題……。」と口にする場面や、誤答した解答者を「こんなの(ボードゲームのタイトル)も知らないの?!」と罵倒する場面も目の当たりにしました。その度に一人哀しい思いをするのでした。

1.3 それじゃ作りましょ

問題難易度のワンパターン化、それに伴う高難易度化、それはある部分、仕方のない話だったのかもしれません。

技術や経験を運という面で多少フラットにできるボードゲームとは趣が異なり、どうしても勝利のために「知識量」を問われる「クイズ」というコンテンツは、私自身いろいろ試しても、どこかボードゲームとの相性の悪さが目立つように感じました。
余談ですが、何度か私の元に「ボードゲーム検定」的なコンテンツを作成するよう依頼されましたが、クイズを試験と考えて欲しくない思いからすべて断ってきました。

でも、「じゃあ簡単な早押しクイズは?」と探し回るも、案の定、深く追い詰めたボードゲームのクイズなど、国内外問わず見つかりませんでした。

クイズ独特の「構文」、殊更、コンパクトにまとめられた文章から一つの答えを導くための文章は、多少なりともクイズに手慣れていなければ難しい上に、それらを踏まえ「思わず周りの興味を引く」クイズとなると、制限に制限が重なり、創作側としても「もっと気楽に作らせてくれー!」、できたらできたで「こんな簡単な問題!」と解答側から罵倒されることもあり、創作の意欲も減退、私個人、何度となく匙を投げたくなりました。

うまく例えられませんが、藤子不二雄のアニメ「パーマン」で、通常の6600倍のパワーを持つパーマン一号が、軽い力で卵を割ることに苦労したエピソードに近いのでしょうか。ううむ、これも時代ですね。


2.再度クイズに向かう

2.1 時代も変化する

 2021年に10冊目のクイズ本「アドバンス」を頒布した際、それら「パターン化されたクイズからの脱却を!」をテーマとしました。

一度地の底まで落ち込んだ私のクイズ制作の火が再点火したのは2年前、以来、一度は離れた「競技クイズ」を真剣に勉強し直し、徹底的に問題集やクイズ関連動画を研究しました。

数十年前は5000問近くが「ベタ問」(クイズ番組や大会では定番として出題される履修必須の問題)も、気がつけば2万問に膨れ上がっておりました。
さらに、以前の知識からのアップデートも必要でした。
例を挙げると、「ゴルフの「池ぽちゃ」、正しく言うと何?」というベタ問題も、当時の答えは「ウォーターハザード」でしたが、近年ではウォーターハザードが廃止され「ペナルティエリア」となるなど、国名や歴史の書き換えなども数多く、それらの知識を修正するだけでも一苦労でした。
もう鎌倉幕府は「イイクニ(1192年)作ろう」ではないのですね(現在は「1185年」)。

2.2 パターン化されてない?

そんな苦労を背負う中、11冊目となる翌年の「プロミネンス」では、その辺りの「パターン化された知識からさらに一歩進んだクイズ」を課題とし取り掛かりました。

例えば「その年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作、ノミネート作」を問う問題でも、西暦をそのまま問うではなく、どこか「ひねり」を加えて出題するスタイルをひらめくなどしました。

ドイツ年間ゲーム大賞2022、赤ポーンにノミネートされた3作品は、大賞受賞作のカスカディア、梶野桂デザインのscoutと、3作品中唯一の協力ゲームとなる何?”
(答>TOP TEN/引用元;拙著「ボードゲームクイズ プロミネンス P54」)

これも「私の制作するクイズは勉強でも試験でもなく、あくまで「楽しいコンテンツのひとつ」と考えて欲しい」の一心でした。

2.3 最新作が最高傑作

そして12冊目、いざ作るとなると、「昨年よりパワーアップしなければ皆が注目しない」「単なる中身の焼き増し、では創作する意味がない」と、以前からのポリシーはあったものの、「じゃあどうする?」の付加価値を見出すまでには時間もかかりました。

加えて、昨今の世界情勢、相次ぐ物価高、印刷費もゲームマーケット出展料も(何故か)高騰し、気楽に一冊本が出せた頃からは懐具合も変わりました。

今年1月からはアルバイトも始め、とりあえず生活費と、まだ見ぬ次回ボードゲームイベントに向けた資金を稼ぐことだけは決めました。とても以前のように数千円数万円のボードゲームをポンポン買うことなどできません。

そんな逆風の中、「500問のクイズ本を作ろう」「それは実際に購入される方に沿うようなクイズを作ろう」
そして下向きの気持ちの自分を「それができるのは、きっと世界中を探しても私だけのはずだ!」と何度となく鼓舞しました。

無謀にも、2月には川崎FLiP Drop様にて「ボードゲーム「だけの」クイズ会」も開催し、参加者の皆さんから温かい言葉を頂戴することもできました。

温かい言葉を背に、休みの日やバイトの休憩時間はすべてボードゲームのクイズ制作へ当て、ボードゲームカフェ「有明亭」様での早押しクイズイベントも設けられ、日がな一日問題を作ること、約半年。

6月、ノルマとなる500問が一旦出来上がりました。このままプリントアウトして販売できることもできないことではない、そんなステップへと踏み出すことができました。

難易度の調整、差し替え、問題の加筆修正、などを加え、粗々の形が出来上がるにつれ、今回のクイズ本が「読み終えた先の本」という形がぼんやりと浮かぶようになりました。


3.今作のこだわりポイント

3.1 解答側から出題側へ

クイズの本の楽しみ方は、それこそ人それぞれ、千差万別です。制作者の私が
「こうして遊んで!」をとやかく言える筋合いはありません。

でも、せっかくお金を出して買った本ですので、一通り読むだけで終えてしまうのはもったいない。
気の合う仲間やご家族と一緒に、各種イベントの待ち時間や空き時間にちょっとだけ楽しんでもらう、
すなわち「解答側で楽しんだあとは、出題者に回ったとして」の立場を考えて制作することにしました。

