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創作と変化 -東海地区遠征記、1日目の話-

ログを見返したところ、最初にお声がかかったのは6月も半分が過ぎた頃だった。
東海地区で老若男女問わず広くボードゲーム会を展開される「ボードゲームフェスタ まいたーん」様から「ボードゲームのクイズを行いたいのですが」とお声がかかった、それがおそらく取っ掛かりだったはずだ。

興味のある話だったので身を乗り出していると、東海地区近隣のボードゲームカフェ・プレイスペース様を交え、ボードゲームのクイズ対決動画を考えており、その際に拙著ボードゲームクイズ本から出題したい、と、そんな依頼を頂戴し、二つ返事で引き受けることにした。

総売り上げが100部にも満たない拙著クイズ本とはいえ、興味のある方がご覧になり「あ!同じ問題だ」と勘付かれるのも嫌だな、と思い、「どうせ対決するのであれば問題の一才をこちらで作り直します!」と思い切って申し出た。

後日、ZOOMを用いたオンライン会議が開かれた。
短い時間で調整する中で、今回の趣旨が「普段は集まる機会の少ない店舗同士のつながりをアピールすること」「店長の知識の凄さをアピールすること」などであることをつかんだ。
会も最後に差し掛かった頃、僕はおずおずと「協力型のクイズ」を提案した。
勝敗が鮮明となる対決型のクイズより、全員の力を結集し、相互に助け合うシステムならば、見た目の爽快感こそ削がれるものの、参加のハードルはグッと下がるのではないか、と考えたのだ。

快く受諾してもらい、かくして、周囲への調整、全体の流れなどの役割を各々が分担する中、僕自身は新たな問題制作の方に着手した。
当時は4コマ新刊のレイアウトやおまけページなどの準備も抱えており、同時並行でクイズ制作を行う体力があるか不安ではあったが、それにも勝る自分の魂に(無駄に)火がつき、結局この日のために新たに数十問の問題を書き下ろし、さらには動画クイズやパネルクイズなども用意するに至った。

前日は梅雨の戻りとなる豪雨に苛まれたものの、当日朝には小康状態となり、新幹線は予定通り名古屋駅へと滑り込んだ。

朝8時到着。

三連休初日も相まって、新幹線は朝6時という早い時間にもかかわらずほぼ席が埋まる状態だった。
電車を乗り継ぎ、JR西岐阜駅へと到着。その足で一路「ひまつぶしスペース」様へと向かった。
大きな吹き抜けの建物には、天井に届くまでたくさんのボードゲームが並んでいた。


ひまつぶしスペース様


今回はひまつぶしスペース様が運営する「あすこねチャンネル」と、まいたーんさんの動画対決の二本を収録する予定となった。
早押しボタンをチェックする傍ら、参加される方と軽く会話しながら時間を過ごした。

収録時間となり、セッティングと場の調整を行う。
大きな機材設備にたじろぐ僕を尻目に、ファニーテーブル様、ひまつぶしスペース様の店長同士は仲良く談笑されている。
もちろん出発数日前から急激に上昇した感染者数に細心の注意を払わなければならない。クイズという特性上、どうしても問題を読む際に発声の場面が生じるため、PCR検査で陰性の旨を伝えた上でマスクを外すことも考えたが、動画を視聴される方に加え、接客業を生業とする方に万が一のことがあってはならないと思い、結局今回もマスクをつけたまま、それでも声が届くようしっかりと抑揚をつけて喋ることを心がけた。

2本撮りの収録はなんとか終わり、その後の予定を特に入れなかった僕は、しばらくお店の中でのんびり過ごさせてもらうことにした。

オリジナルボードゲーム「がんばれ!3ヶ月店長」

がんばれ!3ヶ月店長
店舗オリジナルの拡大再生産。岐阜県内をモチーフとしたマップで、3ヶ月9ターンの間に多くのお客さんを集めることが目的のオリジナルボードゲームでした。


夕刻を迎え、僕はふと思い立ったかのように名古屋市黒川へと向かった。
東海地区にお邪魔した際は必ず立ち寄るゲームストア・バネスト様へご挨拶するためだ。

夜半にかけて雨脚はさらに強まり、慌ててアーケードをつたいバネスト様へと向かう。
お店の奥ではいつもの中野店長がいつもの笑顔で作業に追われていた。
閉店も近かったこともあり、会話は控えめに、本当にご挨拶だけを済ませる形となった。

わずかな時間のやり取りで、中野店長から「頑張りすぎるな」と声をかけてもらった。僕は「頑張らなきゃ、笑っている創作者を見返せませんから」とおどけるように答えた。


夕刊バネストも無事にゲット!

食事もそこそこに岐阜の宿へと戻る。

今回お会いしたひまつぶしスペース様、まいたーん様、そしてバネスト様、いずれもが本感染症禍の中、環境に悲観することなく、小さく自分を変化させ、必死で、前を向いて手を動かす、そんな姿を垣間見ることができた。

ベッドの中でダラダラとSNSを眺めていると「アークライトゲーム賞の発表」や「ドイツ年間ゲーム大賞授賞式」で盛り上がり、一方では「北海道ボドゲ博4.0」の様子や購入品報告、現地のご飯ツイートなど、多くの方がそれぞれの形で盛り上がりを見せていた。

感染症禍の3年間、挫けることなく、新たな道を模索し頑張ったからこそ、それぞれがつかんだ証、なのかな。
眠りに落ちるまで、そんなことをぼんやりと考える僕だった。

(二日目「ボドゲプラス29 体験記」はこちらから)
https://note.com/banjiro_shoten/n/n3585c2405f76


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