『兵器の常識・非常識〈下〉空軍・ミサイル兵器篇』江畑 謙介著、並木書房、1998。パート4 ミサイルの基礎知識


「ミサイルは恐ろしい」?

「ミサイル」と聞くと、何やら恐ろしいもののように思われるが、語源はラテン語の「投げる」を意味する mittere の中性形 missilis からきている。したがって形容詞として使えば「(手・鉄砲などで)投げる[飛ばす」ことのできる、発射できる」(小学館ランダムハウス英和大辞典)となり、名詞では「飛び道具」(同)という意味になる。要するに何でも飛ばすもの、投げるものはミサイルという。余計なことだが、米語ではほとんど「ミスル」と聞こえるように発音する。しかし、英語を始めヨーロッパでは「ミサイル」という発音が使われている。

軍事用語として「ミサイル」は一般に、「無人で、誘導機能を持つ、使い捨ての飛ばすもの」という概念として使われている。

さらに狭い概念では、前記の条件を満たしていても、有人機を改造して無人機としたものはミサイルとは呼ばないし、使い捨ての無人型であっても、元来が航空機として開発されたものもミサイルとはいわない。例えば、現在研究されている無人の超小型機(微小機械)はミサイルとは呼ばれていない。おそらく全く新しい、微小機械(マイクロマシン)、ないしはロボット兵器の分野に属する用語が使われるようになるだろう。 

これも一般的には、ミサイルはロケット・モーター(エンジン)や、ジェット・エンジンを持っている型が多いが、無動力型でもミサイルという場合もある。

例えば米空軍と海軍が共同で開発、装備しているJSOW (Joint Stand-off Weapon)、正式名をAGM-154という兵器は動力を持たず、折り畳み式の翼を広げて滑空し、高高度から投下されると七〇キロ以上も飛べる。誘導装置は慣性誘導装置とGPS(全地球測位システム)とを組合せたもので、終端誘導装置として赤外線映像型を装備する型もある。

また米空軍が使用しているGBU-15は、二〇〇〇ポンド(九〇五キロ)爆弾に安定用の翼と、テレビないしは赤外線映像誘導装置を取り付けた滑空爆弾で、射程は目標を直視できるせいぜい五~一〇キロであるが、その下にロケット・モーターを取り付け、電波高度計とデジタル制御システムを追加した型はAGM-130という制式記号が与えられている。すなわちミサイルと分類されている(Aは空中発射型、Gは対地攻撃用を意味し、Mはミサイルであることを示す)

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