解答側がどんな知識を持つのか、それは制作する私ですら想像だにできませんが、仮に「ボードゲームは人生ゲームやUNOを一度遊んだ程度」とするとかなり知識の幅を広げなくてはなりません。
「ガイスター?テラフォ?何それ知らん!」で一蹴されてはクイズの出しようもないというものです。

「トランプはボードゲーム?」「ジャンケンは?」「呼び名はボードゲーム?アナログゲーム?テーブルトップゲーム?」「ボードゲームとカードゲームの違いは?」など、X(旧:Twitter)で毎度議論の的となるそれらの意見も一旦自分の中で保留とし、とにかく「ボードゲーム」から連想されるキーワードを拾いつつ問題作成を進めました。
「Mリーグ」「映画「ダンジョンズアンドドラゴンズ」」「ドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門賞にIKI(山田空太作)がノミネート」など、今年も話題に事欠かない年となり、それら流行やトレンドを常にチェックしました。

また、先に挙げたように、出題側を考えるとなると、それ相応に「やさしいクイズ」も考えなくてはなりません。
そこで今回、難易度をさらに入念に練り直し、最初の50問(難易度;ULTRA LIGHT)に至っては「ボードゲーマーならお馴染みのボードゲームを一切入れない」暴挙に出ました。
また「制作者を問う問題」も難易度の後半から、「海外メーカー」などは難易度のさらに終盤に配置しました。
どれだけボードゲームがお好きな方でも、クリエイターの名前を覚える段階はかなり後だと、これはあくまで私の経験則ですが、ここは自分の勘を信じました。

3.2 デザインにこだわる

読んでもらうにあたり、もうひとつ、デザインに強くこだわりました。

一般のクイズ本は、競技クイズでの使用が主体がゆえ、ソリッドな問題集、例えば問題と解答、簡単な解説が羅列された本が数多い印象でした。何万問ものクイズをこなす方にとって過度な装飾はいわば「余計な味付け」であり、致し方のない話でした。

ならば自分の本はデザインにこだわろう、読みやすく、手に取りやすい、「問題集からの脱却」が図れる本を目指そうと思いました。

リバイズド、アドバンス、そして昨年「プロミネンス」と、数と経験を重ねながら、デザイン、レイアウトの勉強を独学で続けました。

完成2ヶ月前の簡素なレイアウト。ここでの問題の多くは難易度を1、2段階上げて収録されています。
こちらが完成版。多少華やかになりました。


そんな「やりたかったことをすべて詰め込む本」を詰め込むうちに、ページ数は過去最長となる96ページ、問題数は2019年の「NEXTAREA(521問)」に次ぐ過去2番目の500問、正確には「おまけクイズ10問(中身は見てからのお楽しみ)」を加え510問が徐々に現実味を帯びてきました。
印刷所の超特割コースを使えば、なんとか価格が2000円を超えることはない計算となりました。

本書のタイトルも「ラボ」、やりたいこと、不可能だと思ったことを「研究」「生産」する意味と、普段お世話になっている大阪中津のボードゲームショップ「BOARDGAME .Lab!DDT」様へのリスペクトの気持ちから名付けました。

今回の表紙です。エンボスをかけています。

4.終わりに

4.1 無事に入稿

ひと通り形となったのは今年9月、入稿1ヶ月前。

連休中にひたすら加筆修正を行いながら、「クイズにも流行があるんだ」と実感しました。以前のボードゲームクイズ本なら当然のように出題されたクイズも、絶版、廃盤で入手が困難となると俄然難易度も変化しますし、出題当時は海外のみの販売だったボードゲームも日本語版がアナウンスされたものも多く、表記の揺れや中身のルールの変化なども目立つようになりました。

こうした「時代を反映するクイズの本」も、普遍的ではないとはいえ、その当時の流行を学ぶ意味で面白いかもしれない、と前向きに考えるようになりました。

度重なる問題のチェックを終え、ゴタゴタもありながら、なんとか10月中頃に無事入稿、このnoteを書く今はまだ本体の到着を待つ段階です。

出来上がった今回「ラボ」がどんな形となるのか、我が子の誕生を待つ気持ちで緊張しております。

4.2 広報活動について(少々ビッグマウス)

予定ですと本書の到着は11月末頃、それまでまたしばらく休んでは、ボードゲームクイズの創作に明け暮れているかと思います。

来場者の多くは「ボードゲーム」を求めて会場にいらっしゃるわけですので、今後も、私の方から「ゲムマ秋オススメ教えて」のポストに自薦する事はありませんし(これは断言します)、こちらで用意した推薦文を読み上げる「だけ」のゲムマ秋紹介動画に投稿することも(おそらく)無いでしょう。

それは反発精神ではなく「もっと違った形での広報はないか」を実験(ラボ)しつつ、これからの広報活動に尽力したい気持ちの表れです。周りが手をつけない箇所にしか、私のような末端のサークルが目立つ術などないからです。

会場で見かけましたならば、そんな苦労の結晶を温かい目で見守ってやってくださいませ。


ブースカットも苦労しました。


(了)ここまでお読みいただきありがとうございました。ぜひ会場でお会いしましょう!

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