『図解 城塞都市』開発社著、2016

はじめに

日本では城塞都市は決して一般的ではありませんでしたが、中国やイン ドなどのアジアや、モロッコなどのアフリカ、シリアなどの中東、エチオピアなどの中米には城塞都市が多く存在します。 中でも中世のヨーロッパ においては城塞都市が隆盛を誇っていました。 規模の大きい都市も多く、 パリやミラノは当時としてはとても多い10万人超の人口を抱えていました。それゆえ本書では中世ヨーロッパの城塞都市を中心に扱っています。

城塞都市の中には、今も当時の姿を残しているものが多くあります。 石やレンガの壁で囲まれた町には建物がひしめきあい、 侵入者を惑わすため に迷路のような構造になっているものも。なかなかに高い確率で自分がど こにいるのかわからなくなることもありますが、異国の町で迷子になるのも城塞都市観光の楽しみのひとつと言えるでしょう。

都市を城塞で囲んだのは、そこに住む人たちをあらゆる危険から守るためでした。 敵軍の侵略、獣や強盗団の襲来を、強固な壁で防いだのです。 獣や強盗団はさておき、敵対する軍隊は城塞都市を陥落させるために、 あの手この手で攻撃を仕掛けてきます。 それに対抗するため、 城塞都市にはさまざまな防衛用の設備が備えられました。 防衛設備や都市機能は時代が 進むにつれてさらに強力に、 そして洗練されていきます。

こうして城塞都市は文化、 商業、 軍事の面において進化を続けました。 より市民が暮らしやすく、より敵から都市を守りやすく、そして自分たち の権力を知らしめるために、より立派な都市に。 その思いと行動が築き上げた究極の機能美。 それこそが城塞都市なのです。

本書は、そんな城塞都市のありとあらゆる情報を網羅しました。

城塞都市はどのようにして造られたのか?
防衛側は敵勢力の攻撃からどうやって都市を守ったのか?
攻撃側は強固な城壁をいかにして破壊したのか?
城塞都市に住む市民はどんな生活をしていたのか?
などなど。 歴史を語るうえで絶対に欠かせない存在であった城塞都市にまつわるエ ピソードを、じっくりと楽しんでいただけましたら幸いです。

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