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11013の手紙に寄せて

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11013でなければならない理由も、ないのだけれど。
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2018年4月の記事一覧

認めあいの輪

認めあいの輪

結婚式というのは、「じぶん文化祭」みたいなものだと思う。厳密には、文化祭みたいなのは披露宴の方だ。挙式の方は、誰の、どんな形式のものに参列したときでも、いつも厳かで、潔白で、神々しくて、まるで人生のすべてがそこにあるような、そんな気持ちにさせられる。

誰も文句を言わないし、あらゆる人が新郎新婦を見守っている。挙式とは、ふだんはさらさないような個人的なことを、大ざらしにするようなおこないでもあ

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「心」の風通し

「心」の風通し

家の近くに、鉄道の上に架けられた陸橋があります。僕は毎日そこへ、もうすぐ2歳になる息子を連れて行きます。息子はたぶん、大きくて動く物が好きなのです。いつも、その陸橋の上から、行き交う電車を延々と見ています。「どっちから来るかなぁ」「こっちから来るかなぁ」「青い電車、来た!」「電車、来たよ〜!」「次は?今度は?」これをずっと繰り返しています。

陸橋の上は、散歩やジョギングをする人が通ります。電

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「凪」と「渦」

「凪」と「渦」

「考える」って、強烈な体験だと思うのです。ひとりで体験したことって、誰かに話したくなるものです。もちろん相手がいたってかまいませんが、それをまだ共有していない相手がいると、やはりこれこれこういうことがあったんだと、話したくなります。

「ひとりでの体験」が豊かになるほど、誰かに話したくなる、つまり、顔を突き合わせたときの会話が活発になる、といえませんか?そして、「ひとりで考える」という体験をお

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加齢バイアス?

加齢バイアス?

「かわいい」は、泣けるし、笑えるし、儚くてものがなしい。

今の僕の「かわいい」存在は、息子でしょうか。もうすぐ2歳になります。複数の単語を用いた発語を披露して、驚かせたり笑わせたりしてくれます。このかわいさも、ずっと続くわけじゃない。今だけのかわいさなんだろうなぁと思うと、せつなくて妙な気持ちになります。もちろん、彼が中学生になるとか、大人になるとかしても、そのときだけの「かわいさ」があるん

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「おはようございます」

「おはようございます」

特に言うこともないのに、何か言おうとするとどうなるでしょう。「いい天気ですね」とか、「おはようございます」とかでしょうか。「いい天気」であることも、「お早う」であることも、その場で顔を突き合わせているという関係のみで共有できることですから、無難です。ただ、同じ天候を指して、「いい天気」か「ヤな天気」かは、人によって違うかもしれません。同様に「お早う」も、人によっては「全然『早く』なんてない」という

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音楽をやっている「詩人」です。

音楽をやっている「詩人」です。

僕は、音楽をやります。へたなので、練習します。毎日やります。たとえば30分のステージが近々あるとしたら、少なくともそこで披露するぶんだけの曲数は、本番まで毎日やります。ちなみに、その本番が過ぎても、何かしら毎日やっています。次の本番が、また控えていたりします。

おもに歌ったりしています。1人で演奏することが多いので、自分で伴奏をします。弾き語りです。間奏にハーモニカでメロディを入れたりもしま

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こんなものが、あったのか。〜年度はじめの恒例行事〜

こんなものが、あったのか。〜年度はじめの恒例行事〜

最近、僕の職場で、「備品の配置とその有無を確認する」という仕事がありました。僕はこの仕事が嫌いで、やる気のかけらも湧かないのですが、仕事なのでやりました。

どこから手をつけたもんかと、目につくもの手に触れるものを、ゆっくりゆっくり確認していきました。その前日は日曜日で、僕はスケジュールがいっぱいでした。朝から晩まで東京じゅうを東へ西へ南へと駆け回り、疲れていたのです。確認のための備品リストが

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「ジャンル」の発明

「ジャンル」の発明

良い音楽は、ジャンルを越えますね。あるミュージシャンの鳴らす音楽自体が、ひとつの新しいジャンルを打ち立てているような、そんな印象を受けることがあります。

でも、「あの人自身がひとつのジャンルだよね」みたいな言いまわしって、厳密にはおかしいのではないかとも思います。ジャンルという分類づけは、本来線引きできないものに無理矢理線を引くような行為です。「人間」に生まれてみようと思って生まれてくる人は

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「おすすめ」の世代交代

「おすすめ」の世代交代

小説をすすんで選んで読んでいた時期もあったのですが、だんだんとフィクションじゃないものを読むようになりました。小説に胸焼けしちゃったみたいに、むしろ避けているような時期もありました。

最近は色んな本を取っ替え引っ替えちびちび読む中に、小説も1〜2冊まぜています。漫画もよく読みます。誰からも評判を聞いたことがなく、初めて見かけるものを、タイトルや表紙を見て直感的に選んで買って来て読んだりします

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再現不能のライブ・ウォーキング

再現不能のライブ・ウォーキング

一緒に何かについて、考えていく。そこに、人と会って話をする楽しみがある。

これって、自分一人でも同じようなことがいえるのではないでしょうか。というのも、何かについて考えていくうちに、思いもよらない思考の道すじ(矛盾しているようですが)を辿ったり、ばらばらだった知識が結びついて、何か新しいことに気づくというようなことが、あるように思うのです。さながら、自分の中でおこなわれる「対話」といえます。

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「愛」〜想い、現し、悟すもの〜

「愛」〜想い、現し、悟すもの〜

かたちのないもの、なんて表現することがあります。「愛」なんかが良い例です。実際にはかたちがないのではなく、いろんなかたちがありすぎるのだと思います。そういったものを全部ひっくるめて、「かたちのないもの」と、ひとまとめに呼ぶことがあるのです。

「愛」の有無を判断するのは、つまるところ、何かを言ったり、やったりといった「おこない」を基準とするしかありません。「想う」とか「考える」とかは、対象とな

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ロングセラー商品のアイデンティティ

ロングセラー商品のアイデンティティ

ロングセラーのお菓子とか飲み物とか、「お馴染み」のものがありますね。「これこれ!」と、パッケージを一目見て認識できます。

食べたり飲んだりすれば、やはり美味い。変わらない味というか、安定のうまさ。でも実はそれは、変わり続ける僕らに「変わらない」や「安定の」を感じさせる、作り手側の工夫が含まれていることと思います。

味ももちろんですが、一目見てわかるパッケージやロゴデザインも、微妙な変化

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生きてるだけで、いいか。〜命がけの体得物〜

生きてるだけで、いいか。〜命がけの体得物〜

僕は今、31年間の人生で最も長い期間、体調が悪いです。咳が1ヶ月以上止まらないのです。ずっと、風邪と花粉症のひどいのを引きずっているのだと思い込んでいました。

先日とある公共施設で「長引く咳、本当に風邪ですか?」という三つ折りチラシを見つけました。

「(まさしく僕のことだ!)」

手に取ってみると、「結核」への注意を喚起するチラシでした。中面には高齢者を思わせるイラストが入っていま

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濡れて、歩く。〜雨が降っても、傘ささず〜

濡れて、歩く。〜雨が降っても、傘ささず〜

ペットを飼うと決めたとき、それにともなうことを一挙にまとめて受け入れることになる。毎日世話をするとか、犬だったら散歩に連れて行くとか、病気になったら病院に連れて行くとかである。ペットの飼い主が、彼らの命を担うことになる。なかなか長期間家を留守にしたりできなくなるだろう。そのことが自分にどう影響するか、予想はできても、実際に飼ってみないことにはわからない。飼うということを決めたときに、そういうもろも

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