オフィサー・アンド・スパイ

この映画はドレフュス事件を比較的忠実に描いた作品だ。ドレフュス事件に興味があったこともあって、最後まで面白く観れた。意外だったのは、主人公はドレフュスでも彼の擁護をしたことで有名なエミール・ゾラでもなく、彼の有罪に疑義があるとして捜査する防諜担当の士官ということだ。彼が絶対的正義としての存在ではない(いきなり不倫からはじまるし、冒頭ではユダヤ人について差別的な言動も)ことが捜査の客観性をもたせる意味でよかった。普通のことを普通にしている、それでも事実がゆがめられることの理不尽さのようなこと。

このドレフュス事件など、当時のフランスとの背景については、町山智浩、内田樹両氏の対談がオフィシャルサイトやYoutubeで公開されているのでそちらを見ていただくとよい。「ナチスの反ユダヤもシオニズム運動もここかははじまった」「『最後の授業』の作者はゴリゴリ右翼で反ユダヤ」など、初めて知る内容が多く参考になった。

なお、この作品はヴェネツイァ国際映画祭で銀獅子賞を受賞するなど評価は高いのだが。、セザール賞の受賞の際、女優らが抗議のため途中退席、受賞にも批判が殺到した。原因はポランスキー監督の過去の少女に対する性的暴行ということだ。気持ちは分からないでもないが、この作品の内容は、さすがに性的暴行とは何の関係もないので、やや筋違いな話ではないだろうか。
それよりも驚いたのは、プロデューサーにロシアの実業家のロマン・アブラモビッチの名前があったことだが、彼もユダヤ系ということを考えるとそんなに意外なことではないか。

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